特発性炎症性筋疾患の診断まとめ

特発性炎症性筋疾患

 特発性炎症性筋疾患(IIMs)は、特発性に筋肉に炎症が起こり筋痛や筋力低下を起こす疾患群です。多発性筋炎・皮膚筋炎・封入体筋炎などが含まれます。IIMsには抗ARS、抗MDA5抗体などの特異抗体があり、特徴的な臨床症状を呈します。今回、特発性炎症性筋疾患の診断を紹介します。

特発性炎症性筋疾患(IIMs)とは

 特発性(原因不明)に筋肉に炎症が起こって筋痛や筋力低下をきたす疾患群。

  • 多発性筋炎/皮膚筋炎
  • 封入体筋炎

多発性筋炎/皮膚筋炎に併発する臓器障害

  • 骨格筋:獅子筋力低下・嚥下障害
  • 皮膚:ヘリオトロープ疹/ゴットロン徴候、手掌紅斑、機械工の手、皮膚潰瘍など
  • 関節:多発関節炎
  • 呼吸器:間質性肺疾患、縦隔気腫、誤嚥性肺炎
  • 循環器:心筋炎、不整脈、心膜炎
  • 消化器:嚥下障害
  • その他:悪性腫瘍併発
  • 小児の筋炎では、血管炎の併発や異所性石灰化

特発性炎症性筋疾患の病型分類

  • I. 成人多発性筋炎
  • II. 成人皮膚筋炎
  • III. 小児皮膚筋炎
  • IV. 悪性腫瘍関連筋炎
  • V. 他の膠原病を合併する筋炎
  • VI. 封入体筋炎

無筋症性皮膚筋炎(CADM)

  • 皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するもの

免疫介在性壊死性筋症(IMNM)

  • 筋線維の大小不同を伴う重症の壊死性筋症および再生線維を認める。筋線維内への炎症性細胞浸潤に乏しい。
  • 臨床的には、潜行性・亜急性に発症する近位筋優位の重症な筋力低下をきたす

病理学的特徴

多発性筋炎(PM)

  • 非壊死線維を取り囲み侵入するリンパ球(CD8陽性T細胞)浸潤および筋線維上でのMHC class Iの発現上昇。

免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)

  • 筋線維の壊死と再生が主体。炎症細胞浸潤はわずか。

皮膚筋炎(DM)

  • 線維束周囲性萎縮(perifascicular atrophy)やC5b-9の毛細血管沈着。ミクソウィルス抵抗蛋白質A(MxA)の筋線維上での発現

抗ARS抗体症候群

  • 筋周鞘の浮腫性変化・断片化やアルカリフォスファターゼ活性の顕著な上昇に加えて、筋束周辺部に主に壊死・再生線維が分布。

封入体筋炎(IBM)

  • 多発筋炎と同じ所見に加えて、縁取り空胞(rimmed vacuole)を伴う筋線維の変性像。

IIMsの特異/関連抗体

特異抗体

  • 抗アミノシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体):抗ARS抗体症候群(発熱・関節炎・慢性間質性肺疾患・レイノー現象・機械工の手)
  • 抗Mi-2抗体:古典的皮膚筋炎(CDM)
  • 抗HMGCR抗体:壊死性筋炎・悪性腫瘍・HMGCR阻害薬関連筋炎
  • 抗SRP抗体:壊死性筋炎
  • 抗TIF1-γ抗体:CDM、severe skin lesion、成人(悪性腫瘍)、若年性皮膚筋炎(JDM)
  • 抗NXP-2抗体:CDM、成人(悪性腫瘍)、JDM(カルシノーシス)
  • 抗MDA5抗体:CADM>CDM(東アジア)、急速進行性間質性肺疾患
  • 抗SAE抗体:CDM(発症時CADM)
  • 抗cN1A抗体:封入体筋炎

