脳梗塞後の神経修復とNeurovascular unit

neurovascular-unit

 脳梗塞後の組織変化は、発症1-3日は組織傷害と細胞死によりマクロファージによる炎症性因子が産生されます。6日以降は修復性ミクログリアが出現し、デブリスの除去や栄養因子の産生が始まります。今回、脳梗塞後の神経修復とNeurovascular unitについて紹介します。

脳梗塞後の反応

炎症期(発症1日~3日)

  1. 組織傷害と細胞死
  2. マクロファージによる炎症性因子の産生:自己由来炎症誘起因子(Danger associated molecular patterns; DAMPs)をマクロファージのDAMP receptorが認識し、炎症性サイトカイン(IL-1βなど)、ケモカインを産生→急性炎症(無菌的炎症)

DAMPs

ペルオキシレドキシン(PRDX)

  • 細胞内では抗酸化作用(脳保護)
  • 脳細胞の壊死に伴って、細胞外に放出
  • 周囲の免疫細胞を活性化して炎症を惹起

DJ-1

  • 細胞内では抗酸化作用(脳保護)
  • 脳細胞の虚血壊死後、TLR2/4を介してミクログリア・マクロファージを活性化する

修復期(発症6日~)

  • 修復細胞(reparative microglia; 修復性ミクログリア)の出現
    • 細胞死の残骸を排除
    • 栄養因子(IGF-1など)の産生

修復性ミクログリア

  • ミクログリアの修復機能はエピジェネティックに規定されている
  • AP-1やETSがミクログリアを脳内に分化誘導する可能性

Neurovascular unit

構造

(内側)血管内皮- tight junction-基底膜(basal lamina)-マトリックス蛋白-周皮細胞(ペリサイト)-アストログリア足突起-アストログリア細胞体-ミクログリア-神経細胞(外側)

neurovascular unit

ペリサイト

  • Neurovascular unitの構成細胞のひとつ
  • ペリサイトは内皮細胞を取り囲むように分布
  • 血液脳関門の維持、微小循環の調節、血管新生、免疫応答に関与する
  • ぺリサイトは、内皮から放出されるPDGF-BBに対してペリサイトのPDGFRβを介してrecruitmentされ、新生血管の成熟化・血液脳関門の形成に関与する
  • ペリサイトは梗塞周囲から集簇し、梗塞巣の縮小化に関与する
  • ペリサイトはPDGFRβを介して梗塞周囲アストログリオーシスを促進する
  • ペリサイトはマクロファージと近接し、マクロファージの梗塞巣内への集積を促進する(マクロファージのミエリン・デブリスの貪食を促進)
  • ペリサイトはアストロサイトを介し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化・再髄鞘化を促進する

細胞外マトリックス(ECM)

  • 細胞周囲の微小環境の構造的・機能的な中核であり、細胞周囲に存在する線維状もしくは網目状の構造体
  • ほぼすべての細胞はECMに接着し、ECMとの相互作用を通じて細胞死の回避や増殖・分化を制御するシグナルを受け取っている
  • ECMの分子構造は組織ごと、細胞ごとに多様性を示す
  • Neurovascular unitにおけるECMは基底膜(basement membrane)に相当する

基底膜(basal lamina)

  • 血液脳関門(BBB)の機能維持にとって重要な役割を担う
  • Neurovascular unitを構成する各細胞からそれぞれ種々のECM蛋白が産生される
  • Perlecanは内皮・ペリサイト間の基底膜に存在し、BBBを構成する
  • Fibronectinは線維化およびマクロファージのデブリス貪食を促進する
  • Lamininα2はグリア瘢痕形成および再髄鞘化を促進する

オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)

  • 「Circulating pre-OPC」「Perivascular OPC」「Parenchymal OPC」が、脳外の末梢循環および脳内の神経系・血管系・グリア系・免疫系と相互作用し合いながら、脳恒常性維持に多くの役割を果たしている
  • Perivascular OPCは基底膜を介して血管内皮に接着している
  • OPCはBBBの重要な構成因子の一つである
  • 脳梗塞後、大脳皮質においてOPCのphenotypeはParenchymal typeからperivascular typeにshiftする
  • 脳梗塞後では血管新生と連動してPerivascular OPCが増加する
  • 低酸素負荷OPCは血管新生促進因子の発現・分泌を亢進させる