高齢者の視覚障害は、緑内障が多く失明の原因となります。80%が開放隅角緑内障で、眼圧が正常のタイプもあります。飛蚊症は加齢に伴う後部硝子体剥離が多く、近視でも起こります。網膜剥離・感染症で起こることもあるため注意が必要です。今回、高齢者の視覚障害の要点を紹介します。
緑内障の定義
視神経乳頭、視野の特徴的変化を少なくとも一つを有し、通常眼圧を下降させることにより視神経障害の改善あるいは進行を阻止しうる、眼の機能的異常を特徴とする
緑内障の病態
- 網膜神経節細胞障害:網膜と外側膝状体を繋ぐニューロンの障害
- 視神経乳頭陥凹拡大
- 特徴的な視野異常
眼房水の流れ
毛様体強膜→虹彩と水晶体の間→前房→線維柱帯シュレム管(眼房水の90%以上吸収)、ぶどう膜強膜(10%吸収)
眼圧と緑内障
眼圧≦21mmHg | 眼圧>21mmHg | 眼底・視野検査 |
正常 | 高眼圧症 | 異常なし |
正常眼圧緑内障 | 原発開放隅角緑内障 | 異常あり |
疫学
Ophthalmology 2004; 111:1641-1648.
緑内障の有病率
- 40歳以上の5%が罹患
- 80歳以上の10%が罹患
- 80%が開放隅角緑内障
- 90%が未治療
薬剤性閉塞隅角緑内障
- 薬剤性の緑内障に関連するのは閉塞隅角緑内障
- 白内障手術で閉塞隅角緑内障のリスクが解消される(人工レンズ装着により隅角に余裕ができる)
- 抗コリン薬が閉塞隅角緑内障のリスク:抗ヒスタミン薬、抗不安薬、睡眠薬、感冒薬、消化性潰瘍治療薬、気管支拡張薬
飛蚊症とは
- 視界にごみや虫のようなものが飛んでいるように見える症状
- 硝子体のにごりが網膜に映った影→青空や白い壁を見た直後に出現しやすい
- 飛蚊症は硝子体の動きが反映される
飛蚊症が起こりやすい人
- 加齢に伴う変化「後部硝子体剥離」:加齢(50-60歳頃)により硝子体が収縮し、網膜・硝子体癒着部位が剥がれる
- 近眼:近視の代償として硝子体が液化しやすくなり、硝子体剥離を起こす(若い人でも起こる)
- 白内障手術後:術後、硝子体に光が入りやすくなるため飛蚊症を高率に起こす
飛蚊症を起こす疾患
- 網膜剥離:網膜の破片や出血が飛蚊症としてあらわれる。視野異常を合併しやすい
- 目の出血:糖尿病網膜症・後部硝子体剥離・網膜裂孔・網膜剥離・網膜血管閉塞が原因。糖尿病の病歴、光視症、視野欠損などに注意
- 目の炎症:ブドウ膜炎、術後感染症、内因性感染症。白血球浸潤が飛蚊症としてあらわれる。まぶしさ、充血、痛み、視力低下などに注意
注意が必要な飛蚊症
- 突然でてきた場合や急激に増えた場合
- 光視症を伴う場合(網膜が牽引されている可能性)
- 見えにくさを伴う場合
- 網膜の持病をもっている場合
- 充血や痛みを伴う場合
飛蚊症の治療
- 生理的飛蚊症は治療の必要はない
- 重症な患者は手術やレーザーが適応となることもある
- 病的飛蚊症の場合は基礎疾患の治療を行う