脳卒中一次予防・急性期管理(脳卒中治療ガイドライン2021)

脳卒中治療ガイドライン2021

 脳卒中治療ガイドライン2021が公開されますので、改訂予定の項目を紹介します。今回は脳卒中一次予防・急性期管理についてまとめました。大きな改訂点は、NVAFに対してはDOACが第一選択で勧められるが、ワルファリンの場合、CHADS2スコアが1,2点であれば全年齢でINR 1.6-2.6が新たな目標となります。

一次予防(危険因子の管理)の改訂点

  • 高血圧管理は130/80mmHg未満が一般に推奨される
  • 2型糖尿病の管理により、脳卒中を含めた心血管イベントの抑制効果が明らかとなった
  • NVAFに対してはDOACが第一選択で勧められるが、ワルファリンの場合のコントロールはCHADS2スコアが1,2点であれば全年齢でINR 1.6-2.6が新たな目標となる。また出血リスクの高いNVAFでは左心耳閉鎖システムの導入や左心耳閉鎖術を考慮しても良い
  • 一次予防としては、心不全に対する抗凝固療法、PFOに対する経皮的PFO閉鎖術の適応はない

高血圧管理

  1. 脳卒中発症予防のため高血圧患者では降圧治療を行うよう勧められる(推奨度A 鋭ビデンスレベル高)
  2. 降圧目標として、75歳未満、冠動脈疾患、CKD(蛋白尿陽性)、糖尿病、抗血栓薬服用中では130/80mmHg未満が妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  3. 一方、75歳以上、両側頸動脈狭窄や主幹動脈閉塞がある場合、CKD(蛋白尿陰性)では降圧目標は140/90mmHg未満が妥当である(推奨度B エビデンスレベル低い)
  4. 降圧薬の選択としては、カルシウム拮抗薬、利尿薬、ACE阻害薬、ARBなどが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)

糖尿病の管理

  1. 2型糖尿病では、脳卒中を含めた心血管イベント抑制に食事療法、運動療法に合わせて薬物治療を行うよう勧められる(推奨度A エビデンス高)
  2. 成人2型糖尿病における血糖コントロールおよび心血管イベント抑制に、メトホルミンは第一選択薬として妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。さらに血糖コントロール不良な場合には、GLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の投与を考慮してもよい(推奨度C エビデンスレベル中)
  3. 2型糖尿病では、血圧や脂質異常症などの心血管リスク因子の厳格な管理が勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)

脂質異常症の管理

  1. 脂質異常症患者にはLDLコレステロールをターゲットとした、HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与が勧められる(推奨度A、エビデンスレベル高)
  2. スタチンの効果が不十分な場合、エゼチミブやPCSK9阻害薬の併用は妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  3. 高トリグリセライド血症に対する薬剤療法の脳卒中予防効果は、有効性が確立していない(推奨度C エビデンスレベル低)

飲酒・喫煙

  1. 脳卒中予防のためには、大量の飲酒を避けることあ勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)
  2. 脳卒中予防のためには、禁煙が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)。喫煙者には禁煙教育、ニコチン置換療法、経口禁煙薬の投与を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  3. 受動喫煙も脳卒中の危険因子になりうるので、受動喫煙を回避することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  4. 電子タバコは従来のタバコよりも脳卒中のリスクが低い可能性があるが、十分なエビデンスが無いため勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)

非弁膜症性心房細動(NVAF

  1. 非弁膜症性心房細動(NVAF)による心原性脳塞栓症の一次予防には、CHADS2スコア1点以上の場合には、DOACの服用が勧められ(推奨度A エビデンスレベル高)、次いでワルファリンも妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)。ワルファリンの目標値はCHADS2スコア1,2点の場合は年齢によらずINR 1.6-2.6とし、CHADS2スコア 3点以上では70歳未満ではINR 2.0-3.0で、70歳以上ではINR 1.6-2.6を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。CHADS2スコアが0点であっても心筋症、年齢65-74歳、血管疾患の合併、持続性・永続性心房細動、腎機能障害、低体重(50kg以下)、左房径拡大(45mm超)の何れかを満たす場合は、DOACまたはワルファリン(INR 1.6-2.6)の投与を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル中)
  2. 脳卒中のリスクが高い非弁膜症性心房細動患者で出血の危険性が高い場合は、長期的抗凝固療法の代替として左心耳閉鎖システムによる治療を考慮してもよい(推奨度C エビデンスレベル中)。心房細動を伴う症例で心臓手術施行時に左心耳閉鎖または切除術の追加を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)

その他の心房細動

  1. 弁膜症性心房細動(中等度から重度の僧帽弁狭窄症を伴う心房細動、機械弁置換術後の心房細動)では、ワルファリン(INR 2.0-3.0)が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)が、DOACには科学的な根拠がなく勧められない(推奨度D エビデンスレベル中)。生体弁術後の心房細動は術後3ヶ月間はワルファリン、その後はDOACを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  2. 虚血性心疾患合併心房細動では経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の時期に合わせてDOACをベースに抗血小板薬の併用が勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)。慢性期の安定冠動脈疾患を有する心房細動患者には抗凝固薬単独療法が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)

その他の心疾患

  • 一般的な洞調律の心不全患者において心血管イベントの抑制のために経口抗凝固薬の投与は科学的な根拠がなく勧められない(推奨度D エビデンスレベル中)。
  • 脳卒中の一次予防としての経皮的卵円孔閉鎖術には科学的根拠がなく勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)

その他追加項目

肥満、メタボリックシンドローム、SAS、PAD

  • 末梢動脈疾患は脳梗塞のリスクを高めるため、共通の危険因子である喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスク因子をより厳格にコントロールすることが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)。症候性末梢動脈疾患に対して脳卒中予防のために抗血小板薬を投与することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)

慢性腎臓病

  • 血液透析では脳出血、脳梗塞どちらのリスクも高まるが、高血圧や脂質異常症などのリスク管理や抗血栓療法による脳卒中一次予防の有効性は確立していない(推奨度C エビデンスレベル低)

バイオマーカー

  • ヘマトクリット高値は脳梗塞のリスク因子であり、真性多血症・二次性多血症などを鑑別し、原因に応じた治療を行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  • 凝固・線溶系の異常は脳梗塞・脳出血のリスク因子であり単独でも発症しうるため、原因となる遺伝子疾患・血栓形成疾患・感染症・腫瘍性疾患を鑑別し、原因に応じた治療を行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)