関連抗体

  • 抗ku:PM/SSc
  • 抗PM-Scl:PM/SSc
  • 抗RuvBL1/2:PM/SSc

多発性筋炎

  • 臨床的に機械工の手以外の皮膚症状を伴わない対称性の近位筋優位の筋力低下を特徴とする
  • 病理組織学的特徴は、非壊死線維を取り囲み侵入するリンパ球(CD8陽性T細胞)浸潤及び筋線維上でのMHC Class Iの発現上昇で、IBMとの区別が困難である
  • 自己抗体は、抗ARS抗体が陽性となるとされてきたが、それらの症例は抗ARS抗体症候群として独立した概念と考えられてきている
  • これまで、PMと診断されていた症例の中にIMNMやnon-specific myositis(NSM)が含まれていると考えられている

皮膚筋炎

抗Mi-2抗体

  • 対応抗原は核に局在する転写の調節に関わるNuRD(Nucleosome remodeling deacetylase)
  • DMに典型的な皮膚症状(ヘリオトロープ疹/ゴットロン徴候)やVネック徴候やショール徴候が高頻度の小児/成人の古典的DMで陽性となる
  • 一般的に、筋症状のステロイドによる治療反応性は良好で、間質性肺炎や悪性腫瘍の合併も稀であるため、予後良好とされるが、再発を繰り返す症例がある

抗MDA5抗体

  • DM特異抗体で、CADM(特に東アジア、成人>小児)で見出された
  • 同抗体陽性DM例は急性/亜急性間質性肺疾患を優位に併発することが特徴で、発熱・多関節炎・皮膚潰瘍・手掌紅斑が高頻度である

抗TIF1-γ抗体

  • 臨床的に成人の悪性腫瘍合併DMに高頻度(20-80%)に認められる
  • 間質性肺疾患の併発が低く、DMに典型的かつ重症の皮膚症状が特徴的である
  • 小児皮膚筋炎(JDM)では、悪性腫瘍合併は認めないが、間質性肺疾患が低頻度であるのは成人と同様である

抗NXP-2抗体

  • 当初はJDMで報告されたが、成人DMや悪性腫瘍併発DM(25-35%)でも陽性となる
  • JDM症例では、皮下石灰化(カルシノーシス)を高頻度に認める

抗SAE抗体

  • 当初典型的な皮膚症状を呈するCADMで発症するが、経過とともにDMと診断されるユニークな特徴をもつ
  • DMに典型的な皮膚症状、嚥下困難を呈することが特徴

抗ARS抗体症候群

  • 抗Jo-1抗体、抗PL-7抗体など8つの抗体が関連
  • 発熱(80%)、多関節炎(50-90%)、レイノー現象(60%)、間質性肺疾患(50-80%)、機械工の手(70%)を併発する
  • 間質性肺疾患を高頻度に併発。慢性進行性。再発が多い
  • 小関節を中心とする多関節炎

免疫介在性壊死性筋症(IMNM)

抗SRP抗体

  • 現在はIMNMの自己抗体である
  • 血清CK値が高値で、亜急性に経過する治療抵抗性難治例が多く免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)の併用を要する。緩徐な経過で筋萎縮が進行し、筋ジストロフィー様の経過をとる症例も報告されている
  • 発熱・レイノー現象・間質性肺炎の併発は低頻度である

抗HMGCR抗体

  • 高脂血症改善薬のスタチン製剤が作用する3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase(HMG-CoA還元酵素)に対する自己抗体
  • 同抗体陽性例の63%でスタチン製剤の使用歴がある
  • 小児から成人まで発症
  • 亜急性の経過で近位筋優位の筋力低下、血清CKが高値となる
  • 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、IVIGに対する治療反応が良好な例があり、また悪性腫瘍併発例の報告がある

封入体筋炎

  • 高齢者、男性に多い。潜行性の発症で、症状は緩徐に進行
  • 近位筋とともに遠位筋が障害され、血清CKの上昇は軽度、大腿四頭筋や手指屈筋群が障害されやすい。また、輪状喉頭筋の筋力低下による嚥下障害や頚部の筋力低下をきたす
  • 病理学的に壊死・再生像は乏しく、筋線維内の縁取り空胞(rimmed vascuole)や核内・細胞質内の線維状封入体が特徴的
  • 副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬による治療は無効。IVIGが嚥下障害に有効である報告がある。細胞変性に対する治療有効性を検証する試験がおこなわれている
  • 運動療法/作業療法や装具の活用が筋力や機能維持に推奨される
  • 抗cN1A抗体が自己抗体との報告がある