振戦は身体部位にみられる不随意性・律動性・振動性の運動異常です。高齢者で多く、40歳以上で4%にみられます。治療はプロプラノロール・プリミドン・アロチノロールなどを用います。今回、本態性振戦の診断・治療の要点を紹介します。
振戦の定義
いずれかの身体部位にみられる不随意性(involuntary)、律動性(rhythmic)、振動性(oscillatory)の運動異常
分類
2つの軸で分類されている
臨床的特徴
- 病歴の特徴:発症時年齢・家族歴・進行経過
- 振戦の特徴:身体的分布・誘発条件
- 随伴徴候:全身的・神経学的
- 検査所見:電気生理学的検査・画像検査
病因
- 後天性・遺伝性・特発性
本態性振戦の診断基準
- 両側上肢の動作時振戦のみを呈する振戦症候群
- 少なくとも3年の経過
- 他の部位の振戦を伴うときと伴わないときがある(頭部・発声・下肢)
- ジストニア、失調、パーキンソニズムといった他の神経徴候を認めない
除外項目
- 局所の振戦のみ(頭部・発声)
- 12Hz以上の起立性振戦
- タスクや肢位特異性振戦
- 突然発症や階段状増悪
疫学
- 有病率は、人口の2.5~10%
- 高齢者で多く、40歳以上の4%、65歳以上の5~14%以上
- 家族歴がみられることが多い(17.4~100%)
振戦の診察・観察法
- 静止時からはじめ、計算負荷
- 次に姿勢時、30秒以内
- 手首背屈
- 両示指を付くか付かないかの位置で保持(signe de bretteur)
- 肘を曲げて、さらに張って
- 指鼻試験
- コップで水飲み動作
- 実際に水を入れる
- 書字と渦巻き
- 歩行時、動作時など
振戦を誘発する薬剤
- β刺激薬、バルプロ酸、リチウム、抗うつ薬、向精神薬などの副作用
- アルコール依存症
- カフェインの過剰摂取
治療
軽度
- 機会服用:交感神経遮断剤・抗不安薬
中等度以上
四肢振戦(主に上肢)
- 第一選択薬:プロプラノロール(インデラル®)、プリミドン、アロチノロール(アルマール®)
- 第二選択薬:抗不安薬(アルプラゾラム(ソラナックス®)、ガバペンチン(ガパペン®)、トピラマート(トピナ®)、(ゾニサミド(エクセグラン®))
効果不十分
- ボツリヌス毒素療法
- 手術療法
- 視床刺激療法、posterior subthalamic area (PSA)の DBS
- 視床破壊術
- ガンマナイフ、MRガイド下集束超音波治療