多発性硬化症の診断・治療まとめ

多発性硬化症

 多発性硬化症は、「空間的多発性」「時間的多発性」を満たす「中枢神経系脱髄疾患」のうち「原因不明のもの」と定義されています。最近は、神経変性(脳萎縮)は初期から進行すると言われています。治療は、再発寛解型MS時に早期に開始することが推奨されています。今回、多発性硬化症の診断・治療をまとめました。

多発性硬化症とは

  • 「空間的多発性」「時間的多発性」を満たす「中枢神経系脱髄疾患」のうち「原因不明のもの」
  • 炎症性脱髄と髄鞘再生を繰り返すが、やがて髄鞘再生不良に至る
  • 炎症が酸化ストレスをもたらす→神経変性を起こし、脳萎縮に至る
  • 臨床的には再発、身体障害(EDSS)、高次脳機能障害を起こす
  • 中枢神経系近傍のB細胞、ミクログリア(神経炎症)、加齢現象→「進行型」多発性硬化症

疫学

  • 2019年推計 2.4万人(4人に1人は視神経脊髄炎に分類)
  • 年々増加傾向

診断

改訂McDonald診断基準(2017)

  • 他の疾患をまず除外すること
    • McDonald診断基準を鑑別診断のために使用しない
  • 中枢神経系脱髄疾患の症状を呈する患者に限る
    • 無症候性の患者には使用しない

 以下の場合は「抗AQP4抗体」及び「抗MAG抗体」を測定すること

  • 視神経脊髄関連疾患(NMOSD)を示唆する患者
    • 両側性視神経炎、重度の脳幹病変、長い脊髄病変、大きな大脳病変、脳病変がない場合、空間的多発性(DIS)基準を満たさない場合
  • NMOSDが高リスクである集団:アフリカ系アメリカ人、アジア人、ラテンアメリカ人、小児

1.空間的多発性(DIS; A or B)

A. 異なる2種類以上の神経症状

B. MRIで下記の2ヶ所以上でT2病変(症候性でもよい)を認める

 ①脳室周囲 ②皮質/傍皮質 ③テント下 ④脊髄

2.時間的多発性(DIT; A or B)

A. 異なる時期に2回以上の神経症状

B. 新規のT2病変もしくは造影病変の出現

C. MRIで造影病変と非造影病変が混在

D. 脳脊髄液中オリゴクローナルバンド陽性

頭部MRI所見

  • Dawson’s finger sign:矢状断にて脳室に接した形で半卵円状の病変が並んで見える
  • ovoid lesion:半卵円状の病変
  • U fiber lesion (juxtacortical lesion):大脳皮質の脳溝に近接した線維状病変

経過

  • 神経変性(脳萎縮)は初期から進行する
  • 再発寛解型→二次性進行型に移行する
  • 未治療の場合、40歳代:独歩辛うじて可能、50歳代:杖歩行、60歳代:車椅子
  • 平均寿命より10年減少
  • 予後不良群:男性、30歳以上発症、初期に再発が多い患者

治療

 日本では再発寛解型MSに対して6種類の薬剤が使用可能


 
IFNβ1b (ベタフェロン®)IFNβ1a (アボネックス®)フィンゴリモド (ジレニア®、イムセラ®)ナタリズマブ (タイサブリ®)グラチラマー酢酸塩 (コバキソン®)フマル酸ジメチル (テクフィデラ®)
剤形皮下注射 (隔日)筋肉注射 (週1回)内服 (1日1回)点滴 (月1回)皮下注射(毎日)内服 (1日2回)
国内承認2000年9月2006年7月2011年9月2014年3月2015年11月2016年12月
標的IFNα/β受容体(IFNAR1/2)同左S1P受容体α4インテグリンT細胞?Nrf2経路?
再発率約30%低下同左約50%低下約70%低下約30%低下約50%低下
身体障害度約30%抑制同左約30%抑制約40%抑制約10%抑制約40%抑制
MRI活動性約80%抑制約50%抑制約80%抑制約90%抑制約30%抑制約90%抑制
脳萎縮抑制±同左+++±+
添付文書上重大副作用自殺企図 間質性肺炎同左黄斑浮腫 徐脈性不整脈 感染症(含PML)PMLなしなし
AQP4(+)症例おそらく悪化同左悪化悪化無効悪化
妊娠出産早産リスク同左催奇形性胎児血液異常なし不明
  • シポニモド(メーゼント®)は二次性進行型MSでも早期なら有効

※現在市販されている新型コロナウィルスワクチンについては、現時点で多発性硬化症を悪化させるエビデンスはないため、ワクチン接種を推奨している。