高齢者の転倒・転落の原因・対応の要点

高齢者の転倒

 転倒・転落は高齢者の不慮の事故第2位(20.7人/10万人)で、交通事故(8.9人)よりも多いです。原因は内的要因(加齢・運動不足・身体疾患・薬剤)と外的要因(屋内外環境、履き物など)があります。対策はポリファーマシーを減らし、歩行・バランス・機能訓練などを行います。今回、高齢者の転倒の原因・対応の要点を紹介します。

高齢者の不慮の事故による死亡原因

 転倒・転落は高齢者の不慮の事故は第2位(2016年, 10万人あたり20.7人)

  • 誤嚥などの不慮の窒息(24.7人)
  • 転倒・転落(20.7人)
  • 不慮の溺死及び溺水(19.6人)
  • 交通事故(8.9人)
  • 煙・火災など(1.9人)

事故種別ごとの高齢者の救急搬送割合

 救急搬送は転倒転落が80%を占める(2016年、総数72,198人)

救急搬送の割合

要介護度別にみた介護が必要となった主な原因

 骨折・転倒は要支援・要介護原因の上位3位に入る(2019年)

現在の要介護度第1位第2位第3位
全体認知症脳血管疾患(脳卒中)高齢による衰弱
要支援関節疾患高齢による衰弱骨折・転倒
要支援1関節疾患高齢による衰弱骨折・転倒
要支援2関節疾患骨折・転倒高齢による衰弱
要介護認知症脳血管疾患(脳卒中)骨折・転倒
要介護1認知症脳血管疾患(脳卒中)高齢による衰弱
要介護2認知症脳血管疾患(脳卒中)骨折・転倒
要介護3認知症脳血管疾患(脳卒中)骨折・転倒
要介護4脳血管疾患(脳卒中)認知症骨折・転倒
要介護5脳血管疾患(脳卒中)認知症高齢による衰弱

高齢者の転倒要因

内的要因

  • 生理的要因:加齢・運動不足・体重の急激な変化
  • 病的要因:身体的・精神的疾患の併発
  • 薬剤

外的要因

  • 構造的な問題:室内・室外環境
  • 環境的問題:音・視覚・触覚
  • 衣類・履き物

N Engl J Med 382. 734-743. 2020より

  • 65歳以上の地域居住者の29%が年に1回以上発生
  • 1人あたりの年間転倒回数は0.67回
  • 転倒後、これまで恐怖を感じていなかった人の21-39%が転倒恐怖症

転倒予防戦略

内的要因

  • 歩行運動機能の把握
  • 病態把握(運動器・感覚器・神経疾患、運動不足、体重の急激な変化)と介入
  • 薬剤の見直し

外的要因

  • 生活環境の見直し:通路・手洗い・床などの構造、照明、採光の改善

転倒予防対策

転倒率または骨折リスクを低下させたもの

JAMA. 2013;309(13):1406-1407. doi:10.1001/jama.2013.3130

  • 筋力強化を含む複数の要素を持つグループおよび家庭での運動プログラム
  • 太極拳教室の参加者
  • 個別の多因子介入(種々の評価、治療の組み合わせ)
  • 家庭での安全のための介入
  • 頸動脈洞過敏症で失神や転倒の既往がある人への心臓ペーシング
  • 白内障手術
  • 向精神薬の段階的な中止
  • プライマリ・ケア医とその患者を対象とした薬の処方改善するための教育プログラム
  • 障害のある足の痛みを持つ人対する足のケア。装具・靴の調整
  • ビタミンDレベルの低い人に対するビタミンD補給(ただし低エビデンス)

N Engl J Med 2020; 382:734-743. DOI: 10.1056/NEJMcp1903252/

  • 「過去2回/年以上の転倒歴」「転倒に恐怖感があるか」の問診が重要
  • 歩行障害・平衡機能障害・視力<0.25・ポリファーマシー・利尿薬が転倒リスク
  • 歩行スピード <0.6m/秒、Timed up and go test>12秒は転倒リスク
  • 鎮静・せん妄・起立性低血圧の要因となる薬剤の見直し:抗コリン薬・α遮断薬など
  • 筋トレ 10-15回/日の推奨:椅子に浅く座り背をそらす→膝屈曲し中腰で立つ
  • 平衡訓練 10-15回/日の推奨:椅子の後ろに立ち片手で背もたれを掴み、片足で10秒立つ
  • 65歳以上は1-2年に1回視力検査を推奨。白内障手術推奨。
  • 認知症・うつ病は転倒リスクあり。抗うつ薬は転倒リスクあり。認知症薬は徐脈・失神のリスクあり。
  • 起立性低血圧患者ではゆっくり立つよう指導。すぐ歩き出さないように注意
  • ウォーキング自体は転倒予防効果エビデンスに乏しい
  • ビタミンDのエビデンスは低い

地域高齢者のへの運動介入

運動の要素分類

  • 歩行・バランス・機能訓練
  • 筋力増強・抵抗運動
  • 3D訓練(太極拳、スクエア・ステッピング)
  • 一般的な身体活動
  • 柔軟
  • 持久力訓練

運動介入のポイント

  • 複数の要素を組み合わせた複合プログラムが良い
  • 集団と個人、どちらも転倒予防効果がある
  • 高齢者の場合はゆっくりとして体幹バランスを養うヨガや太極拳も効果的