一過性脳虚血発作の診断・治療の要点

TIAのポイント

 一過性脳虚血発作(TIA)は虚血脳または網膜の虚血に起因する一過性の神経障害です。現在は画像で梗塞巣がないものと定義されています。ABCD2スコアが4点以上では、脳梗塞の再発リスクが高いため、早急な管理が必要になります。今回、TIAの診断・治療の要点を紹介します。

定義

 局所脳または網膜の虚血に起因する神経機能障害の一過性エピソードであり、急性梗塞の所見がないもの。神経機能障害のエピソードは、長くとも24時間以内に消失すること。

  1. 画像上、梗塞巣のあるTIAという概念は存在しない
  2. TIAは、脳卒中(stroke)には含まれない

TIAの予後

  • 10.5%が90日以内に脳梗塞を発症
  • そのうちの半数が2日以内に脳梗塞を発症
  • 急性脳血管症候群(ACVS):一過性脳虚血発作+急性虚血性脳卒中
  • 一過性脳虚血発作-不安定狭心症, 急性虚血性脳卒中-急性心筋梗塞に相当する考えがある。

TIAの症状

  • 典型的TIA:片麻痺、半身の感覚障害、言語障害、単眼の視力障害、持続時間は数分~数十分
  • TIAが否定的:持続時間が数秒、意識障害のみ、錯乱、閃輝暗点、けいれん、健忘
  • 非典型的TIA:回転性めまい、浮動性めまい感、ふらつき、しびれ感、視覚異常、嚥下障害、行動異常など

鑑別診断

  • 脳出血・クモ膜下出血
  • てんかん
  • 神経症候を伴う片頭痛
  • 一過性全健忘
  • メニエール症候群
  • 良性発作性頭位めまい症
  • 過換気症候群
  • 失神
  • 起立性低血圧
  • 周期性四肢麻痺

ABCD2スコア(ABCDスクエアスコア)

項目定義点数
年齢(A)60歳以上1
血圧(B)sBP≧140mmHg以上またはdBP≧90mmHg以上1
臨床症状(C)片側の脱力
言語障害(脱力なし)
2
1
持続時間(D)60分以上
10-59分
2
1
糖尿病(D)あり1
  • 7点満点。高いほど脳梗塞発症リスクが高い。
  • 4点以上でTIAの可能性が高く、要注意。

TIAの診察・検査

  • 検脈、頸部血管雑音の聴取、心雑音の聴取、神経学的スクリーニング、ABCD2スコア
  • 可能な限り、当日中に頭部MRI・MRA(無理な場合は頭部CT)、12誘導心電図
  • できるだけ早く(48時間以内に)、頸動脈超音波または頸部・体幹造影CT、血液検査スクリーニング
  • 1-2週間以内に、経胸壁心エコー図検査、ホルター心電図

血液検査

  • 先天性血栓性素因(特に若年者)
    •  アンチトロンビンIII
    •  プロテインC
    •  プロテインS活性
  • 後天性血栓素因
    •  ループスアンチコアグラント
    •  抗カルジオリピン抗体
    •  抗カルジオリピン-β2GPI抗体
  • 癌関連血栓症:Trousseau症候群(特に高齢者)
    •  腫瘍マーカー
    •  便潜血

治療

心房細動が見つかったときの対応

  • 12誘導心電図→頭部MRIまたはCT→血液検査スクリーニング(腎機能・貧血)→当日中にDOACを開始→必要に応じて循環器内科に紹介(心機能評価・カテーテル焼灼術適応など)

心房細動が見つからなかったときの対応

  • 頭部MRIかCT→血液検査スクリーニング→当日中にTIAを否定できない→当日中に抗血小板薬(アスピリン160-300mg/日)を開始(MRIの結果を待たない)。
  1. 外来当日:すぐにバイアスピリン(100)2Tを内服
  2. 外来翌日~次回外来まで(2週間以内):バイアスピリン(100)1T分1朝後(1-2週間分)
  3. 次回外来以降:検査結果を見て、バイアスピリン中止も考慮

ハイリスクTIA

  • ABCD2スコア4点以上
  • 主幹動脈病変あり(頸動脈狭窄・頭蓋内動脈狭窄)
  • 短期間に繰り返すTIA
  • DWI陽性病変あり

 上記いずれかが該当する場合、緊急入院の適応

ハイリスクTIAの治療:抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を推奨

  • 初回(当日):バイアスピリン(100)2T+クロピドグレル(75)4T
  • 翌日以降:バイアスピリン(100)1T+クロピドグレル75mg
  • 2-3週間以降:バイアスピリン100mgに減量

抗血小板薬をいつまで継続すべきか

  • 脳梗塞発症リスクの高い90日間は内服を継続すべき
  • ハイリスクTIAの場合は長期投与を推奨
  • ハイリスクでない場合は中止を検討
  • 出血性合併症のリスクと天秤にかける
  • 長期予防には生活指導が重要

生活指導

  • 血圧管理:130/80mmHg以下を目標
  • 脂質管理:積極的なスタチン投与
  • 禁煙
  • 減量
  • ライフスタイルの見直し