「認知症専門医試験 問題・解説集」から試験対策法を解説します

書籍

 「認知症専門医試験 問題・解説集」が発売されたことにより、試験の出題傾向が可視化されました。問題の傾向として、単純に疾患名を答えさせるのではなく、そこから該当する病理変化や画像・検査結果を答えさせる形式が多く見られます。診断、症候学、検査、各論は日常診療を行っていれば勉強前からある程度答えられるかもしれません。一方、病理、リハビリテーション、社会資源・法律に関する問題は新たな知識の吸収と整理が必要になります。暗記に費やす時間はこれらの分野に集中させるのが良いでしょう。私が過去問なしで勉強した時は、記憶の分類、病理組織と疾患の対応、Papez回路・Yakovlev回路、血管性認知症の分類、成年後見制度、自動車運転免許用診断書の指針などを繰り返し覚えました。本記事では「認知症専門医試験 問題・解説集」から重要と判断したキーワードを取り上げます。キーワードを一覧にまとめて「認知症テキストブック」で知識を深堀りしていきましょう。

基礎知識

 ここが一番暗記に時間をとられる領域だと思います。病理からの出題が多いです。Aβ, タウ, TDP-43, α-シヌクレインと疾患の対応、特徴的な病理組織は暗記しておく必要があります。

(注)以下の表、Q&Aは個人で作ったものです。不足・誤りの可能性がありますので、正答は自分で調べてまとめるようお願いします。

タンパク質

3 repeat tau         Pick球を伴うFTLD, MAPT変異を伴うFTLD, AD
4 repeat tauPSP, CBD, AGD, AD
α-synucleinPD, DLB, MSA
TDP-43FTD, 意味性認知症, ALS, ALS-FTD

病理組織

ballooned neuronCBD, AGD
pretanglePSP, CBD, AGD
neuropil threadAD
glial cytoplasmic inclusionMSA
astrocytic plaqueCBD
tuft-shaped astrocytePSP

遺伝子

MAPTリン酸化タウ, 17q21
GRNTDP-43, 17q21, PPA
C9orf72TDP-43, 第9染色体, bvFTD, ALS-FTD

病理標本は、「認知症専門医のための臨床神経病理学」「東京都医学研。脳神経病理データベース」で勉強しました。

症候学

 普段臨床業務をしていれば答えられる問題が多いです。記憶の分類、観念失行、観念運動失行、構成障害を説明できるレベルは要求されます。

記憶時間の分類

1.即時記憶:数秒程度の記憶
作業記憶暗算など作業を維持するために必要な記憶
短期記憶心理学用語
2.長期記憶:心理学用語
近時記憶数分〜数日の記憶
遠隔記憶数ヶ月以上の記憶

記憶内容の分類

1.陳述記憶 
エピソード記憶(出来事記憶)体験した記憶
意味記憶物や言葉の意味などの知識
2・非陳述記憶 
手続記憶自転車やスポーツなどの技能
プライミング先行刺激で興奮・抑制する反応

高次脳機能

右大脳半球左大脳半球
視空間認知→構成障害言語→失語、失読、失書
注意→左半側空間無視、全般性注意障害行為→観念運動失行、観念失行、口舌顔面失行
着衣→着衣失行計算→失計算
頭頂葉

Papezの回路の代表経路

海馬-脳弓-乳頭体-乳頭視床路-視床前核-帯状回-海馬

Yakovlevの回路の代表経路

扁桃体-視床背内側核-前頭葉眼窩面皮質-鉤状束-側頭葉皮質前部-扁桃体

Q. 次の病態に関係する大脳領域
1. 失書を伴わない失読
2. バリント症候群
3. 観念運動失行
4. 観念失行
5. 相貌失認

A.

1. 左後頭葉と隣接する脳梁部
2. 両側頭頂後頭葉
3. 優位頭頂葉下部、補足運動野、前頭皮質、隣接する脳梁
4. 優位頭頂葉
5. 両側後頭側頭葉皮質

診断、評価尺度

 MCIからの出題が多いです。MCIで一番有効な評価尺度→MoCA-J、MCIから認知症へのコンバート率 5-15%/年、リバート率 16-41%は覚えておいた方が良いです。BPSDの評価尺度→NPI、失語の分類も問われることがあります。

失語

滞続言語刺激に対して同じ言語を繰り返す。FTD。
反復言語パリラリア。刺激なしに自動的に同じ単語や文を繰り返す。FTD。
反響言語エコラリア。相手の言葉をそのまま答える。FTD。
語間代言葉の終わりや中間の音節を間代性に繰り返す。「ありががが・・・」。ADで多い

