視神経脊髄炎の病態と治療の要点

視神経脊髄炎

 視神経脊髄炎は抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性の中枢神経脱髄疾患で、Il-6を介した強い炎症が視神経と脊髄に生じます。急性期はステロイドパルス療法、再発予防にステロイド内服や免疫抑制薬を用います。最近では、エクリズマブが適応になっています。今回、視神経脊髄炎の病態と治療の要点を紹介します。

中枢神経脱髄疾患の分類

  • 多発性硬化症(MS)
  • 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)
  • 特発性視神経炎
  • 腫瘍様炎症性脱髄疾患
  • 急性散在性脳脊髄炎
  • 抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)

NMOSDの特徴

  • 血液中の抗アクアポリン4(AQP4)抗体が陽性
  • 日本に約4,000人。女性が9割。
  • 強い炎症が視神経と脊髄に生じやすい
  • 乳児~高齢者まで、幅広い年齢層で発症する
  • 慢性的な進行はないので、再発を防ぐことが重要
  • 失明、体幹の痛み、筋けいれんが後遺症で多い
  • 多発性硬化症の治療薬(疾患修飾薬:DMT)は効かない
  • 昔は視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS)あるいはデビック病と呼ばれていた

病態

  • 末梢血B細胞が関与
  • IL-6を介してプラズマブラストに分化し、抗AQP4抗体を産生
  • 炎症反応で血液脳関門が破壊され、抗AQP4抗体が中枢のアストロサイト足突起に発現しているAQP4に結合
  • 抗AQP4抗体により補体が活性化されアストロサイトが障害される

NMOSD診断基準

Wingerchuk 2015診断基準

必須項目

  1. 血清抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性

少なくとも1つのコア症状を持つ

  • 視神経炎
  • 急性横断性脊髄炎
  • 最後野症状
  • 急性脳幹症状
  • MRI病変を伴う症候性ナルコレプシーあるいは間脳症候群
  • MRI病変を伴う症候性脳病変

 抗AQP4抗体陰性例では少なくとも2つのコア症状があり、そのうちの1つは1~3のいずれかで、時間的多発性があり、MRIでNMOSDを示唆する所見が必要

NMOSDの診断

血液検査

抗AQP4抗体

  • ELISA法(保険適用):感度が低い
  • CBA法(保険適用外)

抗MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白)抗体

  • CBA法(保険適用外)

画像検査

  • MRI:頭部、脊髄(頸髄・胸髄)

治療

急性増悪期治療(初発を含む)

副腎皮質ステロイド薬

  • 高用量の副腎皮質ステロイド薬(特にメチルプレドニゾロン)の静注療法であるステロイドパルス療法の実施が一般的
  • 推奨:500mg/日以上で3-5日間

血漿浄化療法

  • ステロイド治療抵抗性の症例や、重度の視神経炎、脊髄炎を認める症例で有用
  • 推奨:早期からの施行

再発予防治療

副腎皮質ステロイド薬

  • 推奨:ステロイドパルス療法後、プレドニゾロン量で0.5-1mg/kg/日から開始し、1ヶ月で5mg/日程度減量する。15mg/日まで減量後は更にゆるやかに減量し、最終的には0.1mg/kg/日程度を維持量とする

免疫抑制薬

  • 再発予防を目的に、アザチオプリンを副腎皮質ステロイド薬と併用して用いる
  • タクロリムス、シクロスポリンAの使用も可能であり、タクロリムスは1-3mg/日、シクロスポリンAは140-150mg/日を経口投与する
  • これらの免疫抑制薬はNMOに対しては保険適応外である

再発予防治療(新薬含む)

  • エクリズマブ(ソリリス®):抗C5抗体。4週目まで毎週点滴。5週目以降は2週間隔で点滴
  • サトリズマブ(エンスプリング®):抗IL-6R抗体。4週目までは2週間隔、5週目以降は4週間間隔で皮下注射
  • イネビリズマブ(ユプリズナ®):抗CD19抗体。2週間隔で2回点滴。その後半年毎に1回点滴
  • リツキシマブ(リツキサン®):抗CD20抗体。1週間毎に4回点滴。その後約半年毎に1回点滴