脳梗塞の病型分類の要点

脳梗塞の病型分類

 脳梗塞の病型分類で現在広く使われているのは、NINDS CVD-III分類とTOAST分類です。前者は臨床で良く用いられますが、明確な基準がないため主治医の主観の影響を受けやすいです。後者は画像・検査所見を加味し客観分類されていますが、原因不明になる率が高いです。今回、脳梗塞の病型分類の要点を紹介します。

脳梗塞の病型分類

 脳梗塞の病型分類は現在、以下の2つが最もよく利用されている。

  1. NINDS CVD-III分類
  2. TOAST分類

NINDS CVD-III分類

 1990年に米国のNINDSが提唱。脳梗塞を①発症機序②臨床病型③部位別症候の3つの視点から分類されている。

  • 発症機序:血栓性、塞栓性、血行力学性
  • 臨床病型:アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞、その他
  • 部位別症候:内頚動脈、前大脳動脈、中大脳動脈、椎骨脳底動脈系

アテローム血栓性脳梗塞

原因

  • アテローム硬化が原因。血栓性・塞栓性・血行力学性すべての機序が関係する。

アテローム硬化の分子発生メカニズム

  • 機械的刺激・毒素・ウィルス・LDL→内皮細胞活性化→流血中の単球が内皮細胞に付着・内膜へ侵入→内皮細胞分泌のサイトカインにてマクロファージに変化→Fatty streak(脂肪線状)の形成→コレステロールエステルの蓄積・血管平滑筋細胞の増殖→アテローム(粥状動脈)硬化

アテローム硬化の病理所見

  • 細胞質内に脂質を貯留した泡沫細胞の集族
  • 中膜弾性板の不明瞭化

心原性脳塞栓症

原因

  • 非弁膜症性心房細動(70%)
  • 心筋梗塞後の心腔内血栓・心内膜炎、左房粘液腫、特発性心筋症、卵円孔開存など

心原性脳塞栓症の病態

  • 血流鬱滞により凝固系の亢進→フィブリン血栓形成→脳梗塞発症

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞の発症機序

  • 穿通枝の血管病変(血栓性):リポヒアリノーシス(高血圧が原因)、アテローム硬化性病変
  • 塞栓性
  • 主幹動脈のアテローム硬化性病変→branch atheromatous disease(BAD):穿通枝起始部の狭窄あるいは閉塞により穿通枝動脈支配域全域に及ぶ梗塞(最大径1.5cmを超える梗塞巣)

その他の脳梗塞

原因

  • 内頚動脈や椎骨動脈解離、もやもや病、線維筋性形成異常症、大動脈炎症候群、血液凝固異常、大動脈原性脳梗塞、遺伝子素因

NINDS CVD-III分類の問題点

  • 脳梗塞の各臨床病型の具体的な診断法や基準が示されていないため、主治医の裁量により診断がぶれる可能性がある。

TOAST分類

  • 脳梗塞を簡便かつ実用的に診断することを目的に1993年に発表
  • 臨床症候・画像所見・その他の検査所見に基づいて脳梗塞を分類

分類

  • 大血管アテローム硬化(塞栓・血栓)
  • 心原性脳塞栓症(高リスク・中リスク)
  • 小血管閉塞(ラクナ)
  • その他の原因
  • 原因特定不能
    •  2つ以上の原因
    •  原因不明(潜因性脳梗塞)
    •  検索不十分

大血管アテローム硬化(large-artery atherosclerosis)

  • 臨床症候:大脳皮質症状(失語や半側空間無視)、脳幹や小脳障害による症状
  • 画像所見:大脳皮質や小脳、脳幹、皮質下に長径1.5cm以上の梗塞巣
  • 検査所見:脳梗塞の原因となった主幹動脈に50%以上の狭窄または閉塞

心原性脳塞栓症

  • 臨床症候:大脳皮質症状(失語や半側空間無視)、脳幹や小脳障害による症状
  • 画像所見:大脳皮質や小脳、脳幹、皮質下に長径1.5cm以上の梗塞巣
  • 検査所見:塞栓子を生じうる心疾患が少なくとも1つ以上同定されている(高リスク/中リスク)
高リスク(probable)中リスク(possible)
人工弁
心房細動を伴う僧帽弁狭窄症
心房細動
左心耳血栓
洞不全症候群
心筋梗塞(発症4週以内)
左室内血栓
拡張型心筋症
左室壁部分的無活動 粘液腫
感染性心内膜炎
僧帽弁逸脱症
僧帽弁輪石灰化症
僧帽弁狭窄症
左房内もやもやエコー
心房中隔瘤
卵円孔開存症
心房粗動
孤立性心房細動
生体弁
非細菌性血栓性心内膜炎
うっ血性心不全
左室壁部分的低活動
心筋梗塞(発症4週から6ヶ月)

小血管閉塞

  • 臨床症候:古典的なラクナ症候群を呈する。皮質症状は認めない。
  • 画像所見:脳幹・皮質下に長径1.5cm以下の梗塞巣
  • 検査所見:病巣側の主幹動脈に50%以上の狭窄を認めない。心原性脳塞栓症の原因疾患を有さない。

その他の原因

  • 臨床症候:特別な定義なし
  • 画像所見:特別な定義なし
  • 検査所見:病巣側の主幹動脈にアテローム性変化を認めない。心原性脳塞栓症の原因疾患を有さない。脳梗塞の原因となりうるまれな要因(動脈解離・血液凝固異常・血管炎など)を確認。

原因特定不能(undetermined etiology)

  • 2つ以上の原因が存在し、最もありそうな原因が明白でない
  • 検査で明らかな異常が見つからない(潜因性脳梗塞 cryptogenic stroke)
  • 検査が不十分である

TOAST分類の問題点

  • 多くの症例が「原因特定不能」に分類されてしまう(25%)
    •  長径1.5cm以上の穿通枝梗塞(BAD)
    •  典型的なラクナ症候群を呈する皮質下梗塞だが主幹動脈に50%以上の狭窄を有する例
    •  心房細動を伴う内頚動脈有意狭窄例
    •  塞栓源の見つからない多発梗塞例

病型診断に必要な検査

  • 頭部CT・MRI
  • 血液検査(自己抗体、腫瘍マーカーを含む)
  • 頸動脈超音波
  • 経頭蓋ドップラー
  • 心電図(12誘導、Holter、植込み型)
  • 心エコー(経胸壁、経食道)
  • 血管造影
  • 下肢静脈エコー
  • 胸腹部CT

潜因性脳梗塞

潜因性脳梗塞:潜因性脳塞栓症(ESUS)+非塞栓性潜因性脳梗塞

潜因性脳塞栓症(ESUS)の考えられる原因

  • 腫瘍
  • 大動脈原性脳塞栓症
  • 低リスク心疾患
  • 潜在性心房細動:ESUSの多くの原因が考えられる
  • 真の原因不明脳塞栓症

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  • 皮下に植え込むことにより長時間持続的な心電図モニタリングが可能