FAST

職場で複雑な仕事ができない3
入浴や着衣に介助が必要6
金銭の管理に支障を来す4
物の置き忘れや物忘れが起こる2
歩行や座位の保持ができない7

鑑別診断

 カプグラ(Capgras)症候群が頻出しています。Lewy小体型認知症で認められます。高齢者てんかんの特徴もよく出題されています。非痙攣性で、「一点を見つめてぼーっとしている」「話しかけても反応しない」がキーワード。抗てんかん薬が奏効します。

画像診断

 MIBG心筋シンチ、ドパミントランスポーターSPECTでPD, DLB, MSA, CBD, PSPの特徴を問われます。NPHはEvans index>0.3で疑う。DESH、円蓋部の脳溝の緊密化も特徴的です。

薬物療法・予防・疫学

 抗認知症薬の半減期を覚えておいた方が良いでしょう。また抗認知症薬の副作用についてもよく聞かれます。抑肝散エキスは低カリウム血症の副作用があります。MCIは抗認知症薬の適応はありません。BPSDの治療でクエチアピンとオランザピンは糖尿病患者で禁忌です。

高齢者の特性と薬物療法の留意点

 せん妄を起こす薬剤は抗コリン薬、抗不安薬、ステロイド、H2 blocker。PPIは入っていません。最近はフレイルがトピックです。

誤嚥性肺炎の予防はサブスタンスPを増加させて嚥下反射を惹起させます。

  1. 口腔ケア:知覚神経を刺激してサブスタンスPを増加
  2. ACE blocker:サブスタンスPの分解を抑制
  3. 塩酸アマンタジン、L-Dopa:ドパミン系を賦活
  4. シロスタゾール

リハビリテーションとケア

 バリデーションや回想法など認知症者へのリハビリテーションの名称を覚えておく必要があります。

社会環境・資源・倫理

 介護保険サービス、認知症初期集中支援、地域包括支援センター、認知症疾患医療センターの役割を答えられるようにします。成年後見人制度、自動車運転免許診断書の記載法もよく出題されます。

Q. 介護保険の地域密着型サービスに該当するものを挙げよ
1.訪問サービス、2.夜間対応型訪問看護、3.認知症対応型共同生活介護、4.介護老人保健施設、5.短期入所サービス、6.小規模多機能型居宅介護、7.介護療養型医療施設、8.認知症対応型通所介護

A.

  • 地域密着型サービス:2, 3, 6, 8
  • 居宅サービス:1, 5
  • 施設サービス:4, 7

アルツハイマー型認知症

 バイオマーカー(髄液中Aβ42↓、総タウ↑、リン酸化タウ↑)、アミロイドPET、FDG-PETの話題が出ます。APOE4とアルツハイマー型認知症の関係が細かいところから出ています。NFTのブラークステージは良く出ています。

血管性認知症

 血管性認知症の分類で一番多いタイプは小血管病性です。CADASILの問題は頻出されています。

Lewy小体型認知症

 ハロペリドールなどの定型抗精神病薬は精神症状を悪化させるため禁止。2017年に改訂された診断基準は重要です。中核的特徴、指標的バイオマーカーを覚えておいた方が良いでしょう。抗認知症薬の中でドネペジルが保険適応になりました。

前頭側頭葉変性症

 疾患と対応するタンパク質を問う問題は頻出です。

行動障害型前頭側頭型認知症の診断基準を満たすのに必要な行動、認知症症状6つ

  1. 脱抑制
  2. 無関心、無気力
  3. 共感や感情移入の欠如
  4. 固執、常同性
  5. 口唇傾向と食習慣の変化
  6. 遂行課題の障害、エピソード記憶と視空間技能の保持

意味性認知症の診断を満たす高次脳機能機能の特徴4項目

  1. 対象物に対する知識の障害
  2. 表層性失書、失読
  3. 復唱は保たれている、流暢性発語
  4. 発話は保たれている(文法、自発語)

前頭葉障害と特徴的な症状

  • 背外側前頭前野皮質→皮質下認知症
  • 外側眼窩皮質→人格障害、脱抑制
  • 前帯状回皮質→無気力apathy

その他の認知症

 Creutzfeldt-Jacob病、嗜銀顆粒性認知症がよく出ています。

  • Gerstmann-Straussler-Scheinker病の原因遺伝子→ P102L
  • 日本に多いCJDの遺伝子タイプ→ V180I, M232R
  • 嗜銀顆粒性認知症の好発部位→ 側頭葉内側面、扁桃核移行部(迂回回)、左右差強い
  • 嗜銀顆粒性認知症に合併しやすい認知症→  CBD 41%、PSP 19%

以下の記事も参考にしてください

認知症専門医試験の勉強で役立つ書籍、勉強法を解説します

認知症専門医になるにはどうすれば良いか?その方法を解説します。また合格後の手続きについても説明します。