RVCL-Sの鑑別診断 ・治療まとめ

RVCL-S治療

 RVCL-Sは全身性疾患であるため、鑑別診断は非常に広範囲にわたります。そのため、診断には症状と常染色体優性遺伝の家族歴の組み合わせが重要です。脳MRIは、RVCL-Sの特徴的な画像所見である拡散強調像での高信号の延長と長期にわたる造影効果を伴う周縁部増強病変が鑑別診断に有用です。 本記事では、RVCL-Sの鑑別診断 ・治療をまとめました。

要旨 

  • RVCL-Sに対する特異的な治療はない。治療は主に対症療法である。治療可能な合併症を発見するためには、年1回のモニタリングが推奨される。 
  • RVCL-Sは進行性で、平均寿命は低下している(50歳代)。しかし、臨床経過は家族間や家族内で大きく異なる。

鑑別に有用な頭部MRI拡散強調像の特徴

RVCL-Sの頭部MRI像

 RVCL-Sでは頭部MRI拡散強調像の高信号延長を認める。上段は頭部MRI拡散強調像(b1000画像)、中段は対応するADCマップ、下段は造影剤投与後のT1強調画像。ベースラインのMRIでは右前頭葉に中心部拡散強調像高信号を伴う周縁部の造影効果が認められ(A)、6ヶ月後のMRI(B)では中心部拡散強調像の高信号が依然認められる。8ヶ月フォローアップMRI(C)では中心部拡散強調像の高信号は消失していた。

RVCL-Sの鑑別診断

 RVCL-Sの鑑別診断は、以下の後天性および遺伝性疾患からなる。 

後天性疾患 

  • 高血圧を主な危険因子とするか否かを問わない多発性小血管疾患(SVD)。 
  • 多発性硬化症 
  • 中枢神経系血管炎 
  • 頭蓋内腫瘍 
  • 多発梗塞に伴う認知症 
  • 糖尿病 
  • サルコイドーシス 
  • スザック症候群:網膜動脈枝閉塞による視力低下、感音性難聴、亜急性脳症を三徴とする
  • 全身性エリテマトーデス(SLE):SLEの多くは遺伝的を認めないが、まれに遺伝性SLE(常染色体優性・劣性の両方)が報告されている。 

 後天性疾患はRVCL-Sとは異なり、常染色体優性遺伝の家族歴はない。しかし、RVCL-Sは誤診の可能性やde novo変異の可能性があるので、家族歴がないだけではRVCL-Sを除外することはできない。 

 多発性硬化症、頭蓋内腫瘍、多発梗塞に伴う認知症との大きな違いは、RVCL-Sは脳以外にも複数の臓器疾患が関与していることである。中枢神経系血管炎は通常、脳のみを障害し出血を伴うことが多いが、RVCL-Sではまれである。同様に、血管炎で見られる血管狭窄や拡張はRVCL-Sでは見られない。 

 糖尿病、サルコイドーシス、SLEは全身性疾患だが、通常は脳や肝臓の病変はみられない。サルコイドーシスではRVCL-Sにはみられない特徴的な肉芽腫が認められ、SLEはRVCL-Sとは異なり、皮膚病変が顕著であること、自己抗体が高いこと、口腔潰瘍や鼻腔潰瘍、脱毛症、関節炎がみられることなどが挙げられる。スザック症候群では、難聴が多く報告され、白質病変のパターンもRVCL-Sとは異なる。 

遺伝性疾患

  • CADASIL:NOTCH3遺伝子変異による 
  • CARASIL:HTLA-1遺伝子変異による 
  • CARASAL:CTSA遺伝子変異に起因。 
  • COL4A1-およびCOL4A2関連疾患 
  • Fabry病:GLA遺伝子変異に起因。 
  • 神経線維腫症1型:NF1遺伝子変異に起因。 
  • 結節性硬化症:TSC1, TSC2遺伝子変異に起因。 

