認知症サポーターの活動状況についての報告

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 認知症サポーターは、自治体が主催する「認知症サポーター養成講座」を受講することで取得できる資格です。認知症への理解を深め、認知症者やその家族を支援する目的でつくられました。1~2時間の講座を受ければ誰でも「認知症サポーター」になることができるので、高齢の方にも積極参加をすすめています。現在、認知症サポーター数は1000万人以上(令和2年9月時点で12,773,939人)になっています。しかし、認知症サポーター取得後、認知症に関わる活動を行っているかについてはよく分かっていません。今回、神戸市の認知症サポータープログラムの活動状況についての報告がありましたので紹介します。

Dementia (London). 2020 Oct 13;1471301220967570. doi: 10.1177/1471301220967570.

認知症サポーター活動状況まとめ

・2005年から厚生労働省主導で「認知症を知り地域をつくる10ヵ年キャンペーン」の一環である「認知症サポーターキャラバン」が開始された。

・認知症サポーターは、認知症について理解し、認知症者やその家族を支援する目的でつくられた

・認知症サポーターに期待されるのは以下の5つである

  1. 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない。
  2. 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る。
  3. 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
  4. 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。
  5. まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

・全国的なキャンペーンにより現在認知症サポーター数は1000万人以上(令和2年9月時点で12,773,939人)まで広がった

・しかし認知症サポーター取得後、実際に認知症に関わる活動、ボランティアを続けている人は約半数だった。

・認知症サポーター取得後、普段から認知症者に接している人、認知症の知識が豊富な人、養成講座を2回以上参加している人は自己貢献感が高い傾向だった。

・逆に普段から認知症者に接していない人は認知症に関わる活動を行わず、自己貢献感も低かった。

・認知症サポーター養成講座後も定期的に研修を開催し、認知症サポーターのモチベーション維持を促し、具体的な認知症者の支援や活動の紹介を行う必要があると考える。

要旨

 世界的に認知症者が増えていることから、認知症サポーターの役割はますます重要になってきています。日本でも2005年に「認知症サポーターキャラバン」という全国キャンペーンが始まりました。しかし、これらの研修が認知症サポーターの仕事を円滑に進める上でどのような効果があるのか、十分に理解されていないのが現状です。本研究では、認知症サポーターが認知症者のための活動を行う上で、どのような課題を抱えているのかを明らかにすることを目的としました。その結果、研修を受けてから半年が経過しても、新たな支援活動を開始した支援者は半数にとどまっていました。今後の研究では、認知症サポーターが行う活動が認知症者やその家族介護者に与える影響を検討する必要があります。

背景

 認知症者は世界的に増加していますが、認知症支援サービスは認知度の低さなど大きな課題を抱えています。認知症者やその家族にとって、認知症に対する一般市民の理解度の低さは地域社会に助けを求める際の障壁になっている可能性があります。認知症への認識と親しみやすさは世界的な行動計画の一つであり、世界保健機関(WHO)は2025年までに認知症の包括的な社会を醸成するために、すべての加盟国が認知症に関する少なくとも1つの機能的な市民啓発キャンペーンを実施することを推奨しています。日本は世界で最も高齢化率が高い国であり、増加する認知症患者を支援するために、認知症に対する国民の意識向上や認知症にやさしい地域社会の構築のためのキャンペーンが先行して行われてきました。2005年には、日本政府が「認知症サポーターキャラバン全国運動」と呼ばれる認知症者とその介護者を対象とした新しい地域支援制度を開始し、認知症に対する国民の意識向上にも貢献しました。その後、同様のプログラムは他の国でも採用されており、一般的には「認知症フレンド」プログラムと呼ばれています。日本でもこのプログラムを実施した結果、2018年末までに1,000万人以上の認知症サポーターが養成されました。具体的には、この認知症国家戦略計画では、一個人が認知症サポーターのグループを教育し、認知症者たちをそれぞれの地域で支援するというものです。先行研究では、このプログラムの効果について追跡調査が行われ、研修会に参加した参加者の認知症者に対する態度が改善したことが明らかになっています。しかし、このプログラムが認知症支援者の行動を促進させるという点では、まだ効果は不明です。また、認知症支援者が支援活動を行う際に直面する様々な障壁については、これまでの研究では十分なモニタリングや評価がなされていませんでした。そこで、本研究では、認知症サポーターが認知症者の支援活動を推進する際に直面する課題について検討することを目的としました。

