治せる認知症について解説します

診察室

 認知症は基本的に治らない病気と言われていますが、一部適切な治療を受けることで治せるものがあります。その病気を見つけるのが物忘れ外来、認知症外来の役割の一つです。一般の方でも区別しやすい特徴として、治せる認知症は比較的早いペースで認知症症状が進むことです。認知症は本来年単位で徐々に進む病気のため、数週から数ヶ月で急激に症状が進行する認知症は認知症症状を起こす別の病気を発症している可能性があります。早めに物忘れ外来の受診をオススメします。

治せる認知症とは

 認知症は脳の萎縮や血管障害などにより起こる病気で、多くが慢性進行の経過をとります。もちろん例外はありますが、年単位で徐々に進む病気というイメージで良いでしょう。その中で比較的早い経過で認知症症状が進むものがあります。また症状が1日の中で、あるいは1週間の中で良くなったり、悪くなったりするケースがあります。この場合、治せる認知症の可能性があります。治療すれば完治する可能性がありますので、早期発見が重要です。

治せる認知症の紹介

 代表的な治せる認知症を解説します。該当するものがあれば医療機関に相談してください。

①ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸欠乏症

 ビタミンB1欠乏症はアルコール多飲者、主食(米飯)ばかり摂っている人に多く見られます。ビタミンB12、葉酸欠乏症は胃切除術を受けた人、慢性胃炎の人に多く見られます。ただ高齢者の場合は食事摂取量低下により、慢性的に欠乏しているケースがあります。症状は物忘れ、時間・場所が分からなくなる(失見当識)、イライラする、怒りっぽくなるなどの精神症状があらわれます。血液検査でビタミン量を測定し、診断します。治療は経口でビタミン剤を摂取することで対応しますが、胃の病気などで吸収障害がある場合はビタミン剤の注射を行うこともあります。また胃の病気が未治療の場合はそちらの治療を優先します。ビタミン欠乏症は今後増加していくと考えます。

②甲状腺機能低下症

 甲状腺は頸部の両外側にある組織で、ヒトの活動性を司る甲状腺ホルモンを産生しています。甲状腺ホルモンが減少すると、意欲が低下し認知症症状を起こすことがあります。また倦怠感、手足のむくみ、冷え、便秘が生じることもあります。血液検査で甲状腺ホルモンを測定し、低下していれば甲状腺機能低下症と診断します。治療は甲状腺製剤を服用します。この病気も治療で認知症症状を治すことができます。

③高血糖、低血糖

 糖尿病治療中の方で、感染症に罹患する、食事量が変化したときに認知症症状を起こすことがあります。厳密に言うと意識障害になりますが、認知症が進んだと誤解され治療が遅れることがあります。血液検査で血糖値を測定します。低血糖が遷延すると生命に関わることもありますので早急に対応する必要があります。

④うつ病

 高齢者のうつ病が増えています。一見、認知症と似た症状を呈するので鑑別に苦慮することがあります。認知症との違いは、物忘れなどの症状を強く訴え心配します。認知症の場合は症状の自覚がなく気にしていないことが多いです。またうつ病の場合は身体症状(頭痛、倦怠感など)を伴うことがあります。悲哀感を伴い自分自身を否定する発言をすることがあります。老年期うつ病評価尺度(GDS)などでうつ病の疑いがあるかをスクリーニングし、最終診断は精神科で行います。治療は抗うつ薬を用います。

⑤正常圧水頭症

 脳脊髄液の吸収障害により、脳室に髄液が貯留し認知症症状を起こす疾患です。歩行障害、尿失禁を合併し、正常圧水頭症の三徴と呼ばれています。検査はタップテストを行います。タップテストとは腰椎部に穿刺針を刺し、髄液を採取する検査です。約30mlと大量に採取することで髄液量が一時的に減少しますので、翌日以降に歩行状態や認知機能の改善がみられれば効果ありと診断します。治療は脳室腹腔シャント(VPシャント)を代表とする脳脊髄液を持続的に排出する手術を行います。高齢すぎる場合や認知症が重度に進行した例では手術のリスクが高いため、適応は中等度レベルの症状までになります。

⑥慢性硬膜下血腫

 転倒後1-2週間後に歩行障害、認知症症状が出現した場合に疑います。頭部CTで硬膜下に血腫が認められれば診断できます。脳神経外科で穿頭術を行い血腫を除去します。

⑦てんかん

 昔てんかんは子供の病気と考えられていましたが、現在は高齢者で初発するてんかんが増えています。おそらく脳の萎縮に伴い、てんかん波が生じるものと考えます。高齢発症てんかんの特徴は痙攣を伴わないことが多いことです。意識がぼーっとして異常行動を起こすため、認知症と間違えて診断されることがあります。検査は頭部画像と脳波を行い診断します。高齢発症のてんかんは抗てんかん薬が良く効きますので、てんかんの可能性が高いと診断されれば、初回発作でも抗てんかん薬を用いることがあります。

⑧その他

 睡眠薬や抗精神病薬の影響で認知症症状が出現することがあります。薬を開始、変更した後しばらくして症状が出現したときは薬剤性の可能性があります。ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬や抗不安薬は認知症症状を悪化させる報告があります(まだ諸説あり)。他には神経梅毒、肝性脳症、亜鉛欠乏症などがあり、血液検査でスクリーニングすることが可能です。

どこに相談をすれば良いか?

 まずはかかりつけ医の先生に相談してください。薬剤性の場合は中止することで改善します。また血液検査で診断がつくこともあります。鑑別が難しい場合は物忘れ外来に紹介してもらえます。 もしかかりつけ医がいない場合は、近隣の物忘れ外来を受診してください。ただしほとんどの物忘れ外来は診察時間の関係上予約制になっています。予め受診方法について医療機関に問い合わせてください。

 今回治せる認知症について解説しました。物忘れ外来はこれら治せる認知症を見つけることが大きな役割の一つとなっています。早い経過で進行する認知症症状には注意してください。