頭蓋内外動脈狭窄の治療

頭蓋内外動脈狭窄

 頭蓋内外動脈狭窄を伴う非心原性脳梗塞の急性期治療は、DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の短期間投与が勧められます。3週間以内が有効で、3ヶ月以降の継続は出血や死亡が増加します。今回、頭蓋内外動脈狭窄治療の最新情報を紹介します。

DAPT(アスピリン+クロピドグレル 3週間)のエビデンスと使い方

  • TIAやminor strokeの急性期には有効
  • 3ヶ月を超えての継続では、出血や死亡が増加
  • 特にラクナ梗塞では非推奨
  • 3週間以内に可能な限り適切な単剤に切り替える
    • ラクナ梗塞:シロスタゾール
    • 頭蓋内狭窄:クロピドグレルまたはシロスタゾール
    • 冠動脈疾患合併:クロピドグレルまたはアスピリン
    • 原因不明例:アスピリン

エビデンスは低いが考慮されている戦略

  • シロスタゾール+アスピリンまたはクロピドグレル、シロスタゾール+オザグレルまたはアルガトロバンの機能予後について検討中
  • 急性期スタチンは予後を改善させる可能性がある
  • プラスグレル(エフィエント®)は非心原性脳梗塞に対する有効性を確認され、今後認可される予定だが、急性期の効果とクロピドグレルと完全に切り替えられるかは不明

急性期症候性頸動脈狭窄に対する急性期外科介入適応

  • 再発(脳梗塞・TIA)を認める
  • 浮遊血栓などを伴うプラーク
  • 血栓回収療法後のrt-PAに抵抗性の頸動脈狭窄               

CAS/CEAの選択基準

 CEA危険因子を有するものに対してはCASを選択する

CEA危険因子:心疾患(うっ血性心不全、冠動脈疾患、開胸手術が必要な疾患)、重篤な呼吸器疾患、対側頸動脈閉塞、対側喉頭神経麻痺、頸部直達手術または頸部放射線治療の既往、CEA再狭窄例

  • 血栓回収療法後のrt-PAに抵抗性の頸動脈狭窄:一連の流れでCASを行う
  • 上記以外はCEAを選択する

頭蓋内動脈狭窄の内科治療

  • アジア人には頭蓋内脳動脈狭窄が多い(全梗塞患者の18%, アテローム血栓性脳梗塞の35.8%)
  • 症候性頭蓋内動脈狭窄の再発率、進行率は比較的高く、抗血小板薬併用(短期間)や脂質異常症治療、降圧治療、生活習慣介入を含めた積極内科治療が必要
  • 無症候性頭蓋内動脈狭窄に対する抗血小板薬の有効性はエビデンスがない
  • 長期の抗血栓薬併用は出血合併症を増加させるが、シロスタゾールを含む併用療法は、症候性頭蓋内動脈閉塞の再発予防に合理的な選択肢である

頭蓋内動脈狭窄に対する血管内治療

  • 動脈硬化性頭蓋内動脈狭窄の治療は、現時点でのエビデンスでは積極的内科治療が第一選択。

積極的内科治療

  • DAPT:アスピリン325g/日+クロピドグレル75mg/日(90日間)
  • 降圧治療:目標<140mmHg (糖尿病患者では<130mmHg)
  • 脂質低下治療:目標LDLコレステロール<70mg/dl
  • 生活習慣介入:糖尿病、非HDLコレステロール、喫煙、体重、運動の評価とカウンセリング

症候性頭蓋内動脈狭窄症に対する血管内治療の変遷

  • 1990年代:冠動脈用バルーンカテーテルを応用したPTA
  • 2001年:Gateway(Stryker)が国内認可→バルーンPTA
  • 2004年:SSYLVIA Neurolink stent; 61例, 30日脳卒中 6.6%, 死亡0%
  • 2007年:Wingspan and Gateway safety study(Wingspan HDE study) ; 45例, 30日脳卒中 4.5%, 死亡 2.3%
  • 2007年:US Wingspan Registry(Boston Scientific registry) ; 78例, 30日脳卒中6.1%, 死亡 4.9%
  • 2008年:NIH Funded Registry→Wingspan stent ; 129例, 30日脳卒中・死亡 9.6%
  • 2009-10年:Wingspan stent国内医師主導治験;19例, 6ヶ月同側脳卒中・死亡 10.5%

→急性期脳卒中に対する頭蓋内ステント術は内科治療と比較し、合併症が多く転帰も良くなかった

頭蓋内動脈狭窄に対するステント術の適応

  1. Rescue stenting:PTA施行時に生じた血管解離、急性閉塞または切迫閉塞に対する緊急処置
  2. 他に有効な治療法がないと判断される血管形成術後の再治療

 米国での周術期評価では、以下の選択基準を遵守すれば脳卒中・死亡率とも低く抑えられると報告(脳卒中 1.3%, 死亡 1.3%)

  • 22-80歳
  • 内科治療抵抗性
  • 狭窄率70-99%
  • 脳梗塞発症後8日以降
  • 発症前mRS≦3
  • 2回以上のstroke

頭蓋内動脈狭窄症の症候化する機序

  1. Hemodynamic ischemia:watershed infarctionmigi→バイパス術・血管内治療の適応
  2. A to A embolism:cortical infarction→血管内治療の適応
  3. Perforator ischemia:Branch atheromatous disease→内科治療のみ

頭蓋内動脈狭窄の対する外科治療

頭蓋内動脈狭窄の種類

  1. 動脈硬化性閉塞
    1. 前方循環か後方循環
    2. 高度狭窄か閉塞
    3. 急性期・亜急性期か慢性期
  2. もやもや病類縁病変、もやもや病
  3. 外傷、脳腫瘍など

慢性期のバイパス術の適応

手術に慎重であるべき病態

  • 初回の虚血イベント:閉塞時におきたdistal embolismも含む

手術を考慮して良い病態

  1. 完全閉塞例の経過観察中TIA/minor stroke~hemodynamic ischemiaを示唆する所見→深部白質の小梗塞、OEF(酸素摂取率)/CVR(脳循環予備脳)の上昇
  2. 失神を繰り返す例:心不全・AS合併
  3. 大血管、心臓手術予定
  4. 高度狭窄例・抗血小板剤投与下でのminor stroke:閉塞時の脳循環動態の予測が困難

進行性脳卒中への急性期・亜急性期バイパス術の適応

 神経機能の温存、strokeによる症状の軽減を目的とする

  • 広範な虚血領域・小さい梗塞巣・皮質症状・不完全麻痺
  • 軽症で発症し入院後に症状の悪化
  • 血行再建までのtime windowが少なくとも数時間残存していると考えられるもの