クモ膜下出血の病態・治療の要点

クモ膜下出血ポイント

 クモ膜下出血は、脳動脈瘤破裂で発症することが多く、危険因子は高血圧・喫煙・過渡の飲酒です。治療は内科的には降圧・鎮痛・呼吸管理を行い、外科的にはクリッピング術やコイル塞栓術を選択します。今回、クモ膜下出血の病態・治療の要点を紹介します。

疫学

  • 未破裂動脈瘤の有病率:2.3-4.6%
  • クモ膜下出血の発症率:22.5人/10万人
  • 男女比: 1:1.3
  • 高齢者、女性で上昇
  • 70-80%が活動時に発症
  • 発症時間は6-9時と18-21時の2峰性
  • 季節性は6-9月に少なく1月に多い

危険因子

  • 高血圧
  • 喫煙
  • 過渡の飲酒(450g/週以上)
  • 未破裂脳動脈瘤

動脈瘤破裂の機序

  1. 血行力学的ストレス→内弾性板変性→血管膨隆
  2. Wall shear stress(壁のすり応力)→内膜変性・脱落→血栓形成
  3. 酸化ストレス↑→神経細胞死→慢性炎症
  4. Matrix変性→動脈瘤破裂

 動脈瘤破裂が慢性炎症に基づいている点を考慮して、アスピリンが炎症抑制をもたらし破裂リスクを低下させることに期待されている(エビデンスレベル高い研究なし)。

クモ膜下出血の病態

  1. 動脈瘤破裂→頭蓋内圧上昇→全脳虚血→脳損傷
  2. 動脈瘤破裂→くも膜下血腫→脳浮腫・アポトーシス・微小循環障害・脳損傷
  3. 動脈瘤破裂→カテコラミンサージ→呼吸抑制・停止、肺水腫、不整脈、心機能障害、たこつぼ型心筋症、低カリウム血症、低マグネシウム血症、循環血液量低下

くも膜下出血の初期治療

目的

  1. 再破裂の予防
  2. 脳損傷の進行防止
  3. 全身状態の管理

再破裂のタイミング

  • 24時間以内 9-17%
  • 6時間以内 40-87%

再破裂の危険因子

  • 発症6時間以内の脳血管撮影、大型動脈瘤
  • 重症例(Hunt and Kosnik IVまたはV)
  • 来院時収縮期血圧高値
  • 脳室内出血、高血糖、1ヶ月以内の警告頭痛

初期治療

  • 降圧薬:ニカルジピン持続静注。160mmHg以下に下げる。
  • 鎮痛・鎮静薬:ガイドライン上の推奨はない。ジアゼパム5mg, ペンタジン7.5mg静注。デクスメデトミジン(プレデックス®)持続静注。
  • 重症例:脳圧亢進・心肺合併症→高浸透圧利尿薬(グリセオールやマンニトール)
  • 呼吸器管理

抗線溶薬

 トラネキサム酸の使用は転帰を改善させず、再出血を減らさなかった。

クモ膜下出血の重症度分類

  • Hunt and Kosnik分類:grade 0, I, Ia, II, III, IV, V
  • WFNS分類:I, II, III, IV, V
  • 重度の意識障害を認めるGrade IV, Vはクリッピング術・コイル塞栓術の適応にならない。
  • 意識障害の原因が急性水頭症や脳内血腫など原因の除去により改善が期待できる場合は手術を考慮する。
  • 解離性脳動脈瘤は発症24時間以内の再破裂が多いため24時間以内の治療が望ましい

治療法

  • クリッピング術とコイル塞栓術がある。
  • 脳血管攣縮はクリッピング術で多く、再出血・再破裂はコイル塞栓術で多い
  • コイル塞栓術は動脈瘤10mm以上、ネック 4mm以上、dome/neck比 2以上で再発が多い。
  • クリッピング術は中大脳動脈瘤で施行が多い。
  • コイル塞栓術は内頸動脈瘤、椎骨・脳底動脈瘤で施行が多い。

内頚動脈後交通動脈瘤

  • 開頭術、血管内治療両方が良い適応
  • 後交通動脈がdomeから分岐・温存が困難
  • 後交通動脈ごと塞栓術を行うと、穿通枝領域の梗塞を起こす可能性がある

中大脳動脈瘤

  • 一般的に開頭術の良い適応
  • 構造が3次元的、domeから分枝することが多く血管内治療が難渋することがある

前大脳動脈瘤

  • 小型動脈瘤でも破裂率が高い(3-4mm 0.9%/年)
  • Acom complexの複雑性
  • 動脈瘤近傍からの穿通枝(hypothalamic a.)→前脳基底核健忘
  • 開頭術・血管内治療どちらでも穿通枝の温存が重要

後方循環系(椎骨動脈・脳底動脈)動脈瘤

  • 開頭術は深部にあるためアプローチが困難。穿通枝損傷のリスクあり。
  • 血管内治療はアプローチ可。

遅発性脳血管攣縮

  • くも膜下出血後、数日~2週間後の遅発性神経脱落症状
  • 従来は主幹動脈に生じる脳血管攣縮が原因とされてきた。

米国での遅発性脳虚血(DCI)の定義

  • 遅発性脳虚血:1時間以上持続するGCS2点以上の悪化(臨床症状での定義)
  • 脳血管攣縮:画像上の脳動脈狭小化(形態的定義)
  • 脳血管攣縮のない遅発性脳虚血もあるとした。

治療は脳血管攣縮の治療に準じる

  • ファスジル(Rho kinase inhibitor)
  • シロスタゾール
  • スタチン
  • エイコサペンタエン酸