レビー小体型認知症の初期症状と男女別の症状を調べた報告

レビー小体型認知症

 レビー小体型認知症(DLB)は2017年6月に新しい臨床診断基準が発表されました。中核的特徴に「レム睡眠行動障害」が加わり、「注意・覚醒レベルの変動」「幻視」「レム睡眠行動障害」「パーキンソニズム」となりました。初期は記憶障害が少なく、注意障害・視空間認知障害・遂行機能障害からみられることがあり、多彩な症状を呈します。今回紹介する論文はDLBの初期症状と診断時症状を集計した報告です。また男女で認められやすい症状を解析したところも特徴的です。

Psychogeriatrics. 2020 Sep;20(5):737-745. doi: 10.1111/psyg.12586. Epub 2020 Aug 2.

レビー小体型認知症の初期症状と診断時の症状まとめ

レビー小体型認知症の臨床診断基準

  • 中核的特徴:「注意・覚醒レベルの変動」「幻視」「レム睡眠行動障害」「パーキンソニズム」
  • 支持的特徴:「抗精神病薬の過敏性」「失神」「易転倒性」「高度の自律神経障害」「過眠」「嗅覚鈍麻」「幻視以外の幻覚」「妄想」「うつ・アパシー・不安」
  • 指標的バイオマーカー:「脳ドーパミントランスポーターシンチ」「123I-MIBGシンチグラフィ」「睡眠ポリグラフ」
  • Probable DLBは「2つ以上の中核的特徴がある」か、「1つ以上の中核的特徴+1つ以上の指標的バイオマーカー」と定義

レビー小体型認知症の初期症状

  • 認知機能障害(41.9%)、精神症状(42.3%)
  • 幻視(23.5%)、うつ(12.0%)、レム睡眠行動障害(7.3%)、幻聴(5.1%)、パーキンソニズム(4.7%)、妄想(1.3%)
  • 男性はレム睡眠行動障害(12.9%)、女性は精神症状(49.6%)、幻聴(8.3%)が多い

レビー小体型認知症診断時の症状

  • 幻視(79.4%)、レム睡眠行動障害(60.9%)、便秘(56.9%)、変動する覚醒レベル・注意(56.3%)、パーキンソニズム(50.6%)
  • 男性はRBD・パーキンソニズム・嗅覚鈍麻・失神、女性は幻聴が多い。

要旨

目的

 レビー小体型認知症(DLB)は様々な初期症状を特徴としますが、DLBの初期症状を評価した症例はほとんど報告されていません。本研究では、DLBと診断された234名の参加者の初期症状をレトロスペクティブに評価し、症状に男女差があるかどうかを調査しました。

方法

 本研究は、4th DLB Consortiumの報告(2017年)に概説された診断基準を満たす、DLBの可能性がある234人の参加者から構成されました。脳ドーパミントランスポーターシンチ、123I-MIBGシンチグラフィー、脳血流SPECTなどのバイオマーカーで評価されました。診断の際には,中核的特徴と支持的特徴を考慮しました。

結果

 初期症状は、認知機能障害(41.9%)と精神症状(幻覚、幻聴、妄想、抑うつなど)(42.3%)でした。女性のほぼ半数が初期に精神症状を呈しており、幻聴は女性の方が男性よりも有意に多い結果でした。対照的に、男性は女性に比べてレム睡眠行動障害(RBD)の割合が有意に高い結果でした。診断時のDLB関連症状は男女で異なり、男性患者ではRBD、パーキンソン症状、嗅覚鈍麻、失神が有意に多く、女性は幻聴を呈する頻度が有意に高い結果でした。

結論

 今回の結果は、DLBの初期症状と診断時に観察されるその後の症状の発現には性差があることを示しています。男性ではRBDの発症率が高かったのに対し、女性では精神症状の発症率が高い結果でした。

背景

 DLBは神経変性性認知症の第2位の原因であり、認知症全体の10~20%を占めています。4th DLB Consortiumの報告(2017年)では、診断の特異性と感度を高めるために診断基準の大幅な変更が行われました。また、報告書では3つのバイオマーカーも加えられ、主要な臨床症状が1つしかなくても、バイオマーカーが1つ陽性であればprobable DLBと診断できます。これまでDLBの初期症状を評価した症例はほとんど報告されていません。DLBの初期症状を調べることは,今後の進行性DLBの臨床的特徴を明らかにするとともに,誤診の防止や不適切な治療の回避にも役立つと考えられます。本研究では、DLBの初期症状の発生率をレトロスペクティブに検討し、性差の有無を検討しました。

