認知症でみられる性的脱抑制・性的逸脱行為のUp To Dateまとめ

性的脱抑制

 観察研究によると、認知症患者の約15~25%が性的逸脱行為を示すと報告されています。介護者は臨床医にこの行動を報告するのが恥ずかしいため、過小評価される傾向があります。性的逸脱行為の例としては、不適切で露骨な性交渉および性行為(掴み、撫でる、公の場でのマスタベーション、露出)が挙げられます。その他の行動障害(焦燥性興奮、攻撃性、および/または抑うつ)が通常認められます。この問題行動は、前頭側頭葉型認知症、血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病(AD)や他の神経変性疾患でも起こります。今回、認知症でみられる性的脱抑制・性的逸脱行為のUp To Dateをまとめました。

性的逸脱行為の原因

  • 前頭葉眼窩面、側頭葉障害→脱抑制・内省力の低下→性的脱抑制、逸脱行為、反社会的行動
  • 視床下部・大脳辺縁系障害、Klüver-Bucy症候群(側頭葉症候群)→性欲亢進→性的逸脱行為
  • 前頭側頭葉型認知症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、血管性認知症は前頭葉障害を伴うと出現
  • アルツハイマー型認知症では7%の患者に性的脱抑制が出現する。

性的逸脱行為の背景因子

身体的因子前頭葉・側頭葉機能障害 性機能の障害(代償行為としての性的行動) 薬物の影響(ドーパミン受容体刺激薬)
精神的因子欲求に対する抑制力・内省力の低下 人物誤認 性的行為に対する強迫症状 性的妄想(嫉妬妄想など) 自己評価の低下
環境的因子周囲との関係性低下、反応の希求

非薬物的介入

  • 対象者が視界に入らないように転室・転棟を試みる。
  • 自己評価を高めるため、何らかの役割を持たせる。
  • 性的でない関わり合い、コミュニケーションを増やす。
  • 本来の恋愛・性的感情の対象である人物(配偶者や恋人)に付き添ってもらう。
  • ドーパミン受容体刺激薬を服用している場合は減量・中止する(ただし急な中断は悪性症候群を起こすため注意)。

薬物的介入

  • 限られた数の研究が性的逸脱行為を調査しており、ほとんどが男性を対象とし、通常は小規模な症例研究または症例報告の形で行われている。
  • 前頭葉機能低下に伴う脱抑制に対してはSSRI(パロキセチン(パキシル®)、フルボキサミン(デプロメール®)の有効性が報告されている。
  • 抗うつ薬、抗精神病薬、コリンエステラーゼ阻害薬、ガバペンチン(ガバペン®)、ピンドロール(カルビスケン®)、シメチジン(タガメット®)を含むさまざまな向精神薬で有効性が報告されている。
  • ホルモン剤(例えば、酢酸メドロキシプロゲステロン(合成プロゲストーゲン、ヒスロン®)、ジエチルスチルベストロール(合成エストロゲン)、エストロゲン、ロイプロリド(LH-RH作動薬))も使用されており、有効性の報告がある。しかし、副作用を考慮すると、これらは第一選択薬とは考えられていない。
  • 焦燥性興奮、暴力、暴言、攻撃的言動を伴う場合は、非定型抗精神病薬(クエチアピン(セロクエル®)、リスペリドン(リスパダール®))、気分安定薬(バルプロ酸(デパケン®)、カルバマゼピン(テグレトール®)を試す。
  • 過渡な対人希求、寂しさを伴う場合は抗うつ薬を試す。 ・妄想・混乱を伴う場合は抗精神病薬(クエチアピン(セロクエル®)、リスペリドン(リスパダール®))を試す。