脳梗塞慢性期における内科・外科的予防治療の要点

脳梗塞慢性期予防治療

 脳梗塞慢性期の予防治療は、内科的には高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理、外科的治療には頸動脈内膜剥離術(CEA)・ステント術・EC-ICバイパス術などがあります。今回、脳梗塞慢性期における内科・外科的予防治療の要点を紹介します。

脳卒中の現状

  • 死亡原因の第3位
  • 傷病患者数の第4位
  • 高齢者医療費(12.1兆円)の11%
  • 寝たきりの最大原因(約40%)
  • 要介護の原因の1/3
  • 訪問看護利用の第1位

脳梗塞の内科的予防治療

高血圧

  • 両側内頚動脈高度狭窄・主幹動脈閉塞がある例、または血管未評価例では、血圧140/90mmHg未満を目指すことを考慮しても良い(グレードC1)
  • 両側内頚動脈高度狭窄・主幹動脈閉塞がない、ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中では、血圧130/80mmHg未満を目指すことを考慮しても良い(グレードC1)

糖尿病

  • 血糖コントロールを考慮して良い(グレードC1)
  • インスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン(アクトス®)による糖尿病治療を考慮しても良い(グレードC1)

脂質異常症

  • 高用量のスタチン系薬剤は脳梗塞再発予防に勧められる(グレードB)
  • 低用量のスタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、エイコサペンタエン酸(EPA)製剤の併用が脳卒中再発予防に勧められる(グレードB)

SPARCL試験

  • 高用量スタチン(アトルバスタチン80mg/日)で脳卒中再発予防を示した→ただし日本では保険適応20mgまでなので現実的ではない

J-STARS

  • プラバスタチン10mgでアテローム血栓性脳梗塞の再発予防を示した
  • 脳血管疾患患者へのスタチン投与と脳出血に関連性はない

 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版では、非心原性脳梗塞患者は高リスク群として、LDL-C<120, non-HDL-C<150, TG<150, HDL≧40を推奨している

メタボリックシンドローム

  • 肥満または内臓肥満を背景としたメタボリックシンドロームは脳梗塞の危険因子であり、再発予防にもその管理を考慮しても良い(グレードC1)

ヘマトクリット高値・フィブリノゲン高値

  • ヘマトクリット高値に対して治療を行うことを考慮しても良い(グレードC1)
  • フィブリノゲン高値に対して治療を行うことを考慮しても良い(グレードC1)
  • フィブリノゲン≧360mg/dlでは、脳卒中リスクは1.78倍
  • バトロキソビン(デフィブラーゼ®)を使用した少数例の報告では脳梗塞及びTIAの再発が有意に減少し、有害事象も増加しなかった

脳代謝改善薬・脳循環改善薬

  • 脳梗塞後遺症にみられるめまいに対してイブラジスト(ケタス®)を考慮しても良い(グレードC1)
  • 脳血管認知症を含む種々の認知障害に対してニセルゴリン(サアミオン®)がわずかに有効である可能性がある
  • イブラジスト・イフェンプロジル(セロクラール®)・ニセルゴリンを服用していた患者では、脳梗塞の再発が4.5%/年とプラセボ(7.8%/年)よりも有意に低かった

誤嚥性肺炎の予防治療

  • 嚥下障害による誤嚥性肺炎の予防には、ACE阻害薬、シロスタゾール、アマンタジンの投与を考慮しても良い(グレードC1)

外科的治療

頭蓋外・頭蓋内(EC-IC)バイパス術の適応

  • 症候性(3ヶ月以内TIA/minor stroke)
  • 最終発作から3週間以上経過後に定量的脳循環測定(SPECTやPETなど)を行い、安静時MCA領域脳血流が正常値80%未満またはアセタゾラミド血管反応性10%未満

※EC-ICバイパススタディでは、症候性ICA/MCA閉塞・狭窄でEC-ICバイパス術の有効性は示されなかった。→脳循環測定が未施行、選択バイアスが大きい、術後合併症率が高いなどの問題点があった。

頸動脈内膜剥離術(CEA)

CEA vs内科治療

  • 症候性では50%以上、無症候性では60%以上の症例でCEAによる脳卒中予防が期待できる
  • 症候性では、男性、75歳以上、発症2週間以内の症例でCEAの有効性が高い
  • 無症候においては高齢者での有効性は示されていない
  • 周術期合併症は、症候性で6%未満、無症候性で3%未満に抑えるべきである

CEA vs CAS

  • CEA高リスク群において、症候性50%以上、無症候性80%以上の症例でCASの非劣性が示された
  • CEA標準リスク群において、症候性50%以上、無症候性60%以上の症例でCASの非劣性が示された
  • これらの結果はEPD(embolic‌ protection‌ device)を義務付けた場合に限られる
  • 周術期合併症に関して、CASで脳梗塞、CEAで心筋梗塞が多い
  • 70歳以上の高齢者ではCASにおいてリスクが高い

CEAの危険因子(SAPPHIRE

  • 臨床的に有意な心疾患(うっ血性心不全、心負荷テスト異常、開心術の適応)
  • 重度肺疾患
  • 対側頸動脈閉塞
  • 対側喉頭神経麻痺
  • 頚部大手術・頚部放射線療法の既往
  • 80歳を超える高齢者

CASの危険因子

  • 腎不全
  • 抗血栓療法禁忌
  • 金属アレルギー、造影剤アレルギー
  • 大動脈弁狭窄症
  • カテーテルの誘導が困難な症例(type III大動脈弓や血管の高度屈曲など)
  • 高度石灰化
  • vulnerable plaque(不安定プラーク)