 RVCL-S(常染色体優性)とCARASILまたはCARASAL(いずれも常染色体劣性)とFabry病(X-linked recessive)では遺伝形式が異なる。さらに、CARASILでは、下肢の痙性、変形性脊椎症、脱毛症が重要な特徴である。CARASALでは脳出血が起こる。しかし、報告された症例数が少ないため、CARASALの表現型全体が完全に判明されていない可能性がある。Fabry病の特徴的な症状は早期発症の被角血管腫、多汗症、角膜混濁で、RVCL-Sとの鑑別に役立つ 

 RVCL-Sと同様に、CADASIL、神経線維腫症1型、COL4A1およびCOL4A2関連疾患、結節性硬化症は常染色体優性遺伝である。しかし、CADASILは他の臓器を侵すことはなく、MRIでは前側頭葉と外包にT2高信号からなる明瞭な白質病変が認められる。神経線維腫症1型は、皮膚病変、骨病変が明らかであること、脳MRIのT2強調画像上に高信号の斑点パターンがあることなどで異なる。COL4A1およびCOL4A2関連疾患の発症年齢は非常に変動が大きいが、RVCL-Sよりも早く発症することが多い。さらに、乳児期の片麻痺、出血性脳卒中、孔脳症(画像で脳内の液体で満たされた空洞を認める)、知的障害、腎症・動脈瘤・筋けいれんを伴う遺伝性血管障害(hereditary angiopathy with nephropathy, aneurysms, and muscle cramps;HANAC)などが起こる。さらに、COL4A1変異による孤立性網膜動脈蛇行や先天性白内障が起こることもある。結節性硬化症は小児で診断されることが多く、RVCL-Sでは認められない過誤腫や明確な皮膚病変および肺病変を発症する。 

 MELASは、主に中枢神経系および筋肉に影響を及ぼすミトコンドリア疾患である。この疾患は、高乳酸血症、ミオパチー、聴力障害、糖尿病、低身長を含む広範な症状を有する。 

 臨床的特徴の違いに加えて、分子遺伝学的検査で、脳血管障害および成人発症性白質脳症の原因となる病原性変異体を検出することは、これらの遺伝性疾患の鑑別に有用であることが多い。 

治療 

 RVCL-Sに対する特定の疾患修飾治療法はない。オリゴ糖転移酵素阻害剤であるアクラルビシン(アクラシノン®)が治療法として検討されている。 

 RVCL-Sの希少性を考えると、この疾患の主要症状の治療については、限られたデータしか得られていない。 

遺伝カウンセリング 

 患者が最初に診断されたときには、RVCL-Sに精通した臨床遺伝学者との相談が推奨される。 

 さらに、無症状でリスクのある家族にも遺伝カウンセリングを行うべきである。TREX1の遺伝子変異のある家族の中で確認されれば、予測検査が可能である。このような検査の潜在的な影響(例えば、社会経済的影響、潜在的な健康上の有益性)について議論されるべきである。RVCL-Sは多くの遺伝性神経疾患とは異なり、遺伝子スクリーニングによる早期診断で、合併症の治療や予防策を迅速に開始する利益を得られる可能性がある。網膜症の徴候を評価することは、視覚障害の発症前に治療を行うことで早期失明を防ぐことができるため、特に重要である。 

モニタリング 

 疾患の程度を確立するために、診断時に以下のような評価を行うことが推奨され、まだ評価が完了していない場合には、患者の個々のニーズを判断することができる。 

  • 眼:網膜症、黄斑浮腫、緑内障の徴候のための眼科的評価。 
  • 大脳:局所的な脳機能障害、認知機能障害、片頭痛、痙攣、精神症状の徴候を評価。 
  • 腎臓:腎機能の評価(血清クレアチニン、尿検査、蛋白質排泄)。 
  • 肝臓:肝酵素(血清GOT/GPT、ALP、γ-GTP)、アルブミンの評価。重度の肝酵素変化が認められた場合は、LDH、ビリルビンの測定や凝固検査を行う。 
  • 循環器系:高血圧症を評価。 
  • 血液学的検査:全血球数とヘモグロビンを測定し、貧血の有無を調べる。 
  • 甲状腺:甲状腺刺激ホルモン[TSH]と遊離チロキシン[T4]を測定し、不顕性甲状腺機能低下症の有無を調べる。 
  • その他:レイノー現象の評価。 

