新専門医制度開始による新・内科専門医制度の動向についてわかりやすく解説します

 2018年度に新専門医制度が始まり、内科領域も新・内科専門医制度への移行が進められています。しかし、研修を受ける側も指導する側もよく理解できないまま見切り発車で進んでいる印象です。余計な手続きで頭を悩まさずに診療に専念したいと思っている医師が多いと思います。私もその一人です。ただ頑張って研修に励んでいる専攻医に不利益を与えるのは避けたいところです。今回複雑でとっつきにくい新専門医制度について解説したいと思います。

新専門医制度の基本領域とサブスペシャルティとは何か

 新専門医制度では、専門医を基本領域とサブスペシャルティ(subspeciality)領域の2つに分け、まず基本領域の専門医を取得した後、各サブスペシャルティ領域の専門医を取得する二段階制を基本にしています。基本領域はすでに19領域が決定しています。

基本領域
内科、小児科、皮膚科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、病理、臨床検査、救急科、形成外科、リハビリ科、総合診療

 総合診療科は今回新たに作られた専門医です。内科・小児科・救急などのプライマリ・ケアを重視した専門医です。一方、サブスペシャルティ領域はまだ議論中で、当初23領域でしたが、2020年の時点で15領域+条件付き8領域に変更されています。

サブスペシャルティ領域
内科:循環器、呼吸器、血液、脳神経内科、腎臓、リウマチ、消化器内科、糖尿病
外科:消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺
放射線科:放射線診断、放射線治療

 私の場合は基本領域が内科、サブスペシャルティ領域が脳神経内科になります。認知症専門医などその他の専門医は、連動研修の条件がついたもの、今後追加認定予定のもの、専門医機構は認定しないが学会認定領域扱いで存続するものに分かれます。条件付きの中で「サブスペシャルティ領域を1つ以上習得した後に研修を行う領域」とされた専門医では、早い段階で技術習得を必要とするものもあるため、複数の学会で異論が出ており今後また変更されるかもしれません。

新・内科専門医制度の解説と専門医になるための条件は?

 これまでの内科認定医制度は、初期研修2年、後期研修1年の計3年研修すれば認定内科医資格認定試験を受けることができました。認定内科医の資格を持ち、更に計6年の研修を受ければ各専門領域の専門医試験を受けることができました。

 新・内科専門医制度では、認定内科医試験がなくなり、代わりに新・内科専門医試験を最短で初期研修2年、後期研修3年の後に受けることができます。内科専門医になるためには以前より2年遅くかかることになります。一方、専門分野の専門医試験資格は変わりませんので(ただし新・内科専門医の資格を持っていることが条件)、「自分は早く消化器内科の専門医になりたいのに」と思っている人も受験が遅れるわけではありません。詳細は以下のフローチャートの通りです。

新・内科専門医のチャート
「内科領域プログラム作成に関するポイント(日本内科学会)」より

 初期臨床研修を終えた内科志望の医師は、卒後3年目から専攻医として内科の専門医研修を3年間行います。その時各専門分野(消化器内科や脳神経内科など)の後期臨床研修を開始することもできます。初期研修医のように各科をローテートする必要はありませんが、専門分野以外の症例経験も要求されますので、3年間の研修中に他科の症例も集める必要があります。必要な症例登録数と病歴数は以下の通りになります。

登録症例
「専門研修プログラム整備基準(日本内科学会)」より

 登録が必要な症例数は160件以上、そのうち病歴要約数は29件です。提出が必要な病歴要約(サマリー)は認定内科医 18症例から新・内科専門医 29症例に増えました。ただし初期研修医で経験した症例を半数(登録症例数 80件、病歴要約14件まで)加えても良いようですので、研修医のローテーション中に症例を集めておけば、実質登録数80件、病歴数15件で済みます。むしろ研修医時代の方が様々な科に回れますので、研修医の時に集めておいた方が断然楽です。ただし「初期臨床研修時の症例は、各研修プログラム委員会が認める」という条件がありますので、事前にその施設の研修委員会に確認をとる必要があります。また臨床研修評価システム(EPOC)から流用できませんので、退院時要約を自分で保管しておく必要があります。

 症例報告は都度「J-OSLER」に登録できますので、臨床業務の合間に少しずつ登録していくのが良いと思います。外科紹介症例、剖検症例は研修している病院、専門科によって候補が見つからない場合がありますので、あとで足らない症例が見つかって大慌てする事態に注意が必要です。また年2回以上、内科系の学術集会や企画に参加し、3年間で2回学会発表もしくは論文発表を必要とします。更に医療倫理、医療安全などの講習会も年2回以上の受講が必要です。これは病院が参加を義務づけているものなのでサボらないよう気をつけましょう。

認定内科医、総合内科専門医はどうなるのか?

 次に現行の認定内科医と総合内科専門医が新・内科専門医制度に移行してどのような扱いになるかです。

専門医移行措置
「新・内科専門医制度に向けて(日本内科学会)」より

 認定内科医は新・内科専門医試験を受けて合格すれば新・内科専門医の資格を得ます。試験を受けなければ認定内科医のままですが、今後の立ち位置は不明です。移行期を過ぎると今後、サブスペシャルティの専門医試験が受けられなくなる可能性があります。従来の内科指導医は病院単位で依頼し認定を受けていましたが、今後廃止される予定です。総合内科専門医は全員新・内科専門医に移行します。更に新・内科指導医の資格も得られます。ただし今後の活動実績により2025年以降、指導医の資格を失う可能性があります。

 今後、新・内科専門医試験はどのくらいの難易度になるかですが、この資格がないとサブスペシャルティの専門医資格がとれなくなるため、あまり難しくしすぎると大混乱になります。認定内科医試験以上総合内科専門医試験未満の難易度になるのが無難でしょう。専攻医にとっては専門医試験対策も大事ですが、症例集めの方が時間的にも労力的にも大変になると思います。早い段階で計画的に集めることをオススメします。

 医師は医師免許と保険医登録があれば専門医資格がなくても勤務することは可能です。ただ今後の流れで大学病院、総合病院で働く場合、専門医や指導医の資格がないと教育施設の条件が満たせないため、専門医資格のある医師を採用する傾向が高くなると思います。専門医は本来自己研鑽目的で作られたものというイメージでしたので、資格の価値が上がることは喜ばしいものの、取得に強制感を抱かせるのはやや違和感を持ちます。

 新・内科専門医制度は上記のように非常に複雑です。内科志望者が減少するのではないかという懸念が出ています。また指導医側の負担も今まで以上に大きくなります。研修施設の条件が満たせず、地方の病院ほど不利という話も出ています。症例集め、症例登録で専攻医・指導医が疲弊するようでは、専門医の適正育成という本来の趣旨から外れてしまいます。今は試行錯誤の時期と思いますので、今後の変遷に注目したいと思います。

以下の記事も参考にしてください

専門医の資格は必要か?メリットとデメリットを解説します

総合内科専門医試験の勉強に役立った書籍、ウエブサイトを紹介します。合格できた勉強法も公開します

総合内科専門医試験に合格できる対策を解説します(セルフトレーニング問題集を中心に)

(外部サイト)

サブスペシャルティ領域の在り方に関するWGの報告(厚生労働省)

新しい内科専門医制度に向けて(日本内科学会)

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yshima脳神経内科医
認知症専門医の資格を持つ脳神経内科医です。 神経内科専門医・指導医、総合内科専門医・指導医、認知症サポート医。 M.D., Ph.D.