重症筋無力症の診断の要点

重症筋無力症

 重症筋無力症(MG)は、2021年に診療ガイドラインが改訂される予定です。現在、ステロイドは高用量・長期の内服は予後改善に繋がらず、低用量服用が望ましいとされています。また症状再燃時はIVIg、ステロイドパルス、血漿交換などの早期速効性治療が推奨されています。今回、重症筋無力症の診断の要点を紹介します。

重症筋無力症の有病率(10万人あたり)

  • 2006年 11.8人
  • 2018年 23.1人

診断基準

  • A. 症状
    •  眼瞼下垂
    •  眼球運動障害
    •  顔面筋力低下
    •  構音障害
    •  嚥下障害
    •  咀嚼障害
    •  頸部筋力低下
    •  四肢筋力低下
    •  呼吸障害
    •  <補足>上記症状は易疲労性や日内変動を呈する
  • B. 病原性自己抗体
    •  AchR抗体陽性
    •  Musk抗体陽性
  • C. 神経筋接合部障害
    •  眼瞼の易疲労性試験陽性
    •  アイスパック試験陽性
    •  エドロフォニウム試験陽性
    •  反復刺激試験陽性
    •  単線維筋電図でジッターの増大
  • D. 支持的診断所見
    •  血漿浄化療法によって改善を示した病歴がある
  • E. 判定
  • Definite
    •  Aの1つ以上、Bのいずれかが認められる
    •  Aの1つ以上、Cのいずれかが認められ、他の疾患が鑑別できる
  • Probable
    •  Aの1つ以上、Dを認め、血漿浄化療法が有効な他の疾患を除外できる

重症筋無力症の新しい分類

  • 眼筋型(O):Ocular眼筋型
  • 全身型(g-)
    •  AchR抗体陽性
      •   g-EOMG:早期発症→50歳未満発症、胸腺腫(-)
      •   g-LOMG:後期発症→50歳以上発症、胸腺腫(-)
      •   g-TAMG:胸腺腫関連
    •  AchR抗体陰性
      •   g-MuSK-MG
      •   g-SNMG→LRP4抗体陽性、seronegative MG

神経筋伝達のしくみ

  1. AgrinがLRP4に結合→MuSKを活性化する
  2. 活性化したMuSKはAchRを凝集
 抗体のサブクラス補体の関与胸腺の異常
AchR抗体IgG1主体+++
MuSK抗体IgG4主体-(±)
LRP4抗体IgG1主体不明

神経筋伝達障害発症のメカニズム

  1. AchとAchRの結合障害
  2. AchRの崩壊促進
  3. 補体介在性の運動終板の崩壊(とくにAchR抗体陽性MG)

経口PSLの最近の知見

  • MGでは高用量・長期のPSL内服は良好な転帰に関連していない
  • PSLのgood responder/poor responderが存在する
  • PSL投与をして効果がなければその後にPSLを増やす意味はない→早期速効性治療(EFT)を
  • 高用量PSLはQOL低下と相関している
  • 従来型のPSL漸増漸減療法より、低用量PSLにEFTを併用した方が治療目標を達成しやすい

重症筋無力症の治療目標

 治療後状態がMM以上かつ経口PSL≦5mgとする

治療後状態

  • CSR:完全寛解
  • PR:薬理学的寛解
  • MM:軽微症状(生活に支障なし)
  • I:改善(QMG3点以上改善、生活に支障あり)
  • U:不変(QMG3点以上の改善なし)
  • W:増悪(QMG3点以上の悪化あり)
  • E:再燃

早期速効性治療(EFT)

  • 治療目標である「MM5」を達成するためには、EFTの施行が有効である
  • EFTの例:IvIg±IVMP(ステロイドパルス)、PLEX(血漿交換)±IVMP

胸腺摘除に関する最近の知見

  • 有効性が期待でき、その施行が検討される非胸腺腫MGは、50歳未満の発症で、発病早期のAChR抗体陽性過形成胸腺例である
  • 50歳以上発症の非胸腺腫MGに対しては、胸腺摘除がfirst-lineの治療ではない

全身型MG治療

  • 低用量経口ステロイド、免疫抑制薬
  • 低用量経口ステロイド、免疫抑制薬+EFT+分子標的薬(難治例)
  • 低用量経口ステロイド、免疫抑制薬+分子標的薬

難治性MGの定義

 「複数の経口免疫治療薬による治療」あるいは「経口免疫治療薬と繰り返す非経口速効性治療を併用する治療」を一定期間行っても、「十分な改善が得られない」あるいは「副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」場合である

分子標的薬

  • 補体阻害薬
  • Eculizumabが承認済み

治療アルゴリズム

眼筋型

  1. AchEI+Naphazoline点眼(プリビナ点眼液®)
  2. PSL 5mg±CNI(calcineurin inhibitor)
  3. 胸腺腫がある場合、胸腺摘除
  4. ステロイドパルスを反復

全身型

 まず、低用量PSL(max. 15-20mg/day)+CNI+AChEI。効果がない場合は、以下の方針で治療をすすめる。

EOMG

  1. EFT(IVIg/PLEX/血漿免疫吸着法(IAPP)±IVMP
  2. (胸腺摘除)
  3. FT(fast-acting treatment)を反復
  4. Eculizumab

LOMG

  1. EFT(IVIg/PLEX/血漿免疫吸着法(IAPP)±IVMP
  2. FT(fast-acting treatment)を反復
  3. Eculizumab

TAMG

  1. 胸腺摘除
  2. EFT(IVIg/PLEX/血漿免疫吸着法(IAPP)±IVMP
  3. FT(fast-acting treatment)を反復
  4. Eculizumab

MuSK

  1. EFT(IVIg/PLEX±IVMP)
  2. FT(fast-acting treatment)を反復
  3. Rituximab

SNMG

  1. EFT(IVIg/PLEX±IVMP)
  2. FT(fast-acting treatment)を反復
  3. Rituximab