脳小血管病(SVD)のまとめ

脳小血管病

 脳小血管病(SVD)とは、「脳内の微細な動・静脈、及び毛細血管が何らかの原因で障害され、脳内微細血管周囲で営まれる適切な循環・代謝・神経ネットワーク維持が困難となる器質的・機能的変化を伴う症候群」です。主な分類として、動脈硬化性血管障害、アミロイド血管症、CADASILなどの遺伝性小血管病があり、症候には脳卒中・認知症などがあります。本記事では脳小血管病(SVD)を一覧できるようにまとめました。

Neurology. 2019 Jun 11;92(24):1146-1156. doi: 10.1212/WNL.0000000000007654.

要旨

 脳小血管病(SVD)は脳卒中の25%を引き起こし、認知症の45%を占める。有病率は年齢とともに増加し、50歳では約5%、90歳以上ではほぼ100%を占める。既知の原因および危険因子としては、年齢、高血圧、穿通枝動脈硬化症、脳アミロイド血管症、放射線被曝、免疫介在性血管障害、感染性血管障害、遺伝性血管障害などがある。SVDは無症状の場合もある。しかし、部位によっては、軽度認知機能障害、認知症、気分障害、運動・歩行機能障害、尿失禁などの症状を呈することがある。SVDの診断は 最近の大脳皮質下梗塞、白質病変、ラクナ梗塞、脳微小出血、血管周囲腔の拡大、脳萎縮などの脳画像バイオマーカーに基づいて行われる。

 最新の画像診断法は、現在の画像診断法よりも早期に疾患の兆候を検出することができる。拡散テンソル画像法は、変化した白質の結合性を識別することができる。血中酸素濃度依存性画像法は、血管反応性の減少を特定することができる。病態形成は、神経血管ユニットの機能不全をもたらす遺伝的素因の有無にかかわらず、疫学的に特異的な障害から始まると考えられている。

 病態に関する不確実性は、効果的な治療法の開発を遅らせる。最も広く受け入れられている治療法は、血管の危険因子を集中的にコントロールすることである。高血圧が最も重要なのか病態の理解が深まれば、特定の治療法が出現する可能性がある。高度な画像診断による病理学的特徴の早期同定は、症状が出現する前に進行を阻止する機会を提供できる。

総論

脳小血管病と脳大血管病の比較

 脳小血管病脳大血管病
解剖学的特徴脳実質に穿通する穿通枝と大血管末梢で脳表に存在する皮質枝。皮質では密、髄質では疎。支配領域は小さい。主幹動脈が広範囲を支配する。 前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈など。
病理hyalin化による血管壁肥厚。内弾性板・平滑筋細胞変性(arteriolosclerosis)アテローム性動脈硬化(atherosclerosis)
画像多発ラクナ梗塞、白質病変、白質菲薄化(leukoaraiosis)、微小出血(microbleeds)主幹動脈支配領域梗塞、脳出血

SVDの病理学的分類(Lancet Neurol 2010; 9: 689-701.)

分類病態特徴
Type1動脈硬化症(または加齢に伴う血管リスク因子関連SVD)フィブリノイド壊死、リポヒアリノーシス、微小アテローム、微小動脈瘤、分節動脈障害
Type2アミロイド血管症(CAA)原発性または遺伝性
Type3遺伝性SVD (CAAを除く)CADASIL、CARASIL、スウェーデン型遺伝性多発性脳梗塞性認知症、MELAS、ファブリー病、RVCL-S、COL4A1または2の変異に起因するSVDなど
Type4炎症性および免疫介在性SVDWegener肉芽腫、Churg-Strauss症候群、顕微鏡的多発血管炎など
Type5静脈性膠原線維症(venous collagenosis)細・小静脈周囲の膠原線維の増生を伴う血管硬化・閉塞
Type6その他SVD放射線後血管障害、アルツハイマー病における非アミロイド性微小血管変性など

脳MRIにおけるSVD関連病変のSTRIVE分類

 急性病変慢性病変
虚血性急性皮質下小梗塞推定血管原性ラクナ梗塞、白質病変、微小梗塞
出血性脳出血、急性弓隆部クモ膜下出血微小脳出血、脳表シデローシス(鉄沈着症)
その他 脳萎縮、血管周囲腔

total SVD score

MRI所見特徴定義点数画像
推定血管原性ラクナ梗塞3-5mm大の円形病変。FLAIR画像で周縁高信号1個以上のラクナ梗塞1ラクナ梗塞
微小出血(CMBs)2-5mm大(10mmは超えない)小出血。T2*で低信号。1個以上の微小出血(大葉、深部、テント下病変を含む)1脳微小出血
脳室周囲基底核病変(PVS)貫通血管に沿って、脳表面に垂直に走る脳脊髄液信号の基底核(視床を含む)の小さな(<3mm)、シャープな線状構造(ドット状または線形)。axial画像で片側基底核における11個以上のPVS1PVS
推定血管原性白質病変T2画像で高信号、T1画像で低~等信号脳室周囲:Fazekas grade 3または深部白質:Fazekas grade 2-31深部白質病変