方法

参加者

 2007年1月から2017年3月までの間に砂川市立病院精神科で初診を受けた234例をレトロスペクティブに調査しました。DLB診断基準を満たした234例(男性101例、女性133例、平均発症年齢:77.4±6.2歳 vs 77.7±7.7歳)を評価しました。男性の平均罹患期間は2.2±2.8年、女性の平均罹患期間は2.3±2.1年でした。Mini-Mental State Examination(MMSE)の平均スコアは、男性患者で19.7±4.6、女性患者で18.0±5.7であり、男性患者のMMSEの平均スコアは女性患者よりも有意に高値でした。

初期症状

 患者・介護者との面接で、以下の9つの初期症状を評価しました。

  • 認知機能障害
  • 幻視:明瞭な幻視・錯視
  • パーキンソニズム
  • レム睡眠行動障害(RBD):寝言・手足の大きな運動
  • うつ状態
  • 幻聴
  • 妄想:迫害妄想・心気妄想・誤認妄想など
  • 意識障害・錯乱状態
  • 失神

DLB診断時の症状

 12個の症状(9つの初期症状のうち8つ(認知機能障害を除く)と、以下の4つの症状)を評価しました。

  • 注意と覚醒レベルの明らかな変動
  • 起立性低血圧:シェロングテストで収縮期血圧 20 mmHg以上低下
  • 緩下剤を必要とする高度便秘
  • 嗅覚鈍麻

結果

初期症状

  • 認知機能障害:41.9%(男性43.6%、女性40.6%)
  • 幻視:23.5%(男性21.8%、女性24.8%)
  • パーキンソニズム:4.7%(男性5.0%、女性4.5%)
  • RBD:7.3%(男性12.9%、女性3.0%)
  • うつ状態:12.0%(男性8.9%、女性14.3%)
  • 幻聴:5.1%(男性1.0%、女性8.3%
  • 妄想:1.3%(男性1.0%、女性1.5%)

 幻視・幻聴、妄想、抑うつなどの精神症状が42.3%と、認知機能障害と同程度の割合で認められました。女性では、全体の精神症状の割合が49.6%とさらに高くなっています。また、幻聴の発生率は男性よりも女性の方が有意に高い結果でした(P = 0.012)。初期症状として精神科症状があった患者のうち、15名の患者が精神科症状で初診外来を受診し、継続的な治療を受けましたが、少なくとも2年間は認知機能障害が認められませんでした。このことは、明確な認知症やMCIを伴わない患者が、前駆症状として精神症状を発症していることを示しています。男性は女性に比べてRBDの発症率が有意に高い結果でした(P = 0.004)。

診断時の症状

・DLB234例

  • 幻視:79.4%(男性76.2%、女性81.8%)
  • パーキンソニズム:50.6%(男性59.0%、女性44.4%)
  • 変動する覚醒レベル・注意:56.3%(男性53.5%、女性58.3%)

・介護者の観察のあった207例

  • RBD:60.9%(男性75.6%、女性49.6%)

・全体数が異なる項目

  • 妄想:36.4%(n=231:男性30.3%、女性40.9%)、
  • 抑うつ:32.2%(n=230:男性26.0%、女性36.9%)
  • 幻聴:31.9%(n=232:男性21.2%、女性39.8%
  • 便秘:56.9%(n=209:男性55.3%、女性58.3%)
  • 起立性低血圧:50.5%(n=182:男性55.0%、女性47.1%)
  • 嗅覚鈍麻:68.5%(n=168:男性79.5%、女性60.0%)

 男女間ではいくつかの有意差があり、RBDパーキンソニズム嗅覚鈍麻失神を呈する患者は男性の割合が高く、幻聴を経験する患者は女性の割合が高い結果でした。

 脳ドーパミントランスポーターシンチを受けた104例中90例(86.5%)が集積低下を認めました。123I-MIBGシンチを受けた96例中70例(72.9%)が集積低下していました。SPECTを受けた211例のうち、159例(75.3%)が後頭葉、一次視覚野で血流低下を認めました。

考察

初期症状

 DLBの初期症状は認知機能障害が最も多く,234例中98例(41.9%)に認められました。しかし、この結果は認知機能障害以外の初期症状を有する症例の方が多いことを示唆しています。実際にほぼ同程度の割合(42.3%)で幻視・幻聴・抑うつ・妄想などの精神病症状を合併しており、発症時の精神病症状が顕著に多いことが明らかになりました。

 今回の研究では、初診時の患者の性差を明らかにし、男性よりも女性の方が初診時に精神症状を呈している割合が高いことを明らかにしました。過去の報告では、DLB患者90人のうち、診断を受ける前に幻覚を経験したのはわずか6.7%でした。これまでの報告では、DLBの初期症状の性差を調べたものはありませんでした。興味深いことに、評価されたすべての精神病症状について、女性の方が男性よりも高い割合で発症しており、幻聴も女性の方が男性よりも有意に高い割合で発症していました。

