日本における若年性認知症の現状まとめ、支援制度の解説

アルツハイマー病

 若年性認知症は65歳未満の認知症者を指します。原因はアルツハイマー型認知症、血管性認知症が多いですが、前頭側頭型認知症や頭部外傷後認知症が多いのも特徴です。2009年より厚生労働省が「若年性認知症施策」を掲げ、1.若年性認知症に対する理解の促進、2.早期診断、医療、介護の充実、3.雇用継続や就労の支援、4.障害者手帳の早期取得や障害基礎年金の受給などに対する支援を課題として取り組み始めました。2015年認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)でも強化・継続中です。今回、「日本における若年性認知症の発生率とサブタイプの報告」を参考に、若年性認知症の現状をまとめました。

Geriatr Gerontol Int. 2020 Sep 28. doi: 10.1111/ggi.14043.

要旨

目的:若年性認知症の発症率を調べることは困難です。認知症医療センターの年次実績報告書を用いて、日本における若年性認知症の発症率を調査しました。

方法:認知症医療センターとは、日本の国民健康計画の一環として設置された認知症専門の医療機関です。そのようなセンターは2018年現在、全国に440カ所あります。今回認知症医療センターの年次実績報告書を用いて、2018年4月1日から2019年3月31日までの若年性認知症または老年期認知症の新規診断症例数と、「精神疾患の診断と統計マニュアル第5版」に準拠した診断別構成比を算出しました。若年性認知症の年間発症率は、症例数を分子とし、18~64歳の全国人口を分母として推計しました。

結果:合計で1733例が若年性認知症と診断され、そのうちアルツハイマー型認知症が52.1%、前頭側頭型認知症が8.9%、血管性認知症が8.8%、物理的要因・薬物による認知症が7.1%、レビー小体型認知症が6.5%、他の内科的疾患による認知症が3.9%でした。若年性認知症の年間発症率は2.47/100,000人年と推定されました。

結論:本研究は、日本における若年性認知症の発症率を全国的に初めて推定したものであり、認知症医療センターが全国の若年性認知症の疫学的モニタリングの重要な位置づけであることを示唆しています。

Geriatr Gerontol Int. 2020 Sep 28. doi: 10.1111/ggi.14043.

若年性認知症のまとめ

若年性認知症の定義:65歳未満の認知症者を指す。

若年性認知症の有病率と有病者数

  • 2006-2008年度調査:有病率 47.6人/10万人、有病者数 3.78万人
  • 2017-2019年度調査:有病率 50.9人/10万人、有病者数 3.57万人

→有病率が増加し、有病者数が減少した。若年者数の減少を反映していると思われる。

若年性認知症のサブタイプ

  • 2006-2008年度調査:血管性認知症(39.8%)、アルツハイマー型認知症(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭型認知症(3.7%)、アルコール性認知症(3.5%)、レビー小体型認知症(3.0%)
  • 2017-2019年度調査:アルツハイマー型認知症(52.6%)、血管性認知症(17.1%)、前頭側頭型認知症(9.4%)、頭部外傷後遺症(4.2%),レビー小体型認知症/パーキンソン病性認知症(4.1%)、アルコール性認知症(2.8%)

→血管性認知症の割合が減少し、アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症の割合が増加した。

2018年度(2018年4月1日から2019年3月31日)認知症診断数と年間発症率

  • 認知症診断数:80,442例(若年性認知症 1,733例, 老年期認知症 78,709例)
  • 若年性認知症の年間発症率:2.47人/10万人年

2018年度の認知症サブタイプ

  • 若年性認知症のサブタイプ:アルツハイマー型認知症(52.1%)、前頭側頭型認知症(8.9%)、血管性認知症(8.8%)、物理的要因・薬物による認知症(7.1%)、レビー小体型認知症(6.5%)
  • 老年期認知症のサブタイプ:アルツハイマー型認知症(67.5%)、血管性認知症(7.8%)、レビー小体型認知症(7.5%)、複数の病因による認知症(5.9%)、原因不明の認知症(4.8%)

→若年性認知症は老年期認知症と比べて、前頭側頭型認知症の頻度は約3倍、物理的要因・薬物による認知症は約8倍、頭部外傷による認知症は約3倍、他の内科疾患による認知症は約3倍増加していた。

世界の若年性認知症発症率

  • 米国:5.9人/10万人年(40-64歳人口)
  • ドイツ:8.3人/10万人年(50-64歳人口)
  • 英国:11.5人/10万人年(45-64歳人口)
  • スペイン:13.4人/10万人年(30-64歳人口)
  • アルゼンチン:5.8人/10万人年(21-64歳人口)
  • ノルウェー:14.8人/10万人年(30-64歳人口)

→日本における若年性認知症の年間発症率が2.47人/10万人年と低いのは、18-64歳と幅広い年齢層を分母にした影響が考えられる。アルゼンチンのデータが低いのは1つの医療機関のみを対象としているためバイアスが大きいと考えられる。今回、日本における若年性認知症の年間発症率を初めて報告した。

若年性認知症の支援制度

  1. 自立支援医療制度:医療費の自己負担1割
  2. 傷病手当金:休職した場合1年6ヶ月受け取ることができる
  3. 精神障害者保健福祉手帳:初診日から6ヶ月経過した時点で申請可能。税金の控除、鉄道・バス・タクシーの運賃割引、公共料金の割引など。
  4. 障害年金:退職後、初診日より1年6ヶ月以降であれば申請可能。
  5. 介護保険サービス申請:40歳以上の若年性認知症なら適応。
  6. 失業保険:傷病手当金の受給終了後に給付を受ける(雇用保険に入っていることが前提)。
  7. 特別障害者手当:重度の障害があり、常時特別な介護を必要とする場合。
  8. 難病指定:前頭側頭型認知症および意味性認知症は申請可能

若年性認知症の相談窓口