片頭痛の診断は二次性頭痛の除外と、片頭痛の診断基準に合致しているかを確認することが大事です。前兆は視覚性前兆が最も多く、通常5-20分かけて徐々に進展します。頭痛発作中に悪心・嘔吐・光過敏・音過敏のいずれかを満たす必要があります。今回、片頭痛の診断の要点を紹介します。
診断の流れ
- 頭痛についての問診
- 二次性頭痛を含むその他の頭痛の否定:MRIで異常がないことを確認
- 診断基準を確認
診断基準
前兆のない片頭痛
- A. B~Dを満たす発作が5回以上ある
- B. 頭痛発作の持続時間は4-72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
- C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
- ①片側性
- ②拍動性
- ③中等度~重度の頭痛
- ④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪するあるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
- D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
- ①悪心または嘔吐(あるいはその両方)
- ②光過敏および音過敏
- E. ほかに最適なICHD-3の診断がない
前兆のある片頭痛
- A. BおよびCを満たす発作が2回以上ある
- B. 以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある
- ①視覚症状
- ②感覚症状
- ③言語症状
- ④運動症状
- ⑤脳幹症状
- ⑥網膜症状
- C. 以下の6つの特徴の少なくとも3項目を満たす
- ①少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展する
- ②2つ以上の前兆が引き続き生じる
- ③それぞれの前兆症状は5-60分持続する
- ④少なくとも1つの前兆症状は片側性である
- ⑤少なくとも1つの前兆症状は陽性症状である
- ⑥前兆に伴って、あるいは前兆発現後60分以内に頭痛が発現する
- D. ほかに最適なICHD-3の診断がない
片頭痛の前兆症状
- 片頭痛発作の頭痛が始まる直前または同時期に起こる完全可逆性の局在神経症状
- 通常5-20分にわたり徐々に進展し、持続時間は60分未満
典型的前兆 | 視覚症状 (片頭痛患者の90%以上に認められる) | 感覚症状 | 言語症状 (頻度は低い) |
陽性徴候 | 閃輝暗点 | 異常感覚 | |
陰性徴候 | 視覚消失 | 感覚鈍麻 | 失語など |
脳幹性前兆
前兆症状の責任病巣が明らかに脳幹と考えられるもの
以下のうち少なくとも2項目を満たす
- 構音障害
- 回転性めまい
- 耳鳴
- 難聴
- 複視
- 感覚障害に起因しない運動失調
- 意識レベルの低下
片麻痺性片頭痛の前兆
典型的前兆うち少なくとも1項目と完全可逆性の運動麻痺(脱力)を認める
- 運動症状の持続時間は72時間未満。その他は5-60分
- 網膜片頭痛の前兆
- 単眼の視覚障害(閃輝・暗点・視覚消失など)の発作
片頭痛の合併症
- 片頭痛発作重積:片頭痛発作が72時間を超えて持続する
- 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの:前兆症状が1週間以上続くが、神経画像検査では脳梗塞を認めない
- 片頭痛性脳梗塞:前兆のある片頭痛発作中、症状の責任領域に虚血性脳病変が神経画像検査によって証明される
- 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作:てんかん発作診断基準を満たす痙攣発作が前兆のある片頭痛発作に伴って起こる
片頭痛を連想させるキーワード
- 市販の鎮痛薬では改善しない
- 動くとひどくなる
- 光・音・匂いが嫌
- 一眠りすると良くなる
- 今までにもたびたび同様の頭痛があった
- 休みの日になると頭が痛い
- 始まりがわかる
- 母も若い頃頭が痛いと言っていた
稀発反復性緊張型頭痛
診断基準
- A. 平均して1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす
- B. 30分~7日間持続する
- C. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
- ①両側性
- ②正常は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
- ③強さは軽度~中等度
- ④歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
- D. 以下の両方を満たす
- ①悪心や嘔吐はない
- ②光過敏・音過敏はあってもどちらか一方のみ
- E. ほかに最適なICHD-3の診断がない
緊張型頭痛を連想させるキーワード
- 常にすっきりしない
- 締め付けられるような感じ
- 動いていると忘れていることもある
- 天気の悪い日は痛くなる
- ちょっとむかむかするかも
片頭痛発作時、首の痛み(肩こり)を伴う患者は75%と多い
片頭痛の予兆として考える必要がある
群発頭痛
診断基準
- A. B~Dを満たす発作が5回以上ある
- B. (未治療の場合に)重度~きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15~180分間持続する
- C. 以下の1項目以上を認める
- 1.頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
- a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
- b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
- c) 眼瞼浮腫
- d) 前額部および顔面の発汗
- e) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
- 2.落着きのない、あるいは興奮した様子
- 1.頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
- D. 発作の頻度は1回/2日~8回/日である
- E. ほかに最適なICHD-3の診断がない
群発頭痛と片頭痛の特徴の違い
片頭痛 | 群発頭痛 | |
痛み | 中等度から重度 (拍動性が典型的) | 重度から極めて重度(眼の奥をえぐられるような痛み) |
部位 | 片側または両側 | 片側の眼窩周辺(片側が必須) |
男女比 | 女性に多い | 男性に多い(女性の3-4倍) |
動作 | 安静臥床(動くと増悪) | 痛くてじっとしていられない |
随伴症状など | 悪心・嘔吐・光・音過敏 | 結膜充血・流涙・鼻閉・鼻漏など(頭痛と同側) |
発症形式 | 不定期 | ある期間群発する(連続して起こる) |
二次性頭痛との鑑別
片頭痛と思っても注意するべき症例
- 高齢発症の例
- 初めての頭痛
- 局所徴候の伴う頭痛
- 高血圧を伴う頭痛
くも膜下出血、頭蓋内出血、腫瘍性病変、頭蓋内感染症、頭蓋内圧亢進・低髄液圧による頭痛などが隠れている可能性がある→画像検査を行い、二次性頭痛を否定する
RCVSによる急性頭痛
診断基準
- A. Cを満たすすべての新規頭痛
- B. 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と診断されている
- C. 原因となる証拠として、以下の項目のいずれかまたは両方が示されている
- ①頭痛は局在神経学的欠損または痙攣発作(あるいはその両方)を伴うことも伴わないこともあり、血管造影で「数珠(strings of beads)」状外観を呈し、RCVSの診断の契機となった
- ②頭痛は以下の項目の1つまたはそれ以上の特徴をもつ
- a) 雷鳴頭痛として発現
- b) 性行為、労作、ヴァルサルヴァ手技、感情、入浴やシャワーなどが引き金となる
- c) 発症後①ヶ月を超えると著明な頭痛は起こらない
- D. 以下のうちいずれか
- ①頭痛は3ヶ月位内に消失する
- ②頭痛はまだ消失していない、まだ3ヶ月経過していない
- E. ほかに最適なICHD-3の診断がない