脳卒中の病態と血圧管理

脳卒中と血圧管理

 脳卒中、特にラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・脳出血に対して、高血圧の管理は重要です。脳血管障害患者の血圧目標は130/80mmHg未満ですが、両側頚部動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞がある場合は140/90mmHg未満になります。今回、脳卒中の病態と血圧管理を紹介します。

脳梗塞の病型分類

  • ラクナ梗塞:穿通枝の細動脈硬化。高血圧が主因
  • アテローム血栓性脳梗塞:頚部動脈や皮質枝の粥状動脈硬化。高血圧・糖尿病・脂質異常症など多彩な要因
  • 心原性脳塞栓症:心臓由来の塞栓。心房細動が主因

脳出血の原因

  • 高血圧
  • 脳動静脈奇形
  • 硬膜動静脈瘻
  • もやもや病
  • 血液疾患
  • アミロイド血管症

脳出血急性期の血圧管理

INTERACT2試験

  • 脳出血急性期の血圧管理は、強化治療群(sBP 140mmHg未満、7日間維持)が標準治療群(sBP 180mmHg未満)よりも機能予後(mRS)が良く、安全性は両群で差はなかった。

ATACH2試験

  • 強化治療群(sBP 110~139mmHgを維持)は標準治療群(140-170mmHgを維持)よりも血腫増大が少ない傾向だった(有意差はない)

以上より、高血圧治療ガイドライン2019では、

「脳出血急性期の血圧はできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、このレベルを維持することを考慮しても良いが、降圧に伴う腎機能障害に注意を要する」としている。

脳出血の一次予防

  • 降圧療法:130/80mmHg未満を目標
  • 節酒・禁煙
  • 抗血栓療法下での厳密な管理

血栓回収療法

  • Penumbra system:2011年から保険収載
  • Solitaire FR ステント型:SWIFT studyですべての手技終了後の良好な再開率(80.4%)を認めた

健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他循環器病に係る対策に関する基本法

  • 日本に脳卒中患者は約250万人存在。年間約12万人が死亡し、寝たきりなどの重度要介護の原因の約3割を占め、医療費・介護費を圧迫している
  • 脳卒中や心臓病などに、迅速かつ適切に対応できる医療体制を全国に整備し、研究の推進を図る脳卒中・循環器病対策基本法が2018年12月10日の衆院本会議で可決成立し、2019年12月1日施行された

高血圧治療

 診察室血圧家庭血圧
一般成人<130/80mmHg<125/75mmHg
高齢者(75歳以上)<140/90mmHg<135/85mmHg
糖尿病<130/80mmHg<125/75mmHg
冠動脈疾患<130/80mmHg<125/75mmHg
脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)<130/80mmHg<125/75mmHg
脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)<140/90mmHg<135/85mmHg
CKD患者(蛋白尿陽性)<130/80mmHg<125/75mmHg
CKD患者(蛋白尿陰性)<140/90mmHg<135/85mmHg
抗血栓薬服用者<130/80mmHg<125/75mmHg
  • 脳血管障害で治療を行っている患者は、BP<130/80mmHgを目標
  • 両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞のある患者は、BP<140/90mmHgを目標
  • 75歳以上の合併症がない高齢者は、BP<140/90mmHgを目標

主要降圧薬の積極的適応

 Ca拮抗薬ARB/ACEサイアザイド系利尿薬β遮断薬
左室肥大  
左室収縮能(LVEF)の低下した心不全 ●※1●※1
頻脈●(非ジヒドロピリジン系)  
狭心症  ●※2
心筋梗塞後  
蛋白尿/微量アルブミン尿を有するCKD   
  • ※1 少量から開始し、注意深く漸増する
  • ※2 冠攣縮に注意

禁忌・慎重投与となる病態

 禁忌慎重投与
Ca拮抗薬徐脈(ジヒドロピリジン系)心不全
ARB妊娠腎動脈狭窄症、高カリウム血症
ACE阻害薬妊娠、血管神経性浮腫、特定の膜を用いるアフェレーシス、血液透析腎動脈狭窄症、高カリウム血症
サイアザイド系利尿薬体液中のナトリウム、カリウムが明らかに減少している病態耐糖能異常、低カリウム血症、痛風
β遮断薬喘息、高度徐脈、未治療の褐色細胞腫耐糖能異常、閉塞性肺疾患、末梢動脈疾患

4つの夜間血圧下降パターン

  • extreme-dippers:夜間血圧が過剰に下降する
  • dippers:夜間血圧が下降する(正常パターン)
  • non-dippers:夜間血圧が下降しない
  • risers:夜間血圧が上昇する。心不全発症の高リスク。

※夜間高血圧は、脳卒中・心筋梗塞・血管性認知症、心不全、腎障害のリスクとなる