レビー小体型認知症とパーキンソン病性認知症の病理学的特徴の違い

大脳の画像

 レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病性認知症(PDD)は、臨床的特徴と神経病理学的特徴が重複しています。脳アミロイドアンギオパチー(CAA)はアルツハイマー病(AD)に多く見られますが、他の認知症との関連性も認められるようになっています。本研究では、DLBとPDDの臨床および神経病理学的所見の違いを検討しました。

 Queen Square Brain Bank (QSBB)から、PDD52例とDLB16例を対象としました。運動機能と認知機能の臨床データをカルテから取得しました。神経病理学的評価には、CAA、レビー小体、ADの病理所見が含まれました。結果は、CAAがPDDよりもDLBで多い結果でした(P = 0.003)。CAAの重症度はPDDよりもDLBの方が高く(P = 0.009)、頭頂葉(P = 0.043)および後頭葉(P = 0.008)のCAAスコアがPDDよりもDLBの方が有意に高値でした。CAAスコアが特に高かったのはAPOE ε4/4およびε2/4を有する症例でした。生存率解析では、DLBがPDDよりも早く臨床的マイルストーン(車椅子利用や施設入所までの期間)に到達したため、DLBで予後の悪化が認められました。DLBでジスキネジアが認められなかったのは、PDDと比較してレボドパの投与量が有意に少なかったことと関連していました。本研究は、顕著なCAA所見と急速な病状進行により、DLBとPDDを鑑別できると結論づけました。

Neuropathol Appl Neurobiol. 2020 Jul 27. doi: 10.1111/nan.12648.

背景

 PDDとDLBは、多くの臨床的・神経病理学的特徴を共有しています。パーキンソン症状と認知症の時間的発症を記述する1年ルールは、臨床や研究の場で両者を区別するための主要基準として用いられています。他にも運動機能や認知機能の違いがいくつか報告されています。DLBでは注意力、実行機能、構成課題およびエピソード記憶で、より重度な認知障害がみられました。一方DLBよりもPDDの方が重度のパーキンソニズムが認められ、DLBでは安静時振戦の頻度が低く軽度で対称的です。

 皮質レビー小体はレビー小体型認知症の主な神経病理学的特徴です。これまでの研究では、皮質レビー小体がPDの認知症と相関することが示されており、前頭回および帯状回のレビー小体はPDおよびPDDの認知障害の重症度と相関することが示されています。他の研究では、レビー小体とアルツハイマー病(AD)病理の合併がPDDにおける認知症と相関していることが明らかにされています。PDDとDLBの神経病理学的な違いは比較的少なく、主な鑑別は、DLBでは黒質の神経細胞喪失が少なく、AD病理がより重度であることです。

 CAAは健常者よりも認知症者に多く見られるという証拠が増えてきています。CAAはADにおいて非常に特徴的で、陽性率は97%に達します。しかし、CAAはレビー小体型認知症にも認められ、CAAとPDDやDLBの認知機能低下との関連が示されています。

 本研究の目的は、PDDとDLBをより明確に区別できる臨床的および神経病理学的な違いを明らかにすることです。併存する神経病理として、レビー小体やADの神経病理に加えて、CAAの頻度や分布を調べました。またAPOE遺伝子型を抽出し、CAAとの関連を検討しました。

方法

 1990年から2018年の間に、QSBB(Queen Square Brain Bank for Neurological disorders)のデータベースから、PDD、PD、DLBの臨床診断を受けた800人の脳ドナーが同定されました。そこから臨床所見が十分記録されているPDDおよびDLB症例95例を選定しました。最終的に臨床所見と病理所見が十分記録されているPDDとDLBの68例(PDD52例、DLB16例)を本研究の対象としました。

 臨床所見は、性別・疾患期間・認知症発症年齢・パーキンソニズム発症年齢・死亡時年齢・幻視の有無・幻視出現年齢・振戦およびジスキネジアの有無のデータを収集しました。た薬はL-ドーパの服用量、その他抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、抗認知症薬の服用有無を収集しました。認知機能データはMMSE、パーキンソニズムの重症度は修正版Hoehn-Yahr重症度分類、疾患進行の臨床的マイルストーンは易転倒性、車椅子利用までの期間、嚥下障害出現までの期間、施設入所までの期間、認知機能障害発症までの期間を選択しました。

 すべての症例は、標準的なプロトコルに従って神経病理医によって正式に評価されました。Lewy病理の神経病理学的評価はBraak期とMcKeithらの国際診断基準に従って行われました。AD神経病理学的評価はアミロイド-βに対するThal期、神経原線維変化に対するBraak期、老人斑に対するCERAD基準を用いました。またAD神経病理学の「ABC」スコアでも評価しました。CAAは、プロトコルに従って、5つの脳領域(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、小脳)を全症例で評価しました。CAAスコア(0-3)は大脳実質および髄膜CAAの評価に使用しました.スコア(0-1)は毛細血管性CAAの評価に、スコア(0-2)は大脳新皮質と軟膜に分けてCAAに関連した血管障害性変化の評価に使用しました。脳領域ごとの最大CAAスコアは11点(脳実質(最大スコア3点)、軟膜(最大スコア3点)、毛細血管(最大スコア1点)の合計で表され、血管病変は大脳新皮質(最大スコア2点)と軟膜(最大スコア2点)で別々に評価しました。次に、各症例のCAA総合スコアを、すべての脳領域のスコアの合計として算出しました(総合スコアの最大値は1195、脳領域=55)。

