単純ヘルペス脳炎の要点

単純ヘルペス脳炎

 単純ヘルペス脳炎は発熱・頭痛に加えて、意識障害・異常行動・けいれんなどを伴うことがあります。確定診断は脳脊髄液検査の単純ヘルペスPCR陽性所見です。PCR陽性患者の90%にMRIで異常信号を認めると言われています。今回、単純ヘルペス脳炎の要点を紹介します。

単純ヘルペス脳炎の特徴

  • 成人における散発性の急性ウィルス性脳炎のなかで最も頻度が高く、どの年齢にも発症するが50-60歳にピークがある
  • 致死率は5-10%で、生存者の約25%に寝たきり状態、あるいは記憶障害や人格障害などの高度後遺症を認めると推定される
  • 単純ヘルペス脳炎に特異的な症状はないが、発熱・頭痛に加えて、意識障害・異常行動・人格変化・けいれんなどの症状が随伴することが多い
  • 脳炎症状があれば単純ヘルペス脳炎を積極的に疑い、早急に診断と治療のプロセスを同時進行させ、受診後6時間以内に抗ウィルス薬治療を開始する

単純ヘルペス脳炎の診断

髄液検査

  • 細胞数:5-1000/mm3
  • 細胞分画:単核球優位
  • 糖:45-80mg/dl
  • 髄液糖/血糖比:0.6
  • 蛋白:≦100mg/dl

 初回の腰椎穿刺で細胞数上昇が認められないことがある(約15%)

単純ヘルペスウィルスPCR

  • 確定診断
  • 単純ヘルペス脳炎を疑う場合は脳脊髄液PCRが推奨される
  • 発症直後1-2日での脳脊髄液PCRは偽陰性となることがあり、陰性の場合は3-7日後に再検することが推奨される

MRI

  • PCRで証明された患者の90%に異常信号を認める

単純ヘルペス脳炎の治療

治療薬

  • アシクロビル 10mg/kg/回 8時間毎の点滴静注投与
  • 投与期間:免疫正常例では14-21日間、免疫不全例では21日間

アシクロビル開始基準

  • ウィルス性脳炎が疑われるすべての患者に対して、PCRの確定診断を待つことなく投与開始
  • 受診からアシクロビル開始までの時間は「6時間以内」が望ましい

ステロイド治療

  • 成人の単純ヘルペス脳炎ではステロイド治療併用は確立されていないが、一定の医学的根拠があり勧められる

単純ヘルペス脳炎診断の困難要因

  • 高齢者患者の増加
  • 基礎疾患・免疫抑制宿主
  • 化学療法や免疫抑制薬の使用
  • 典型的症状の欠如
  • 典型的検査所見(脳脊髄液検査・画像)の欠如
  • HSV PCRが唯一の確定診断所見