認知症サポーター養成プログラム

 認知症サポーター養成プログラムでは、6時間の養成講座を修了した「認知症キャラバン隊員」が60~90分の対面授業を1回行います。認知症の種類や症状、認知症の人を効果的に支援するための方法などについて、テキストとデジタルディスクを使って説明します。セッションの最後には、認知症サポーターにオレンジ色のブレスレットを授与します。

認知症サポーターリング
認知症サポーターのオレンジリング

方法

設定と対象

 本研究では、神戸市で開催された認知症サポーター養成講座の参加者を対象に調査を行いました。神戸市は、2016年時点で高齢化率27.1%(全国平均高齢化率27.7%)の約150万人の人口からなる政令指定都市の一つです。サンプルサイズはサンプリング誤差を10%として算出し、セッションの効果量は95%信頼区間で60%としました。望ましいサンプルサイズは96名の参加者でした。

 認知症サポーター養成講座を企画し、2 回の養成講座を別の日に実施しました。研修プログラムに参加した地域住民111名にアンケートを実施しました。研修会の最後にアンケート用紙を配布し、66名の参加者がアンケートに記入しました(回答率=60%)。さらに、研修会の半年後にフォローアップ調査を実施し、初回調査に回答した66名の支援者にアンケートを配布しました。その中で、43名の支援者から回答がありました(回答率=65%)。初回アンケートとフォローアップアンケートを完了した43名の回答者を分析しました。

変数

 初回調査では、参加者の特徴(年齢、性別、職業)、認知症者との交流経験、認知症に関する知識、認知症に関する情報を得ている頻度、認知症に関する会話を行う頻度を取得しました。認知症に関する参加者の知識を調べるために、フォローアップ調査では、認知症支援者としての自己貢献感と認知症関連活動の種類について質問しました。自己貢献感の質問は、政府が認知症サポーターに期待することを基に作成しました。(1)認知症に対する正確な理解、(2)認知症者に対して偏見のない行動、(3)認知症者やその家族への思いやり、(4)認知症者やその家族を地域で可能な限り個別に支援する、(5)地域で認知症者を支援できる活動を見出す、(6)認知症者の支援活動に友人や家族を誘って参加する、という行政の期待に基づいて作成しました。参加者の認知症支援者としての自己貢献感は、これら6つの質問を満たすことに対する自信の度合いを測定することで評価しました。これらの質問は4点満点で評価され、「3」は「強く同意する」、「2」は「同意する」、「1」は「同意しない」、「0」は「強く同意しない」を意味します。また、6つの役割について自己貢献感を算出し(0~18点)、高得点ほど自己貢献感が高いとしました。また、参加者には、どのような活動をしているか、研修会参加後に新たな支援活動を始めたかどうかを尋ねました。

分析

 データの評価には記述統計学を用いました。アウトカム変数は認知症支援者の自己貢献感と、研修会から6ヶ月後に開始した支援者活動としました。認知症支援者の自己貢献感の関連因子を調べるために一変量線形回帰モデルを用いました。単変量ロジスティック回帰モデルを用いて、認知症サポーターの活動開始との関連因子を分析しました。説明変数は、参加者の特徴、認知症者との交流経験、研修会への参加頻度、認知症に関する知識でした。統計解析はすべてStata 14.0(Stata Corp, TX, USA)を用いて行い、統計的有意水準はp < 0.05としました。

結果

対象者の特徴

 参加者の平均年齢は62歳(21歳から80歳まで)でした。さらに、参加者の74%が女性で、67%が定年退職・無職でした。認知症サポーター養成講座に2回以上参加したことがある人は約14%でした。また、参加者の約76%が認知症者との交流経験がありました。研修を受講した主な理由は、「自分自身に役立てるため」(77%)、「家族の介護が必要になったときに役立てるため」(58%)でした。

