その他脳血管障害の治療(脳卒中治療ガイドライン2021)

その他脳血管障害 脳卒中治療ガイドライン2021

 脳卒中治療ガイドライン2021では、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と片頭痛の項目が新たに追加されています。RCVSでは原因となる薬剤を直ちに中止し、労作・バルサルバ手技・感情表出などの誘因となる行為を避けることが妥当としています。今回、その他脳血管障害の治療について紹介します。

もやもや病の出血再発例に対する治療

  • 出血型もやもや病において、特に予後不良である後方出血例に対しては、再出血率低下を目的とした頭蓋外内血行再建術を行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)

脳静脈・静脈洞血栓症の治療

  • 急性期において、未分画ヘパリンを用いた抗凝固療法が第一選択となる(推奨度B エビデンスレベル中)。未分画ヘパリンの代わりに低分子ヘパリンの使用を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • ワルファリンによる経口抗凝固療法を少なくとも3ヶ月以上は継続することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。ワルファリンのかわりにDOACを使用することは勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)
  • 予後不良因子を有する脳静脈洞血栓症に対する血栓溶解療法および機械的血栓回収療法を行うには、十分な科学的根拠がない(推奨度C エビデンスレベル中)
  • 実質病変を有し脳ヘルニア徴候を認める重症例においては減圧開頭術を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 痙攣を生じた場合には抗痙攣薬の投与は妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の治療

  • RCVSでは原因となる薬剤を直ちに中止し、誘引となる行為を数日~数週間避けることは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • RCVSに対してnimodipine、ベラパミル(ワソラン®)、硫酸マグネシウム、ロメリジン(ミグシス®)の投与を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • RCVSの重症例では血管内治療を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • RCVSによる脳梗塞に対して慢性期の再発予防に抗血栓療法は勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)
  • RCVSに対してステロイドは使用しないよう勧められる(推奨度E エビデンスレベル低)

※RCVSは労作・バルサルバ手技・感情・入浴・シャワー・屈伸・性行為がしばしば引き金になり、典型的には1-2週間雷鳴頭痛を繰り返すため、この期間はこれらの誘発行為を避け安静にする

片頭痛の治療

  • 前兆のある片頭痛女性では禁煙が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)
  • 前兆のある片頭痛女性では経口避妊薬、特にエストロゲン含有製剤は避け、代替療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 片頭痛の頻度が脳卒中と関連しているため、頻度が多い場合は予防療法を加味するなどして頻度の減少に努めることは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 脳梗塞やTIAを発症していない卵円孔開存を有する片頭痛患者に対して卵円孔開存閉鎖術は勧められない(推奨度D エビデンスレベル中)

脳アミロイド血管症の治療

  • 脳アミロイド血管症に関連する脳出血に対する血腫吸引術を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 脳アミロイド血管症が疑われ、高血圧を呈する患者では降圧療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 脳葉型脳出血の既往があり、脳アミロイド血管症が強く示唆される場合、抗血栓療法を行わないことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。一方、合併する虚血性心血管イベントの発症リスクが著しく高ければ、脳出血のリスクが増加する可能性を十分検討した上で、抗凝固療法や抗血小板療法を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 主に亜急性白質脳症の病像を呈する脳アミロイド血管症関連血管炎あるいは炎症では免疫抑制薬投与が妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)

血管性認知症の治療

  • 血管性認知症の発症予防と進展抑制を目的とした、高血圧患者、脳梗塞患者、一過性脳虚血発作患者に対する降圧療法は確立されていないが、考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 血管性認知症の発症予防と進展抑制を目的としたスタチン投与の有効性は確立していない。しかし、虚血性脳卒中患者においては降圧療法と抗血栓療法に併用して投与しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 脳梗塞後の意欲低下に対してはニセルゴリンの投与を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)

※保険適用外であるが、血管性認知症の中核症状の治療には、ドネペジル(レベル高)、ガランタミン(レベル中)、メマンチン(レベル高)、リバスチグミン(レベル低)の投与を考慮しても良いかもしれない

全身疾患に伴う脳血管障害 凝固亢進状態の治療

  • 抗リン脂質抗体陽性者の脳梗塞の再発予防に第一選択としてワルファリンを考慮しても良いが、有効性は確立していない(推奨度C エビデンスレベル低)。DOACに関してはワルファリンと比較し脳梗塞再発を抑制できない可能性があり、使用を勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)
  • 抗リン脂質抗体陽性者の脳梗塞の再発予防において全身性エリテマトーデス(SLE)合併例では副腎皮質ステロイドの投与を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 高ホモシステイン血症には、脳梗塞再発予防に葉酸を使用することを考慮しても良いが、有効性は確立していない(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 先天性血栓性素因に対する脳梗塞の再発予防では、INR 2.0-3.0のワルファリン療法を行うことを考慮しても良いが、有効性は確立していない(推奨度C エビデンスレベル低)
  • Trousseau症候群(Cancer associated thrombosis)に対する脳梗塞の再発予防では、原疾患の治療に加え抗凝固療法を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)

遺伝性血管障害の治療

  • Fabry病による脳梗塞例では酵素補充療法が勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
  • CADASILの脳卒中予防に、禁煙、適切な血圧管理を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  • CADASILおよびCARASILでは脳梗塞の予防に抗血小板薬を考慮しても良いが、脳出血の合併が高まることに注意する(推奨度C エビデンスレベル低)
  • CADASILの脳梗塞予防にロメリジンは効果があるかどうかは十分な検討がない(推奨度C エビデンスレベル低)

線維筋性形成異常症の治療

  • 狭窄が中等度以下で無症候の線維筋性形成異常症(fibromuscular dysplasia; FMD)においては、経時的な画像検査による経過観察と降圧治療を行うことは妥当である(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 症候性病変に対して抗血栓療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 症候性病変に対して、症例を慎重に選択した上で外科治療あるいは血管内治療を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)

高安動脈炎の治療

  • 高安動脈炎の治療においては、活動期にはCRPを指標に炎症症候と臨床症候に対応しながら、副腎皮質ステロイドの投与量を調整し、MRAやCTAによる大動脈や腎動脈狭窄病変の経時的な観察を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。多臓器障害や中枢神経障害を合併する急性期にはメチルプレドニゾロン・パルス療法を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。副腎皮質ステロイドの単独治療に抵抗性もしくは再燃する患者では免疫抑制薬や生物学的製剤の併用を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 合併する血栓症の予防には、抗血小板薬の投与を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。適切な内科的治療にもかかわらず、頻回な失神発作やめまいのため生活に支障をきたしている場合や、脳虚血による視力障害が出現した場合には血行再建を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)