認知症リスクに対応した多因子介入研究「J-MINT」を参考に認知症予防を実践する

グループミーティング

 認知症の予防法を確立するために国立長寿医療研究センターが「J-MINT」を立ち上げました。「J-MINT」のかかげる3本柱は「認知症予備軍への手厚い介入」「民間企業と共に予防サービスを構築」「認知機能低下抑制のメカニズム解明」となっています。本研究で注目されるのは認知症に至っていない軽度認知障害(MCI)を対象としている点です。また食事や運動など認知症予防で有用とされている因子を多数採用し、それらを対象者に提供する方法となっています。内容を見ると、認知・身体・精神すべてに配慮している充実したプログラムとなり、私自身も参加したくなるほどです。本記事では「J-MINT」で行われている内容を具体的に紹介し、自分達でも実践できるものを取り上げます。

J-MINTの概要

 対象者は65-85歳の軽度認知障害(MCI)のあるヒトで、すでに認知症のあるヒトは除きます。認知症の予防効果があるとされる複数の因子を対象者に提供し、18ヶ月間観察します。複数の評価スケールで対象者の認知機能の変化を解析します。認知症予防因子は以下の4つになります。

J-MINT

生活習慣病の管理

 外来で認知症のリスクとなる高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満といった生活習慣病のコントロールを行います。また同じくリスクの高い心疾患、心房細動、嚥下障害、うつ病、喫煙量、飲酒量、難聴の評価も合わせて行います。

運動指導

 スクワットなどのレジスタンストレーニング、エアロビクスなどの有酸素運動を行います。表にある「コグニサイズ」は国立長寿医療研究センターが提供している認知症予防運動プログラムです。国立長寿医療研究センター「コグニサイズ」のページでパンフレットをダウンロードできます。また定期的にグループミーティングを行い、現在の目標設定が継続可能かを話し合います。

食事指導

 食事時間、食事内容の評価を行い、各人の問題点を抽出します。「久山町コホート研究」や「大崎コホート研究」などの結果から認知症予防に推奨されている食事内容を指導します。推奨する食事は「認知症予防にオススメできる食習慣4選」でも解説しています。

認知機能訓練

 タブレットを用いた認知機能訓練「ブレインHQ」を提供しています。いわゆる脳トレで、ゲーム形式で記憶力、注意力、脳の処理速度などを鍛えます。簡易版をスマホアプリでプレイできるようになっています。

 以上、「J-MINT」のプログラムを解説しました。これらを参考に私達でも実践できる方法は「すぐに始められる認知症予防5選」でも解説しています。まず「生活習慣病の管理」は健康診断に行くことです。生活習慣病を指摘された場合、速やかに生活習慣の改善と治療を開始します。「運動指導」は20分程度の散歩から始めてください。「コグニサイズ」を活用しても良いです。「食事指導」は先程紹介した記事に記載しています。推奨食品を意識して摂取しましょう。「認知機能訓練」については多くの脳トレアプリが公開されているため選択に迷いますが、「ブレインHQ」は40時間の訓練により記憶力が4.3%増加、情報処理時間が56%減少したという報告が出ています。(J Am Geriatr Soc. 2009 Apr; 57(4): 594–603.)エビデンスがあることより信頼性がより高いと考えます。ただし簡易版アプリの結果ではありませんので注意が必要です。現在認知症は治療だけでなく予防も重要であることが示されています。一つ一つは効果が小さくても、すべてを合わせれば認知症リスクを35%下げられるという報告があります。(Lancet. 2017 Dec 16;390(10113):2673-2734.) 一つずつ増やしていき認知症予防に繋げていきましょう。

(参考)進行を少しでも遅らせ穏やかに生きる手助けをする─予防への最新の取り組み J-MINT─

ABOUT US

yshima脳神経内科医
認知症専門医の資格を持つ脳神経内科医です。 神経内科専門医・指導医、総合内科専門医・指導医、認知症サポート医。 M.D., Ph.D.