 本研究では、脳ドーパミントランスポーターシンチで104例中90例、123I-MIBG心筋シンチで96例中70例に陽性所見が認められました。これらのバイオマーカーは、DLBと精神病症状を伴うADや遅発性統合失調症と鑑別するのに有用であると考えられます。DLBは抗精神病薬に対して重度の過敏性を示すため、DLBが疑われる場合には、まず放射線画像診断を行うべきです。正しい診断ができれば,患者にとって有益で適切な治療が可能となります。

 また、初期症状としてのRBDは女性よりも男性で頻度が高いことも観察されました。これはこれまでの特発性RBD(iRBD)の報告と一致しています。iRBDはDLBの前駆症状として多くの報告で確認されています。

診断時のDLB関連症状

 DLB診断時には,半数以上の症例で4つの中核症状が認められ,中でも幻視が最も多く(79.4%)、Fijishiroら、池田らの先行臨床研究と一致しています。さらにTiraboschiらは病理学的に確認された64例のうち70%に幻覚が認められたと報告しています。

 RBDの発症率は診断時に60.9%と高く、男性では発症時の初期症状と同様に有意に高いことがわかりました。これは、剖検時のDLB98例のうち76%にRBDが認められたと報告したFermanらの報告に類似しています。RBDの診断には睡眠ポリグラフ検査が必要ですが、認知症患者では検査が困難であることが多いです。本研究では睡眠ポリグラフ検査を実施していないため、RBDに関する結論は限定的です。

 パーキンソニズムの発生率は50.6%であり、発生率が70~85%であった先行研究に比べて低い結果でした。池田らは大規模集団(n=273)を対象に調査を行い、精神科施設の患者(71.8%)では脳神経内科施設の患者(91.8%)に比べてパーキンソニズムの頻度が有意に低いことを報告しています 。また、本研究では統一パーキンソン病評価尺度を使用していないため、パーキンソニズムの発症率が低いと過小評価されている可能性があります。

 支持症状では、妄想・抑うつ・幻聴などの精神病性症状が32~36%の患者で認められました。さらに、半数以上の患者で起立性低血圧や便秘などの自律神経機能障害が認められました。また、2017年に改訂されたDLBの臨床診断基準にも含まれるようになった嗅覚鈍麻(67.8%)の発症率も高値でした。Braakが示すα-シヌクレインの病的進行は嗅球から始まることが報告されており、早期から高率も嗅覚鈍麻が認められることが報告されています。さらに、パーキンソン病では高率に嗅覚鈍麻が認められることが報告されており、嗅覚鈍麻は認知機能にも関係しています。

 筆者らは男女間で有意な差を認め、診断時のRBD・パーキンソニズム・嗅覚鈍麻・失神の発生率は男性の方が高いことを確認しました。Fernándezらは、男性患者の80%でiRBDを報告しており、iRBDの多くはDLBやパーキンソン病のα-シヌクレイン病に起因するものです。したがって、男性のDLBではRBDの割合が高いことが予想されます。

 パーキンソニズムは女性よりも男性に多くみられました。これまでの研究では、DLB患者のパーキンソニズムの性差を報告したものはありません。したがって、この違いが民族的特徴に関連しているのか、地理的特徴に関連しているのかは依然として不明です。

 失神は心原性と神経原性に関係しており、起立性低血圧と神経調節性失神を引き起こします。DLBにおける失神は主に神経原性であると考えられており、起立性低血圧はDLBでしばしば認められ、診断を支持する症状として含まれています。神経調節性失神には、脳幹や自律神経系の機能不全による血管迷走神経系の機能障害による血管迷走神経失神や、頸動脈洞過敏症による脈や血圧の低下を伴う頸動脈洞症候群があるが、男性の失神率が女性に比べて有意に高い理由は不明です。

 一方、女性は男性(21.2%)に比べて幻聴(39.8%)が有意に多く、初期症状と同様でした。同様の所見を報告した角田らでは、幻聴が33.5%に認められ、女性で有意に高率であったと報告しています。精神科診療では、遅発性統合失調症を示す幻聴が高齢者に多くみられ、女性に多くみられます。したがって、幻聴を呈する高齢女性では、常にDLBを考慮する必要があると考えます。

ABOUT US

yshima脳神経内科医
認知症専門医の資格を持つ脳神経内科医です。 神経内科専門医・指導医、総合内科専門医・指導医、認知症サポート医。 M.D., Ph.D.