認知症、せん妄に用いる治療薬一覧

認知症・せん妄に用いる薬

 本記事では認知症、せん妄に用いる治療薬を一覧にしてまとめました。抗認知症薬については「抗認知症薬の効果と開始するタイミングを解説します」でも解説していますので参考にしてください。今回「認知症疾患 診療ガイドライン2017」「認知症治療薬の考え方、使い方」を参考にしています。ここでの薬は特にコメントがなければアルツハイマー型認知症を対象にしています。

抗認知症薬

コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)

  1. ドネペジル(アリセプト®:アセチルコリンエステラーゼ阻害。半減期70-80時間。
  2. ガランタミン(レミニール®:アセチルコリンエステラーゼ阻害+ニコチニックAPL作用(ニコチン性アセチルコリン受容体に作用することでシグナル伝達の感受性を亢進させる)。半減期8-9時間。
  3. リバスチグミン(リバスタッチ®、イクセロン®:日本では貼付剤のみ販売。アセチルコリンエステラーゼ阻害+ブチリルコリンエステラーゼ阻害。半減期2-3時間。
  • リバスチグミンは皮膚症状の予防には皮膚の保湿が重要。ヘパリン類似物質製剤(ヒルドイドなど)や白色ワセリンなどの保湿剤を用いる。お風呂上がりに新しいパッチを貼った後に貼った部位を避けて保湿剤を塗る。皮膚症状がパッチの大きさに限局してれば刺激性接触皮膚炎のことが多く、ストロングクラスステロイド(リンデロンVG)で対応する。
  • ChEI 3剤で明確な差は認められず, 軽度~中等度のアルツハイマー型認知症に使用が推奨された (Cochrane Database Syst Rev, 2006)。
  • ドネペジル 10mg/日とガランタミン 24mg/日のみが行動障害に有効だった(J Alzheimers Dis, 2014)。
  • リバスチグミン貼付剤はADL低下速度を軽減し, 内服薬よりも副作用が少なかった (Cochrane Database Syst Rev, 2015)。
  • ドネペジル無効例において,  ガランタミンへの切り替えによる認知機能改善が示されている (老年精神医学雑誌 25, 2014)。

NMDA受容体拮抗薬

 メマンチン(メマリー®:NMDA受容体を介したCa2+の流入を抑えることで神経細胞死を防ぐ。半減期50-70時間。腎排泄性のためCCr<=30ml/分以下の場合は維持量を10mg/日に減量する。

  • メマンチンは焦燥性興奮や易怒性などのBPSDが目立つ症例に有効だった (Cochrane Database Syst Rev, 2006)。

非定型抗精神病薬

  •  抗精神病薬を認知症のBPSDやせん妄に使うのは適応外使用と認識する。ただしクエチアピン(セロクエル®)、ハロペリドール(セレネース®)、ペロスピロン(ルーラン®)、リスペリドン(リスパダール®)については、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」に対しては、審査上認めるとの通達がある。
  •  認知症に伴うせん妄は5-HT2受容体拮抗薬であるミアンセリン(テトラミド®、四環系抗うつ薬でもある)やトラゾドン(レスリン®)の使用が推奨される場合もある。

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)

  1. リスペリドン:鎮静作用<抗幻覚作用、認知症では焦燥性興奮、攻撃性に有効。EPA(錐体外路障害)発現少ない。
  2. ペロスピロン:抗不安・抗鬱作用
  3. ブロナンセリン(ロナセン®:鎮静作用<抗幻覚・妄想作用。EPA発現少ない。

多元受容体作用抗精神病薬(MRTA)

  1. クエチアピン:半減期が3.5時間と短いため、BPSDやせん妄に対してよく使用される。コントロール困難な睡眠障害に用いることもある。糖尿病には禁忌。EPA発現多い。
  2. オランザピン(ジプレキサ®:糖尿病には禁忌。EPA発現少ない。

ドパミン部分作動薬(DPA)

  1. アリピプラゾール(エビリファイ®:低活動性せん妄に一定の効果あり。鎮静作用低い。EPA発現少ない。

抗うつ薬

 効果が出るのは基本1-2週間かかることを知っておく。

SSRI

  1. パロキセチン(パキシル®:服用開始10日と比較的早く定常状態に達する。抗うつ作用、弱い鎮静作用を持つ。アカシジア、SSRI離脱症候群に注意。
  2. フルボキサミン(ルボックス®・デプロメール®:不安、精神病性うつに効果あり。弱い鎮静作用を持つ。消化器症状、SSRI離脱症候群に注意。
  3. セルトラリン(ジェイゾロフト®:不安、精神病性うつ、意欲低下、集中力低下に効果あり。SSRI離脱症候群に注意。

SNRI

  1. ミルナシプラン(トレドミン®:米国では線維筋痛症に効果あり。
  2. デュロキセチン(サインバルタ®:糖尿病性神経障害の疼痛、精神的な痛みにも効果あり。
  3. ミルタザピン(レメロン®・リフレックス®:NaSSAとも言われる。SSRIに比べて効果発現が早い。

睡眠薬

  •  日本老年医学会はせん妄・転倒・骨折のリスクから、高齢者で中止すべき睡眠薬にベンゾジアゼピン系睡眠薬(ブロチゾラム(レンドルミン®)やトリアゾラム(ハルシオン®)など)、ゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、エスゾピクロン(ルネスタ®)を挙げている。特に長時間作用型は使用すべきでないとしている(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015)。
  •  5-HT2受容体拮抗薬のトラゾドンやメラトニン受容体アゴニストのラメルテオン(ロゼレム®)は含まれない。安全性の面からトラゾドンラメルテオンは推奨されるが、睡眠導入を促す効果は低い。
  •  オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサント(ベルソムラ®)、レンボレキサント(デエビゴ®)は発売から日が浅くデータ不足だが、スボレキサントに日中傾眠の報告がある(J Am Geriatr Soc. 2015; 63 2227-46)。転倒を増加させる報告はない。

抗不安薬

  •  ベンゾジアゼピン系抗不安薬(エチゾラム(デパス®)、クロチアゼム(リーゼ®))はせん妄・転倒・骨折のリスクがあるため使用を避ける。ただし長年服用している状態で急に中断するとイライラ感、パニック、うつなどの離脱症状が出現するため注意。
  •  ヒドロキシジン(アタラックス®、アタラックスP®)もせん妄のリスクがあるため使用を控える。
  •  非ベンゾジアゼピン系のタンドスピロン(セディール®は依存性・転倒リスクが低く使用できる。

抗てんかん薬

  •  バルプロ酸(デパケン®は易怒性・暴言に使用されるが、焦燥に対しては効果がみられないという報告が2009年に出ている(Cochrane Database Syst Rev. 2009)。肝障害、高アンモニア血症、EPAの副作用に注意。
  •  カルバマゼピンは攻撃性、易怒性、暴言に有効。眠気、顆粒球減少、皮疹の副作用に注意。

漢方薬

 抑肝散が興奮・幻覚・妄想・せん妄・睡眠障害・行動障害に有効とされている。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症で効果を認め、抗精神病薬に過敏性を示すレビー小体型認知症にも使えるのが利点。ただし抗精神病薬よりも効果は低い。低カリウム血症の副作用に注意。

以下も参考にしてください

高齢者・認知症者に使いやすい睡眠薬(転倒リスクの観点から)

抗認知症薬の効果と開始するタイミングを解説します

認知症治療薬の考え方、使い方(中島健二編著)