すぐに始められる認知症予防5選

認知症予防

 これまで本やテレビなどで認知症予防の話を見聞きした人が多いと思います。どこか抽象的で分かりにくい印象を持たなかったでしょうか。結局は健康に気をつけるぐらいで、大した発見はなかったと感じることすらあったかもしれません。ある意味、その感想は正しいです。認知症予防は特異的な方法がなく、実感を得にくいのが実情です。そのため予防法が提示されても、なかなか行動にうつれない人が多くみられます。分かっていても実践できなければ、せっかくの情報も宝の持ち腐れです。本記事では認知症予防について、できるたけ簡単に分かりやすく解説し、エビデンスに基づいた具体的なアクションプランを提示します。まずは一つからでも実行してもらえると嬉しいです。

WHOによる認知症リスク低減のためのガイドライン

 2019年に世界保健機関(WHO)は、認知症のリスク低減 (Risk Reduction of Cognitive Decline and Dementia)のためのガイドラインを公表しました。日本語に要約したものを提示します。

 まず12個の提言のうち、1~6番が生活習慣の改善、7~12番が病気の予防・治療をすすめていることが分かります。特に7~10番は生活習慣病の治療と重なり、生活習慣病の予防・治療が認知症予防に重要であることを示しています。このガイドラインに即して、すぐ行動できる認知症予防を解説します。

健康診断に行こう

 WHO宣言の7~12に相当します。会社勤めの方は1年に1回健康診断を必ず受けましょう。市民健診を利用しても構いません。ただし血液検査を含むものでお願いします。健康診断では高血圧、糖尿病、脂質異常症をスクリーニングします。もし精査要の結果を受け取った場合は必ず病院を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしてください。現在、高血圧、糖尿病、脂質異常症は認知症の発症リスクであると確定しています。ただこれら3疾患は症状としてあらわれにくいため、なかなか予防や治療に繋がらないのが現実です。そのため1年に1回は健康診断を受け、スクリーニングすることをすすめます。また精査依頼や注意を受けても、つい面倒で受診しなかった方もいると思います。3疾患を放置して10年後、20年後に認知症になることを考えれば、少ない労力だとは思いませんか?まずは健康診断を受けて自分の健康状態を意識しましょう。

20分の散歩をしよう

 WHO宣言の1に相当します。身体活動すなわち運動を推奨しています。ただどのぐらいの運動が望ましいのかは諸説があります。まず長距離マラソンや筋トレなどの負荷の高い運動は対象ではありません。うっすら汗をかく程度の軽い運動を推奨しています。そのため私は20分程度の散歩(ウォーキング)を推奨しています。散歩は外の景色を見ながら行えるので、身体運動と視覚刺激が同時に得られ一石二鳥です。新しい情報をインプットすることは認知症予防に有用ですので、散歩コースも時々変えるのが良いでしょう。大事なのは習慣化することで、週に2-3回行うのが望ましいです。

趣味を持とう

 WHO宣言の5, 6に相当します。仕事人間だった人が定年退職後に一気に老け込み、認知症を発症したケースを聞いたことがあると思います。これは社会的関わりが仕事しかなかったため、退職後自分の居場所を失い認知症を発症したものと思われます。あなたは自分の居場所がどこにあるか即答できますか?1ヶ所かつ職場や家庭だけだった場合、認知症に陥る危険が大きいです。居場所が1ヶ所だけしかないと、その環境がなくなった場合(退職や家族との死別など)、自分の存在理由を大きく損ないます。人間の脳は刺激が入らないとすぐに怠けて退化してしまいます。それを防ぐために家庭や職場以外に居場所を作ることを推奨しています。例えば釣りや園芸などの趣味があれば、同じ趣味の人が集まり、新たなコミュニティーが形成されます。複数コミュニティーがあれば、たとえそのうちの一つがなくなってしまっても、別のコミュニティーに避難することができます。自分の居場所があれば、生きがいを持ち続け認知症になる可能性が低くなります。趣味は何でも良いですが、原則他者と交流があるものを推奨します。あるいはボランティアなど他者に貢献する活動も有用です。ぜひ自分の居場所を複数持つよう今から心がけてください。

大豆・野菜をとろう

 WHO宣言の3に相当します。この項目の詳細は「認知症予防にオススメできる食習慣4選」で解説しています。ここでは簡単に説明しますが、認知症予防で推奨される食事として「地中海料理」が推奨されています。地中海料理? われわれ日本人にとっては今ひとつピンときませんね。実は日本でも同様の調査を行っており、「久山町研究からみた認知症の予防」で大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類、牛乳・乳製品、果物を多く摂取している人が認知症になりにくく、米飯をたくさん摂りすぎている人が認知症になりやすいという結果が報告されました。日本の主食であるお米が認知症のリスクになっているのは驚きですね。しかしこれは過食が問題であり普通に摂取する分には問題ありません。推奨されている食物を見ると和食は認知症に効果的と分かります。ただおかずを減らしてご飯を大盛りにして食べるのは控えましょう。

禁煙・節酒を心がけよう

 WHO宣言の2, 4に相当します。まず喫煙は認知症ハイリスク因子のためすぐにやめることを勧めます。動脈硬化からの観点になりますが、やめた時点から動脈硬化の進行リスクが減少しますので遅すぎることはありません。飲酒に関しては適度な飲酒が逆に認知症の予防効果に繋がるとの海外の報告があります。具体的には赤ワインが相当します。ただ海外のデータを根拠にしますので日本でそのまま該当するかは不透明です。それでは適正飲酒量とはどれぐらいなのか。アルコールで1日20g程度、ビールなら500ml缶、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯までになります。逆に飲む過ぎると認知症のリスクが高くなります。アルコール性認知症という病気がありますので、飲酒は程々に嗜む程度にしましょう。

 以上、認知症予防のアクションプランを解説しました。抗認知症薬については「抗認知症薬の効果と開始するタイミングを解説します」で取り上げました。まずは今回紹介した5項目から一つでも良いので実践することをお勧めします。