高齢者の難聴は、危険察知の遅れや、孤立・うつ状態に陥ることがあり、最近の研究では認知症のリスクになることが明らかになりました。治せる難聴に耳垢塞栓や滲出性中耳炎などがあり、矯正可能な場合は補聴器を使用することがすすめられています。今回、高齢者の難聴対策の要点を紹介します。
難聴の問題点
- 危険の察知が遅れる
- 人付き合いが億劫になり孤立やうつ状態に陥ることがある
コロナ時代での難聴
- 症状が無くてもマスク着用
- 人との距離を保ち対面会話を避ける
- 難聴があると会話の相手が大きな声を出す、あるいはマスクを外さなければならなくなり感染のリスクになる
- 難聴があると、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかなくなる
耳の構造
- 外耳:耳介~鼓膜
- 中耳:鼓膜~耳小骨
- 内耳:蝸牛
- 伝音性難聴:外耳から中耳の障害
- 感音性難聴:内耳・蝸牛神経・脳の障害
- 混合性難聴:伝音性+感音性難聴
治る難聴
- 耳垢栓塞・外耳道真珠腫:外耳道閉塞により伝音性難聴→耳垢処置
- 滲出性中耳炎:鼓膜の奥(鼓室)に浸出液が溜まる→浸出液を排液
- 慢性穿孔性中耳炎:慢性中耳炎から鼓膜穿孔を起こす→手術による形成
補聴器の効果
全国7大学病院共同研究:シニア補聴器初心者6ヶ月の追跡
- 遂行機能評価は、補聴器開始時 44.7点(SD 11.8)、補聴器開始6ヶ月後 46.1点(SD 12.2)と有意な改善を認めた(p=0.0106)
J Am Geriatr Soc 00:1-8, 2019.
11万人超の大規模データより認知症、うつ、転倒に対する補聴器使用の効果を評価した研究
補聴器非使用群を基準とした補聴器使用群のハザード比(調整後) | p値 | |
アルツハイマー病または認知症 | 0.824(0.761-0.893) | <0.001 |
うつ病または不安症 | 0.894(0.856-0.934) | <0.001 |
負傷を伴う転倒 | 0.871(0.804-0.945) | <0.001 |
- 成人難聴者のうち補聴器使用者は、アルツハイマー病または認知症、うつ病または不安症、負傷を伴う転倒の診断に至るリスクが有意に低かった
- 補聴器を使うことで、一部の認知症の発生には、予防的な効果が期待できる
- 補聴器使用は重大な有害事象がないという点で、もっと注目されてよい選択肢と考える
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