 APOE遺伝子型は58例(PDD 46、DLB 12)で同定されました。DNAが入手できなかった10例では、APOE遺伝子型の同定はできませんでした。

結果

 本研究では、神経病理学的評価が可能な 68 例(PDD 52 例、DLB 16 例)を対象としました。両群とも男性の頻度が高い結果でした(PDD 71.2%、DLB 68.8%)。罹病期間は、DLB群はPDD群と比較して有意に短く(P < 0.001)、死亡時年齢が低い結果でした(P = 0.048)。DLB群はPDD群と比較して、運動症状の初発年齢が有意に高値でした(P = 0.012)。認知症状の初発年齢に有意差は認められませんでした(P = 0.110)。幻視は両群で同程度の頻度(PDD 88.5%、DLB 87.5%、P=1.000)で、発症年齢も同程度でした(P=0.209)。最終MMSEスコアはPDDと比較してDLBで有意に低値でした(P = 0.035)が、最終MMSEから死亡までの間隔の中央値は両群で同じでした(P = 0.589)。振戦は、DLB群(56.3%)ではPDD群(84.6%)よりも少ない結果でした(P = 0.034)。DLB群ではPDD群(71.2%)と比較してジスキネジアが認められませんでした(P < 0.001)が、DLB群ではレボドパの投与量が有意に低かったことと関係していると考えられました(P < 0.001)。同様に、DLB患者では、ドパミンアゴニスト(P < 0.001)、モノアミン酸化酵素阻害薬(P < 0.001)、アマンタジン(P < 0.003)、抗コリン薬(P = 0.002)の投与量が少ない結果でした。抗精神病薬(P = 0.866)、コリンエステラーゼ阻害薬(P = 1.000)およびNMDA拮抗薬(P = 1.000)の使用頻度には有意差は認められませんでした。

 パーキンソニズムの重症度は、認知症診断時と死亡時に修正版Hoehn-Yahr重症度分類で評価されました。DLBでは認知症診断時のパーキンソニズムの重症度はPDDと比較して有意に低かったです(P<0.001)が、DLBの多く(56.3%)が認知症診断時に両側対称性の症状を呈していたのに対し、PDDでは重度のパーキンソニズムを発症していました(44.9%)。死亡時の運動症状の重症度には有意差は認められませんでした(P = 0.346)。疾患進行の臨床的マイルストーン(転倒を繰り返すまでの時間、車椅子使用までの時間、嚥下障害までの時間、認知機能障害までの時間、施設入所までの時間)を両群で評価しました。生存期間の解析では、DLB 患者は PDD 患者よりも早期に疾患進行の各臨床マイルストーンに到達しました。

 神経病理学的評価では、両群で脳重量が同程度(P = 0.452)、死後の遅延が同程度(P = 0.129)であることが示されました。レビー小体病理学的評価では、PDD と DLB の間に統計的に有意な差は認められませんでした(P = 1.000)。

 ADの神経病理学的評価は、PDDと比較してDLBは、神経原線維のBraak ステージ(P = 0.034)およびBスコア(神経原線維BraakステージのNIA-AA基準)(P = 0.004)、Cスコア(NIA-AA CERAD老人斑スコア)(P = 0.006)で重症化していました。アミロイド-β神経病理変化は、有意差を示しませんでした(Thal アミロイド沈着ステージ分類=0.083、Aスコア(NIA-AA アミロイド-β)P=0.059)。

PDDとDLBの特徴
PDDとDLBの臨床的、神経病理学的特徴の違い

 PDD群とDLB群のCAA頻度には有意差を認めました(P = 0.003)。PDD症例の63.5%(33/52例)、DLB症例の100%(16/16例)にCAAの病理所見が認められました。DLB群は後方脳領域のCAA分布が高く(後頭葉P = 0.008、頭頂葉P = 0.043)、総CAAスコア(P = 0.009)も増加していました。前方脳領域では両群で同様のCAAスコアを示しました(前頭葉P=0.152、側頭葉P=0.061)。

 58例(PDD46例,DLB12例)でAPOE遺伝子型が同定されました。遺伝子型は、ε3/3(PDD:47.8%、DLB:41.7%)が最も多く、次いでε3/4(PDD:41.3%、DLB:33.3%)でした。6種類のAPOE遺伝子型では、PDDとDLBの間に有意差は認められませんでした。APOE遺伝子型とCAAの関係を調べました。PDDとDLBを合わせたコホートでは、6つのAPOE遺伝子型すべてにおいてCAAスコアに有意差は認められませんでしたが、APOE ε4/4(中央値19.5;35.45%)とε2/4(中央値24;43.25%)を有する症例で最も高いCAAスコアが観察されました。

