認知症でみられるうつ病の特徴と対応法まとめ

うつ

 抑うつ状態は認知症初期から出現し、認知症患者に高率に認められます。しかし、加齢現象と間違われる、身体疾患の症状に隠れてしまうなどで見逃されがちです。うつ病は本人のADL低下だけでなく、介護者にも大きな負担になります。本記事ではUp To Dateを参考に認知症でみられるうつ病の特徴と対応法をまとめました。

臨床的特徴

  • 高齢者の場合、「仮性認知症」または「うつ病の認知症症候群」と呼ばれる認知症様症状を認めるうつ病との鑑別が重要。
  • うつ病の高齢者は、将来認知症を発症するリスクが高い。
  • うつ病後にアルツハイマー病を発症するリスクは男性の方が高い。

アルツハイマー病(AD)患者におけるうつ病の診断基準

A. 以下の症状のうち3つ以上が、同じ2週間の間に出現し、以前の機能レベルからの変化を表すもの。第 1 項目または第 2 項目のいずれかを含めなければならない。
1. 臨床的に有意な抑うつ気分
2. 社会的接触や通常の活動に反応して、ポジティブな感情や喜びが減少する
3. 社会的孤立またはひきこもり
4. 食欲不振
5. 不規則な睡眠
6. 精神運動遅滞や焦燥感
7. イライラ感
8. 疲労またはエネルギーの損失
9. 無価値感、絶望感、不適切な罪悪感
B. アルツハイマー型認知症の基準を満たす。
C. 抑うつ症状は、臨床的に有意な苦痛や機能障害を引き起こす。
D. 症状がせん妄のエピソードの間だけでは起こらない。
E. 症状が物質(薬物治療または薬物乱用)による直接的な生理的影響によるものではない。
F. 症状が他の病態では説明がつかない。
 以下を明記する
 ・同時発症:発症がAD症状に先行しているか、同時の場合  
 ・AD後発症:発症がAD診断後の場合  
 ・ADの精神症状を伴う  
 ・他の主要な行動障害を伴う  
 ・気分障害の既往歴あり
The American Association for Geriatric Psychiatry

高齢者でみられるうつ病の原因

  • 環境要因:近親者の死別、孤独、経済的問題、入院・施設入所など
  • 心理要因:持病の心配、老いに対する恐怖・不安
  • 身体要因:疼痛、脳血管障害、認知症、視床下部-下垂体-副腎系の障害
  • 薬剤要因:ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬(L-Dopa、アマンタジン(シンメトレル®)、ブロモクリプチン(パーロデル®)など)、インターフェロン、降圧薬(β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリス製剤、クロニジン(カタプレス®)、メチルドパ(アルドメット®)、レセルピン(アポプロン®)など)、鎮痛薬(オピオイド、コデイン、インドメタシン、COX-2阻害薬)

うつ病の非薬物的対応

  • 環境要因があるようなら、落ち着くまでの間、接触時間を増やし、不安軽減を図る。
  • 心理・身体要因があるようなら、傾聴し、愁訴の背景にある辛さに共感を示す。
  • 最近変更・追加した薬剤がある場合、減量・休薬を試す。
  • 音楽療法、マッサージ、表現療法(絵を描くなど)が有効なことがある。
  • 有酸素運動(エアロビクス・ダンスなど)が有効なことがある。

うつ病の薬物的対応

  • 三環系抗うつ薬は抗コリン作用があるため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を強く推奨する。
  • セルトラリン(ジェイゾロフト®、25mg~)とシタロプラム(日本は未発売。エスシタロプラム(レクサプロ®)が販売)が一般的に用いられる。
  • パロキセチン(パキシル®)はSSRIの中で最も抗コリン作用が強いため、認知機能に影響を及ぼす可能性がある。
  • 認知症患者のうつ病を対象としたSSRIの臨床試験では、結果はややばらつきがある。
  • ベンラファキシン(イフェクサー®)やブプロピオン(日本未発売)などの非定型抗うつ薬も有効であるかもしれないが、ADにおいては十分に研究されていない。
  • うつ病とADの患者219人を対象とした無作為化試験では、13週または39週の治療を行ってもミルタザピン(リフレックス®)はプラセボよりも効果がなかった(Lancet. 2011 Jul 30;378(9789):403-11. doi: 10.1016/S0140-6736(11)60830-1)。
  • 三環系抗うつ薬は、その抗コリン作用に起因すると思われる混乱の悪化を引き起こす可能性があり、SSRIほど忍容性が高くない。
  • ノルトリプチリン(ノリトレン®)は抗コリン作用が少ないため、アミトリプチリン(トリプタノール®)よりも忍容性が高いかもしれない。

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