 治療可能な合併症や症状を検出するために、RVCL-Sと診断された患者では、これらの評価を少なくとも年1回は行うべきである。症状が重篤な場合には、より頻回なモニタリングが必要となる場合がある。MRIで見られる病変の大きさが中程度から大きい場合は、より短い間隔で脳MRIをフォローするべきである。また、神経学的徴候や症状が現れた場合には、脳MRIの検査を受ける必要がある。 

 RVCL-Sによる重大な神経学的または全身的な病変の所見がある患者には、専門医への紹介が必要である。しかし、専門医にはRVCL-Sとその多様な症状についての情報を提供し、不必要な診断(生検など)を避け、過少治療や過剰治療を防ぐためにも、専門医の紹介を受けるべきである。 

対症療法 

  • 緑内障、高血圧、片頭痛、痙攣発作、甲状腺機能低下症、貧血、レイノー現象、精神症状など、RVCL-Sのほとんどの症状は標準的な治療法で治療すべきである。 
  • 腎疾患では、高血圧のコントロールが特に重要である。 
  • 網膜症や黄斑浮腫に対しては、網膜レーザー光凝固療法や抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)の点滴静注療法が行われる。 
  • 重度の貧血の場合は、静脈内輸血が必要な場合がある。 

 隆起性白質病変と関連する血管性脳浮腫を画像で確認できる症候性患者に対しては、メチルプレドニゾロンの静脈内投与に続いて、グルココルチコイドの経口投与を行うことは、妥当な介入ではあるが実証されていない。有効性のエビデンスは乏しいが、隆起性脳病変に対してメチルプレドニゾロン1000mg毎日3日間静注した後、プレドニゾンを60mgから開始し、5日ごとに5mgずつ漸減させる経口プレドニゾン漸減投与で治療する。治療反応(神経学的障害および神経画像検査で評価)に応じて、漸減量はゆっくりとした速度で、またはより少ない量で再開することができる。 

虚血性脳卒中とTIA 

 RVCL-S患者の一過性脳虚血発作と急性虚血性脳卒中は、脳卒中治療の一般原則に従って管理する。 

 しかし、急性虚血性脳卒中のRVCL-S患者には静脈内血栓溶解療法は推奨されていない。静脈内血栓溶解療法が有効であるという証明はなく、また、RVCL-Sは血管障害であるため、血栓溶解療法による出血リスクが高まる可能性がある。小血管疾患の徴候である多発性微小出血の患者では、静脈内血栓溶解療法はより高いリスクと関連している。 

 MRIで虚血イベントが確認されたRVCL-S患者の二次脳卒中予防のためには、抗血小板療法、スタチン治療、高血圧症や糖尿病の治療など、利用可能なリスク低減戦略を採用すべきである。さらに、禁煙が特に重要である。その他のライフスタイルの改善としては、アルコール摂取の制限、体重管理、定期的な身体活動、および果物、野菜、低脂肪乳製品を豊富に含む地中海式食生活などが提案されている。しかしながら、これらの方法がRVCL-Sにおける脳卒中リスクの低減に有効であるという具体的な証拠は不足している。 

臨床経過と予後 

 RVCL-Sは進行性の障害であるが、進行度は様々である。視覚障害は最も頻回に出現する症状であるが、認知障害の発症は遅いようである。 

 症状が長期間にわたって安定している場合もあるが、進行が急激に起こることもある。神経症状は50~55歳までは軽度であることが多いが、その後、疾患の最終段階で症状が急速に進行する。臨床経過をさらに明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる。  RVCL-Sの平均寿命は低下しており、ある研究では平均死亡年齢は53歳(標準偏差±9.6、範囲32~72歳)であった。死因として最も多いのは、全身衰弱状態での感染症(肺炎または敗血症)であった。

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