考察

 本臨床病理学的研究では、神経病理学的に確認された PDD と DLB の症例について新しい相違点が確認されました。

 PDDと比較してDLBではCAAの頻度が高い結果でした(それぞれ100%対63.5%)。死亡時年齢調整後ではPDDはCAAの発現が低い結果でした。DLB患者ではCAAスコアが高く、特に後頭葉のスコアが高値でした。

 DLB患者の機能画像診断(SPECTおよびPET)の研究では、後頭葉における代謝低下と灌流低下が示されています。後部帯状回でのFDG-PETでの代謝維持は、「帯状体島徴候」として知られており、DLBをADと鑑別する際の有用なマーカーです。本研究では、DLBにおいてCAA病理が後頭葉で最も顕著であり、これが機能画像上の後頭部代謝低下と灌流低下にも寄与している可能性があります。

 CAAはしばしばMRI画像上で微小脳出血を呈することが多いです。ある研究では、臨床的にDLBと診断された症例では、ADと比較して後頭葉、前頭葉、側頭葉、頭頂葉微小脳出血の頻度が高いことが明らかになりました。さらに、DLBではPDDと比較して小葉優位の微小脳出血が多く認められました。これらの所見は、DLB患者はPDD患者に比べて後頭葉で微小脳出血が顕著に多いことを示唆しています。これはPDDと比較してDLBでは後頭葉に重度のCAAが認められるという我々の神経病理学的所見と一致しています。

 これまでの研究では、DLBの遺伝的要素は約36%と推定されています。DLBは主にAPOE遺伝子型、SNCA、GBAおよびSCARB2の変異と関連しています。APOEはコレステロールトランスポータータンパク質であり、アミロイド-β代謝の調節因子でもあります。APOE ε4はアルツハイマー病とDLBの両方で重要な遺伝的危険因子です。しかし、PDDにおけるAPOEの情報は依然として矛盾しており、APOE ε2とε4対立遺伝子の両方がPDにおける認知症リスクの増加と関連しており、APOE ε2の方がより強い関連を示しています。

 今回のデータでは、PDDとDLBの6つの異なるAPOE遺伝子型の間に差は認められませんでしたが、APOE ε2/4とε4/4遺伝子型の人ではCAAスコアが増加していました。ε4対立遺伝子はCAAの頻度の増加と関連しています。しかし大規模な臨床病理学的研究では、CAAの重症度がAPOE ε4対立遺伝子を持たない人の認知力低下と関連していることが示されており、これは異なるCAAのサブタイプがあることを示唆しています。

 レビー小体型認知症では、AD神経病理が関連しています。AD神経病理の増加は、生存期間の短縮、運動症状出現までの期間、認知症発症に関係しています。今回の研究は、AD神経病理がPDDよりもDLBで重篤であることを示す先行研究と一致していました。それにもかかわらず、我々のデータはPDDよりもDLBで重症度が高い傾向を示しているにもかかわらず、アミロイド-βプラークに有意差が見られませんでした。この先行研究との違いは、PDDに比べてDLBの症例数が少ないことが原因かもしれません。

 本研究では、「DLBとPDDの臨床的マイルストーンの違い」「DLBではジスキネジアが認められなかった」ことなど、2つの新しい臨床的知見が得られました。疾患進行の臨床的マイルストーン(住居介護、嚥下障害、定期的な転倒、車椅子依存、認知障害)をDLB患者とPDD患者の間で比較した初めての研究であると考えています。DLB患者はPDD患者よりも早く各臨床マイルストーンに到達しました。DLBはADに次いで2番目に多い神経変性性認知症ですが、この2つの病態を比較した研究はごくわずかです。これらの研究では、DLBの予後はADよりも悪く、神経精神症状の頻度が高く、認知機能の低下が早いことが原因である可能性が高いと結論づけられています。DLBとPDDの予後と長期的な認知機能低下を比較した研究もほとんどありません。別の研究で、年間の平均MMSEの低下がPDD(1.8ポイント)、AD(1.6ポイント)に比べてDLB(2ポイント)で大きいことを示しました。我々の知見は、PDDと比較してDLBでは予後が悪く、機能障害のために病状進行した説に大きく貢献しています。

 DLBにおけるジスキネジアの欠如は、PDDとDLBの絶対的な違いを示しています。ジスキネジアはレボドパの投与量と関連しており、レボドパの投与量が多いほど運動機能がより重症化し、罹病期間が長くなります。DLBでジスキネジアが認められない最も明白な理由は、レボドパの投与量が全体的に少ないことに関係しています。これは、DLBにおける運動症状の重症度が低いことによるものですが、より重症度の高い運動症状の時にも関連している可能性があります。

結論

 本研究で、DLBとPDD を鑑別する3つの重要な知見が明らかになりました。

  1. CAAは重要な神経病理学的特徴であり、DLBとPDDを鑑別するのに役立つ可能性がある。
  2. 臨床マイルストーンを調査した結果、DLBはPDDよりも症状進行が早く予後が悪かった。
  3. DLBでジスキネジアが認められない理由は、DLBにおけるレボドパの低用量投与を反映している可能性がある。