自己貢献感に関連する要因

 「認知症者に対して偏見を持たずに行動できる」「思いやりを持って認知症者を支援できる」という自信は4割近くの人が持っていると答えています。しかし、約半数の参加者は、「認知症者の支援活動を見極める」「家族や友人を誘って認知症者の支援活動に参加する」能力に自信を持っていませんでした。

 線形単回帰の結果、認知症サポーター養成講座に2回以上参加し、認知症者との交流経験があり、認知症の知識が豊富な参加者は、養成講座に1回しか参加していない人、認知症者との交流経験がなく、認知症の知識が低い人に比べて、認知症サポーターとしての自己貢献感が高いことがわかりました。

支援活動に従事することに伴う要因

 フォローアップ調査では、認知症サポーター養成講座終了後の半年間に、20名の参加者が新たに認知症者の支援活動を開始したことがわかりました。また、認知症者や家族が認知症サポーターであることがわかりやすいようにオレンジ色のブレスレットを身につけていると回答した人は12人、ボランティア活動を始めた人は9人でした。単変量ロジスティック回帰の結果、認知症者との交流経験がある人は、認知症者との交流経験がない人に比べて、研修後に支援活動を開始する可能性が高いことがわかりました(オッズ比=12.2、95%信頼区間=1.38~107.87)。

考察

 政府は、認知症サポーターが講習会を通じて、認知症者を支援するための取り組みを自主的に学ぶことを期待していますが、本研究では、講習会の6ヶ月後には、参加者の半数しか支援活動を開始していなかったことがわかりました。さらに、これまでに認知症者と接した経験があることや認知症の知識が高いことは、認知症サポーターであることや支援行動を示すことについての自己貢献感が高いことと正の関係があることも明らかになりました。この結果は、医療従事者の間でも、認知症に対する態度は個人の経験、知識、スキルによって異なるため、ある程度予想されたものでした。また、研修では認知症支援者に認知症者との関わり方を学びましたが、認知症者との関わり方の経験がないと、現実世界での認知症者への支援方法を見つけることが難しいことが示唆されました。この問題を解決する方法として、認知症について学ぶ機会を継続的に設け、専門家と協力することがモチベーションを上げる要因になるという研究結果があります。言い換えれば、認知症に関する追加の研修会やセミナー、情報を提供することで、支援者は認知症者を支援しようとするモチベーションを維持することができます。

 別の研究では、日本で認知症者が認知症サポーターにインフォーマルサービス(住民やボランティアによる支援)という形で支援を求めたのは0.1%にすぎないという結果が出ています。残念ながら、認知症サポーターの役割に対する社会的認知度は低いままです。地域保健ボランティアについても同様の知見が報告されており、例えば、地域保健ボランティアプログラムはモデルプログラムとして国際的に評価されていますが、地域社会での認知度や専門的な関心度が欠けています。訓練を受けた認知症サポーターが国の方針で定められた目標を達成しているにもかかわらず、認知症サポーターの役割についての認識を高めるためには、さらなる啓蒙活動が必要です。

 全国認知症サポーターキャラバンを通じた認知症への意識向上に関するいくつかの課題が見つかったにもかかわらず、本研究にはいくつかの限界があります。調査のサンプルサイズが小さく(n=43)、調査は都市部で行われたため、結果を日本全国に一般化することができません。これは都市部と農村部では社会的ネットワークが異なるためです。

結論

 本研究では、認知症サポーター養成講座が、一般の方の認知症に対する意識を高めるきっかけになることを示唆しています。認知症者の多くは、日本国内だけでなく、自分たちの住む地域で生活しています。そのため、認知症サポーターの役割は、認知症にやさしい地域づくりのためにますます重要になってきています。地域社会で認知症の人に優しい態度を促すためには、各国の経験を共有するためにも、エビデンスに基づいた介入を検討すべきです。