脳卒中後てんかんの要点

脳卒中後てんかん

 脳卒中後てんかんは脳卒中後の2-20%に合併し、早期発作と遅発発作に分類されます。早期発作は部分発作、遅発発作は強直間代発作が多いですが、非けいれん性てんかんもみられます。今回、脳卒中後てんかんの要点を紹介します。

脳卒中後てんかんの特徴

  • 脳卒中後発症するてんかん発作(seizure)とその発作が繰り返す慢性の病態(epilepsy)
  • 脳卒中後の2-20%に合併する
  • 脳卒中発症1-2週間以内の早期発作とそれ以降の遅発発作に分類
  • 遅発発作は発症後1年以内が多く6ヶ月以降がピーク
  • 早期発作と遅発発作は病態が異なる

早期発作の機序

  • 低灌流・再灌流
    • 低酸素
      • グルタミン誘発性興奮毒性
      • GABA作動性抑制の減少
    • 虚血性脳症
  • 血液脳関門の破綻
    • アストロサイトの活性化
    • トロンビン誘発性脱分極
  • イオンチャネル機能不全
    • 細胞内Na, Ca増加、細胞外K増加
  • 遺伝子発現の変化
    • 炎症、神経細胞死のupregulation
    • 神経可塑性の変化
  • ヘモジデリン沈着:出血性脳卒中の時

遅発発作の機序

  • 慢性炎症
  • グリオーシス・瘢痕化
    • 白質病変
    • 血管新生
    • 神経新生
  • 神経可塑性の変化
  • 神経分化
  • 側枝発芽
  • 選択的神経脱落
  • シデローシス
  • 依存症
    • 糖尿病・認知症・高血圧・うつ・アルコール依存

脳卒中後てんかんの危険因子

 高リスク低リスク
脳卒中病型脳出血(皮質下)
出血性梗塞
クモ膜下出血
一過性脳虚血発作
脳卒中の局在皮質病巣、テント上梗塞
前方循環系
中大脳動脈領域
テント下梗塞
重症度NIHSS score>15
Scandinavian Stroke Scale<30
mRS≧3
 
年齢<65歳 
併存神経疾患早期発作、認知症 小血管障害 
併存非神経疾患高血圧、局所感染症 
遺伝因子Rs671遺伝子
CD40-1遺伝子
 

脳卒中後てんかんの臨床像

  • 早期発作は部分発作、遅発発作は強直間代発作が多い
  • 痙攣を伴わない意識減損・麻痺・失語などの症状のみのこともある
  • 非けいれん性てんかん重積(NCSE)を4-19%に認める

脳卒中後てんかんの診断

脳波検査

  • 急性脳卒中で高頻度の所見は病巣に合致した局所性徐波、または全般性徐波だがいずれもてんかんのリスクは低い
  • 局所性棘波、鋭波や周期性放電は脳卒中後てんかんのリスクが高い
  • 脳波検査を繰り返すことで異常所見を同定できる可能性は上がる
  • 背景活動の非対称性・発作間欠期のてんかん性活動は発症1年後のてんかん発作の予測因子となる

脳画像検査

  • MRI拡散強調画像で血管支配に一致しない高信号。拡散係数(ADC)は低下しないことが多いが稀に低下する
  • MRAで焦点側の血管描出増強
  • 灌流画像(perfusion-CT, SPECT, MRI arterial spin labeling)におけるhyper-perfusionの所見
  • いずれの所見も発作中~発作直後までしか認めないことが多く、撮像時期によって陰性適中率は低くなることに注意が必要

抗てんかん薬

  • 脳梗塞後痙攣の予防に関する抗てんかん薬の有用性は確立していない
  • 脳出血の手術例以外で抗てんかん薬の予防的使用は勧められない。急性期の投与された予防目的の抗てんかん薬を痙攣発作が生じていなければ漫然と投与を行うことは勧められない
  • 脳出血の遅発性痙攣出現例では高率に再発を生じるため抗てんかん薬の投与を考慮する

抗てんかん薬の選択

  • 抗てんかん薬の選択及び投与期間に関するコンセンサスは無い
  • 近年のエキスパートオピニオンでは、発作再発の抑制および忍容性、相互作用の少なさの点から新規抗てんかん薬が推奨される
  • 合併症・依存症のある高齢者の部分発作にはラモトリギン(ラミクタール®)、レベチラセタム(イーケプラ®)、ガバペンチン(ガバペン®)が推奨される
  • アメリカのエキスパートオピニオンでは、高齢者の部分発作にはラモトリギン(ラミクタール®)、レベチラセタム(イーケプラ®)、ラコサミド(ビムパット®)が第一選択として適切であるとしている。