 A) FLAIR画像で左側脳室に隣接した周縁が肥厚した低信号を認める。B) Gradient echo T2*強調MRIでは、脳深部領域に5つの小さい円形低信号の病変を認める。C) T2強調MRIでは両側基底核にドット状の高信号病変(11個以上)を認める。D) FLAIR画像で、高信号を伴う斑状の均一病変が認められる。深部白質領域(Fazekas grade 3)のMRI像。

 Total SVD score 評価には、STRIVEで規定された頭部MRI 上の推定血管原性ラクナ(lacune of presumed vascular origin)、CMBs、推定血管原性白質高信号(WMH of presumed vascular origin)、血管周囲腔の所見が用いられる。各々1点が加算され、4 点が最重症となる。

脳小血管病の病理学的特徴

SVD病理所見

左列:

  1. venous collagenosis。H&E染色で白質内脳室周囲静脈の肥厚した壁とコラーゲン沈着
  2. 過敏性血管炎。左上)H&E染色で白血球破砕性血管炎の特徴を示す、(右上)マクロファージのCD68免疫組織化学染色、(左下)CD20染色で低密度Bリンパ球を示す、(右下)CD3染色でまれなTリンパ球を示す。
  3. 住血吸虫症によるCSVD血管炎。左右)H&E染色で肉芽腫性炎症を示す。

中列:

  1. 放射線後CSVD。左上)H&E染色でフィブリノイド壊死を示す、(右上)H&E染色で毛細血管拡張と非定型核変化を示す、(左下)トリクローム染色で膠原繊維(青色)とフィブリノイド物質を示す、(右下)H&E染色で核異型を伴う小血管の閉塞性膠原病を示す。
  2. 中央画像:H&E染色で正常な皮質下白質動脈を示す。
  3. 免疫介在性CSVD血管炎。左上)H&E染色で血管壁の細胞浸潤を示す、(右上)HLA-DR免疫組織化学でマクロファージ浸潤を示す、(左下)CD20免疫組織化学でBリンパ球浸潤を示す、(右下)CD3染色でTリンパ球浸潤を示す。

右列:

  1. 高血圧性CSVD。(左)H&E染色でヒアリン性動脈硬化症を示す、(右)H&E染色で微小動脈瘤を示す。
  2. 脳アミロイド血管症。左上)H&E染色でくも膜下腔にアミロイドβを有する血管を示す、(右上)カルシウム沈着を有する毛細血管、(左下)チオフラビンS蛍光顕微鏡下での下肢CAA、(右下)チオフラビンS蛍光顕微鏡下での大脳実質CAA。
  3. 遺伝性CAA/新規トランスチレチン変異。左)H&E染色で軟膜動脈の病変、(右)トランスチレチン免疫組織化学。
  4. CADASIL。左上)H&E染色で平滑筋細胞の喪失を示す、(右上)トリクローム染色で患部動脈壁のコラーゲン沈着(青色)を示す、(左下)ユビキチン免疫組織化学で動脈壁の粒状沈着を示す、(右下)平滑筋アクチン免疫組織化学で患部動脈の断片化と平滑筋細胞の喪失を示す。

各論

SVD Type1

  • 動脈硬化症(または加齢に伴う血管リスク因子関連SVD)

SVD Type2

SVD Type3

遺伝性CSVD

  • CADASIL (NOTCH3):診断治療
  • CARASIL (HTRA1):診断・治療
  • CARASAL(CTSA):原因・診断
  • MELAS (MT-TL1)
  • Fabry 病 (GLA)
  • Type IV collagen 変異遺伝性関連 CSVD (COL4A1/COL4A2)
  • Retinal vasculopathy with cerebral leukoencephalopathy, RVCL-S (TREX1):診断治療
  • HCHWA (Dutch, Italian, and Flemish-APP gene; Icelandic type-cystatin gene)
  • Multi-infarct dementia of the Swedish type (3’UTR mutation of COL4A1)

SVD Type4

免疫介在性CSVD

  • Primary angiitis of the CNS(原発性中枢神経系血管炎)
  • Secondary CNS vasculitis(二次性中枢神経系血管炎)
    • ANCA-associated vasculitis(ANCA関連血管炎)
      • Granulomatosis with polyangiitis(多発血管炎性肉芽腫症、旧ウェゲナー肉芽腫)
      • Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
      • Microscopic polyangiitis(顕微鏡的多発血管炎)
    • Hypersensitivity vasculitis (or cutaneous leukocytoclastic)
      • Immunoglobulin A vasculitis(免疫グロブリンA血管炎)
      • Cryoglobulinemic vasculitis(クリオグロブリン血症)
    • Systemic lupus erythematosus CNS vasculitis(SLE)
    • Sjogren syndrome–associated vasculitis(シェーグレン症候群)
    • Rheumatoid vasculitis(RA)
    • Mixed connective tissue disease–associated vasculitis(MCTD)
    • Behçet vasculitis(ベーチェット病)

感染性CSVD

  • Meningovascular neurosyphilis(梅毒)
  • Varicella-zoster virus(VZV)
  • Cytomegalovirus(CMV)
  • Hepatitis B and C(HBV、HCV)
  • HIV
  • Fungus(真菌)
  • Schistosomiasis(住血吸虫症)
  • Cerebral malaria(脳マラリア)

SVD Type5

  • venous collagenosis

SVD Type6

  • 放射線後血管障害
  • アルツハイマー病における非アミロイド性微小血管変性