物忘れ外来、認知症外来の診療内容を解説します。受診前に準備した方が良いことも教えます

物忘れ外来

 最近物忘れが気になるようになった、今までできていたことができなくなった、家族・知り合いが認知症ではないかと感じるようになった、このような心当たりのある方は物忘れ外来、認知症外来を受診してください。しかし内科、外科の違いぐらいは分かるけれど、物忘れ外来がどこにあるのか分からないという方が多いと思います。認知症を診療している主な専門科は、脳神経内科(神経内科)と精神神経科(精神科、神経科)です。更に認知症専門医が所属していればより確実です。本記事では物忘れ外来の探し方から、実際の診療内容、受診前に準備した方が良いことを解説します。

物忘れ外来、認知症外来の探し方

 物忘れ外来・認知症外来を探している方は、日本認知症学会認定の認知症専門医のリストが公開されていますので、お住まいの都道府県から医療機関を探してください。受診方法を掲載しているところもありますので、内容を確認した後、お問い合わせください。

 近隣に物忘れ外来がない場合は脳神経内科(神経内科)と精神神経科(精神科、神経科)が認知症診療を行っていることがあります。物忘れなどの認知症中核症状は脳神経内科、易怒性、妄想、徘徊などの認知症に伴う精神症状(BPSD)は精神神経科が得意分野です。事前に病院の公式サイトなどで認知症診療を行っているか確認してください。

認知症専門医、認知症サポート医、認知症学会認定臨床医の違い

 医師対象の認知症関連の資格には主に3つあります。一つずつ解説します。

 認知症専門医は日本認知症学会が認定する公式資格です。条件は認知症診療に従事していること、研修カリキュラムを修了していること、認知症症例報告書の審査に合格すること、筆記試験に合格することなどで、最も厳格な条件となっています。認知症専門医修得者は認知症指導医の資格も合わせて持っていることが多いですので、認知症の最新知識を日々入手しています。認知症専門医を標榜している病院、医院は物忘れ外来の信頼性が高いと考えて良いでしょう。

 認知症サポート医は地域の認知症診断の知識や技術向上のため、かかりつけ医に研修や助言を行う役割を担っています。かかりつけ医、認知症専門医と連携し、地域の認知症対応力の向上を目指しています。認知症サポート医は研修を受けることで修得できますが、医師会、病院での受講者の定数が決まっているため、医療機関の代表者が修得しているケースが多いです。クリニックの院長、施設長、大学病院の教授、脳神経内科・精神神経科の部長、副部長などが相当します。ただし物忘れ外来を行っていない医師もいますので、この資格は認知症教育を目的としたものと捉えるのが良いと思います。

 認知症学会認定臨床医は認知症専門医の条件のうち、認知症専門医試験を受けていない医師が該当します。認知症専門医設立当初、専門医試験を受けなくても症例報告を提出すれば、認知症専門医の資格を得られる移行措置の時期がありました。これまで試験に合格した専門医と試験を受けていない専門医が混在していましたが、現在、日本認知症学会が「認知症学会認定臨床医」を新たに設立したことで、試験を受けていない医師は一旦「認知症学会認定臨床医」に移行し、改めて試験に合格すれば認知症専門医に昇格する制度へと変更となりました。また2011年以降に専門医を修得した医師のうち、教育施設での研修の代わりに教育セミナー受講を受けた場合も対象になります。こちらも移行措置試験を改めて受ける必要があります。ただし最初から「認知症学会認定臨床医」を申請することも可能です。「認知症学会認定臨床医」は研修歴を満たしているが認知症専門医試験を受けていない、または研修歴を教育セミナーで代替した医師と捉えてください。

物忘れ外来ではこのような診察、検査を行っています

 医療機関によって内容は異なりますが、物忘れ外来、認知症外来で一般的に行っている診療内容について解説します。

 物忘れ外来では問診を最も重要視します。認知症の発症時期、症状、経過、認知症のリスク因子を聴取します。早い経過で認知症症状が進行している場合は治せる認知症の可能性を考えます。診察では、一般的な内科診察と神経診察を行います。初診では意識、言語機能、失行・失認などの高次脳機能、運動系、感覚系、協調運動系、反射、立位、歩行などの評価を行います。認知機能検査ではMMSE、HDS-Rなどの高次脳検査、IADLなどの質問紙表による評価を行い、認知機能を点数化します。

 次に診察結果から必要な検査を依頼します。血液検査、画像検査は原則行います。血液検査は治せる認知症を鑑別するために血糖(HbA1cを追加する場合あり)、ビタミン系(ビタミンB1、B12、葉酸など)、甲状腺ホルモン、梅毒トレポネーマ抗体(TP抗体)、必要な場合アンモニア、亜鉛などを測定します。

 RI検査は医療機関によって設置していないところがあり、行わないことがあります。診断上、必要な場合はRI検査可能な施設に依頼します。脳血流検査(SPECT)、脳ドーパミントランスポーターシンチ、MIBG心筋シンチ、PETが該当します。レビー小体型認知症や特殊な変性疾患を鑑別するときに施行します。診察、検査の結果を確認し、認知症の病型診断を行います。

 認知症の確定診断がつけば、治療方針を決定します。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症は抗認知症薬の適応になります。また本人・介護者(家人)に認知症予防の助言を行います。介護保険未申請の場合は申請を提案し、介護保険サービスの導入をすすめます。精神症状が強い場合は薬物治療を開始するか、精神神経科へ紹介します。

 かかりつけ医から紹介を受けた場合は今回の診断・検査結果を報告し、抗認知症薬の処方継続を依頼します。普段はかかりつけ医で治療を継続してもらい、数ヶ月~1年後を目安にかかりつけ医より紹介を受け、認知機能検査や画像検査のフォローを行います。

認知症外来受診前に準備した方が良いこと

 介護者(家人)が認知症を疑った場合、患者本人だけでなく介護者も一緒に受診するようお願いします。本人だけでは認知症症状をうまく話せない可能性があり、診断が遅れる場合があります。

 問診で聞かれる可能性が高いものを列挙します。事前に準備をすることで認知症の特徴、重症度が把握しやすくなります。

  1. 物忘れなどの認知症症状の発症時期、経過:進行しているのか、平衡状態なのか
  2. 日常生活で困ったことがあるか:今までできていた家事ができなくなった、仕事でミスが増えた、自動車の運転で事故を起こしかけた、お金や貴重品をなくした、迷子になった、近所の人とトラブルになった、詐欺にあったなど
  3. 既往歴と服薬内容
  4. 喫煙歴、飲酒歴、健康食品の摂取状況
  5. 同居している方の人数と関係:妻と2人暮らし、息子を含めて3人暮らしなど
  6. 介護保険申請の有無、サービス利用の有無
  7. 自動車免許証の有無:現在も運転しているかの情報
  8. 介護者や同居者が認知症症状で困っていること:怒りっぽい、暴言・暴力、幻覚、物盗られ妄想、徘徊、介護への抵抗など

 本人の前で話しにくい内容があるときは、本人と家人別々で問診をとることが可能です。診察前に知らせてください。また後日治療方針を話すときも本人・介護者両方とも受診してください。抗認知症薬を開始する場合は利点と副作用について説明します。また認知症予防の生活習慣についても説明しますので本人・介護者両方の同席が重要です。