全身性血管炎の中枢神経障害・末梢神経障害のポイント

全身性血管炎の中枢・末梢神経障害

 全身性血管炎の神経障害は、障害される血管の種類により病態が異なります。大血管の血管炎では高安動脈炎・巨細胞性血管炎、小血管の血管炎ではANCA関連血管炎などがあります。末梢神経障害は小~細動脈炎で起こります。今回、全身性血管炎の中枢・末梢神経障害のポイントを紹介します。

大血管の血管炎(large vessel vasculitis)と脳梗塞/血管炎

  • 高安動脈炎(TKA):15-20%
  • 巨細胞性血管炎(GCA):2-20%

  ほとんどの症例は頭蓋外動脈が原因。

原因

  • 炎症・血栓形成による血管閉塞
  • 頸動脈瘤の形成
  • 大動脈弁閉鎖不全や動脈狭窄病変からの塞栓
  • 頸動脈解離
  • その他

 頭蓋外血管の形態変化と炎症所見をとらえることがTAK/GCAの診断に重要

 血管の炎症の描出には18F-FDG PETが極めて有用

小血管の血管炎(small vessel vasculitis)

  • ANCA関連血管炎
    • 顕微鏡的多発血管炎(Microscopic polyangiitis, MPA)
    • 多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis, GPA (Wegener’s))
    • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis, EGPA (Churg-Strauss))

 末梢神経障害が多いが、中枢神経障害も起こす

ANCA関連血管炎(AAV)での中枢神経障害

  • 中枢神経障害はAAVの主要な徴候ではないが、決して少ないわけではない
  • 小血管の血管炎が主要な原因と考えられているが、画像での証明が困難
  • GPAでは肥厚性硬膜炎が特徴的
  • EGPAでは中枢神経病変の頻度が高い

EGPAの中枢神経病変

  • 約55%に神経病変の合併
    • 末梢性ニューロパチー:51%
    • 中枢神経障害:5%
    • 脳神経障害:3%
  • AAVの中では突出して神経障害の頻度が高い

中枢神経障害の内訳

  • 虚血性脳疾患:52%
  • 脳内出血/くも膜下出血:24%(MPAでは6%)
  • 視力障害:33%
  • 脳神経麻痺:25%

 EGPAはAAVの中では中枢神経障害をきたしやすく、出血性病変が多い

 好酸球増多による組織障害をきたしやすい→中枢神経障害

 心病変(例:好酸球性心筋炎)をきたしやすい→心原性塞栓症

血管炎性末梢神経障害

  • 末梢神経を栄養する小動脈~細動脈閉塞による末梢神経系の多発性梗塞
  • AAVで発症しやすい
  • 多くの場合、大量副腎皮質ステロイド薬の投与で虚血の進行は抑えられる
  • 速やかに治療が開始できれば完全寛解も可能

血管炎性末梢神経障害の診断

臨床症状

  • 遠位部優位の運動感覚障害、または感覚障害(運動障害のみはない)
  • 左右差のある多発性単神経障害、ときに多発神経障害
  • 罹患部位の痛み

検査所見

  • 中枢神経障害と異なり、画像はほとんど役に立たない
  • 電気生理学的検査で多発性単神経障害の証明
  • MPO-ANCA, PR3-ANCA
  • 血管炎の病理学的証明

虚血による多発性単神経炎の臨床的特徴

  • 左右差がある
  • 右足から始まって、次は左手などの経過をとる
  • 痛みを伴うことが多い
  • 神経ごとに症状に差がある
  • 経過は数日で急激に悪化し、数日で歩行が不能になる例もあれば、1ヶ月近く経ってから歩いて病院に来る例もある(必ずしも経過が早いわけではない)

虚血性多発性単神経炎の特徴的な神経所見

  • 左右差のある遠位部の伸筋(extensor)の障害(とくに下肢):長母肢伸筋、前脛骨筋で多い
  • 深腓骨神経の障害:第1趾と第2趾の間の付け根部分の感覚障害
  • 上肢のring finger splittingが起こる:第4指で感覚障害が分離する(正中神経と尺骨神経で支配領域が異なるため)

 EPGAで末梢神経障害の併発が多い。好酸球毒性が関与している可能性がある。