新型コロナウィルス感染症(COVID-19)流行による認知症診療及びケアの現状を解説します

covid-19

 日本認知症学会より、「新型コロナウイルス感染症蔓延による認知症の診療等への影響に関するアンケート調査結果」が公開されました。アンケートの回答者は認知症専門医で、私も回答に協力しました。今回のアンケートで日本における認知症の診療及びケアへの影響が明らかになりました。結論から言いますと、認知症外来はできるだけ受診抑制を行わず診療を続けています。受診側は病院に行くことを躊躇しています。介護サービスは通所サービスを中心に頻度が減少し、認知症の啓蒙を目的とした集会、家族会は回数を大きく減らしています。認知症者の症状は全体的に悪化している傾向でした。この結果は概ね予想通りでしたが、受診控えが思っていた以上に多い印象でした。実際、外来を中心に大きく収益を落とし、赤字に転落している病院が多いです。この結果をふまえて、認知症診療・ケアをどのように続けていくのか考えていく必要があります。

 アンケートは全国1586名の専門医に呼びかけ、46都道府県から357件の回答が得ています。大都市、地方都市の偏りはないそうです。アンケートは選択式ですが、自由記載欄もあります。ケアについてはデイケア、訪問看護、家族会、認知症カフェなど細分化されており、専門医でも直接関わっていないと答えづらい質問が多い印象でした。分量もそこそこ多いので忙しさに負けて回答できない先生もいたと思われます。

外来診療の影響

 まずは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)流行後の外来診療の状況です。

COVID-19流行後の外来状況
COVID-19流行後の外来診療状況

 病院全体での外来の受診抑制は47%ですが、認知症外来(物忘れ外来)の抑制は28%と低い結果でした。外来については、薬処方のみや電話診察を行っていましたので、何らかの対策をとった医療施設が多かったものと考えます。その中で認知症外来で抑制が少ないのはBPSDの対応も含めて対面診療を重視したものと考えます。

認知症者の受診頻度

 認知症患者の受診状況です。「分からない」「不明」を除くと、「著しく減少」が22%、「やや減少」が60%と「変わらない」7%に比べて、受診頻度が大きく落ちこんでいるのが判明しました。

受診頻度低下の理由

 受診頻度低下の原因は、「利用者の躊躇」が57%、「診療提供者側の制限」が9%、「双方の抑制」が23%と利用者側が受診を控えた影響が強く反映された結果でした。この時期は病院や施設でクラスター発生のニュースが相次いで報道されたことも重なり、受診に対する心配や恐怖が増幅された可能性があります。夏に入ってからは徐々に受診者数は増えていますが、昨年よりはまだ少ない傾向が続いています。

介護サービス、ケアの影響

  次にCOVID-19流行後の介護サービスやケアの変化です。

介護サービス・ケアの変化

 デイケア、認知症サロン、家族会など認知症ケアに関わるサービス、集会は大きく減少しました。集団で集まる催し物はどうしてもクラスター発生のリスクに晒されるため、やむをえない傾向と言えます。更に医療・介護スタッフの離職も低頻度ながら生じています。医療・介護スタッフの家族が保育園や施設の入場を断られるという問題が起きており、また外出の自粛をより厳格に要請されているケースもあります。医療従事者の精神的なケアを意識的に試みなければ、離職の割合が更に増える危険があります。

 これら多くのサービスが減少したことにより、次項で述べる認知症患者への影響が少なからず出ています。またショートステイ、デイサービスが利用できないことにより介護者の負担が増えたというケースも耳にする機会が増えました。地域包括ケア病棟への入院に転換するなどの対策をとっていますが、クラスター発生の起きた施設からの受け入れは不可能と判断せざるをえないケースもあり、セーフティーネットの減少はかなりの痛手になっています。

COVID-19感染による認知症患者の影響

 次にCOVID-19感染による認知症患者への影響についてです。

認知症患者の症状悪化
認知症症状

 COVID-19流行後に何らかの認知症症状の悪化を経験した医師は多いようです。「分からない」「無回答」を除く内訳では、「多く認める」が8%、「少数認める」が32%で、「認めない」の23%より多い結果でした。悪化した症状は中核症状、行動・心理症状(BPSD)で差はありませんでした。症状悪化の原因はデイケアなどの利用機会が減ったため、社会的な関わりが減少した影響が考えられます。介護スタッフもこのことを実感しており、自粛せずにデイサービスを続けるべきであるという声が聞かれるようになりました。今後、1ヶ所に集まっての講演や集会が困難な状況がしばらく続くと考えます。医療スタッフ間では、Zoomなどを利用したオンライン会議が増えてきています。しかし一般市民を対象としたセミナーや集会は参加方法の問題などでまだ実践が難しいです。しばらくは戸別訪問、リーフレットの配布などを行い、自宅でも実践できる体操や脳トレーニング法を広めていく活動が必要と考えます。

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