脳動脈解離の要点

脳動脈解離

 脳動脈解離は出血発症が50-60%, 虚血発症は30%と言われています。予後は比較的良好ですが、頭蓋内動脈解離のときはくも膜下出血を発症することがあるため、予防が重要です。今回、脳動脈解離の要点を紹介します。

疫学

  • 出血発症は解離の50-60%, 虚血発症は30%
  • 脳梗塞全体の1.2%, 50歳以下の脳梗塞の2.9-3.8%
  • 6-7割の症例で何らかの痛みを自覚(非特異的な痛み)

臨床的特徴

  • 欧米:頭蓋外内頚動脈に多い
  • 東アジア:頭蓋内椎骨動脈に多い(63.4%)
  • 予後は比較的良好:mRS 0-1 66.1%

病理学的特徴

  • 内弾性板の急激な広範囲の断裂→中膜平滑筋層内に血流が侵入し偽腔を形成

画像

 CTA, MRA, 血管撮影が用いられ、頭蓋外には超音波診断が加わる

動脈内腔の所見

  1. 脳血管撮影でのintimal flapまたはdouble lumen
  2. CTAの断層像でintimal flapまたはdouble lumen
  3. MRI T1強調像で壁内血腫を示唆する高信号
  4. 血管造影で動脈解離が示唆される所見(dilatation and stenosis, string sign/pearl sign, retention of contrast, tapered occulusion)
  5. MRI, MRA, 造影 volume T1の断層像でintimal flapまたはdouble lumenを認める
  6. 血管造影, MRA, CTAにおいて動脈本幹の紡錘状拡張を認める

動脈外観の所見

  1. 造影volume T1あるいはBPAS, 3D-T2で動脈外観に紡錘状拡張を認める
  2. 経過観察における画像所見の変化
  3. 動脈内腔あるいは外観所見に明らかな変化を認める

頭蓋内・頭蓋外動脈解離の内科的治療

  • 虚血症状を発症した頭蓋外動脈解離では、急性期に抗血栓療法(抗凝固療法または抗血小板療法)を考慮する(グレードC1)。
  • 虚血発症の頭蓋内動脈解離でも、急性期に抗血栓療法(抗凝固療法または抗血小板療法)を考慮しても良い(グレードC1)。しかし、解離部に瘤形成が明らかな場合にはくも膜下出血発症の危険性があり、抗血栓療法は勧められない(グレードC2)。
  • 抗血栓療法の継続期間は3-6ヶ月を考慮し、画像所見を参考として決定する。可能であれば、3ヶ月毎に画像検査を行う(グレードC1)。
  • 虚血発症の脳動脈解離症例における血栓溶解療法は考慮しても良いが、十分な科学的根拠はなく、慎重に症例を選択する必要がある(グレードC1)。

頭蓋内・頭蓋外動脈解離の外科治療

  • 出血性頭蓋内動脈解離では、発症後再出血を来すことが多く早期の診断および治療が望ましい(グレードC1)。外科的治療が選択された場合には、出血後24時間以内の早期施行が望ましい(グレードC1)。
  • 非出血性脳動脈解離では、保存的治療が選択されることが多いが、その場合MRIもしくは血管撮影などによる経時的観察を行うことが望ましい(グレードC1)。
  • 外科的治療としては直達手術と血管内治療があり、その適応は症例毎に検討する(グレードC1)。
 出血発症虚血発症頭痛発症
前方循環保存的または外科治療(内頚動脈はバイパス)保存的(症状進行時外科治療)保存的
後方循環外科治療保存的(症状進行時外科治療)保存的

前方循環の出血発症

  • 頭蓋外内頚動脈:出血発症なし
  • 頭蓋内内頚動脈:EC-ICバイパス+trapping or clipping
  • 中大脳動脈:(STA-MCAバイパス)+trapping or wrapping
  • 前大脳動脈:A1 segmentに多い。A3-A3バイパス+trapping or wrapping

内科治療抵抗性の解離血管と治療

  • 頭蓋外内頚動脈:症状進行時は血管内治療。血管内治療が難しいときはEC-ICバイパス
  • 頭蓋内内頚動脈:症状進行時は血管内治療。血管内治療が難しいときはEC-ICバイパス
  • 中大脳動脈:非常にまれ、虚血が多い
  • 前大脳動脈:虚血はA2 segmentに多い。予後良好。