認知症のあるCOVID-19入院患者は低活動性せん妄の症状が多く、死亡率が有意に高かった(イタリアの報告)

covid-19

 北イタリアのロンバルディア州ブレシアにある急性期病院にCOVID-19肺炎で入院した627人に対して認知症の診断、COVID-19感染症の発症様式、入院時の症状、転帰を調べました。認知症と診断されたのは82例(13.1%)でした。死亡率は、認知症患者では62.2%(51/82人)であったのに対し、認知症のない患者では26.2%(143/545人)でした(p<0.001、χ2検定)。ロジスティック回帰分析では、年齢と認知症は死亡率の上昇と独立して関連しており、認知症と診断された患者ではオッズ比(OR) 1.84(95%CI:1.09-3.13、p<0.05)でした。認知症と診断された患者で最も頻度の高かった症状は、せん妄、特に低活動性せん妄と日常生活機能の悪化でした。認知症の診断、特に重度に進行した認知症は、COVID-19患者の死亡率の重要な危険因子でした。

The journal of nutrition, health & aging. 2020 May 15;1-3. doi: 10.1007/s12603-020-1389-1.

背景、方法

 イタリアではSARS-CoV-2のアウトブレイクが発生し、2020年4月8日時点で13万5586人の感染をが確認され、1万7127人が死亡するという壊滅的な事態となりました。COVID-19で死亡した患者背景は、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、肥満が死亡の重要な危険因子として同定されました。しかし認知症が併存疾患として記載されたのはCOVID-19患者のわずか6.8%でした。これまでのところ、COVID-19患者の死亡リスク因子として認知症を分析した研究はほとんどありません。今回、2020年2月22日から4月8日までにCOVID-19肺炎で入院した627例に対して認知症の診断、COVID-19感染症の発症様式、入院時の症状、転帰を調べました。すべての患者で鼻咽頭から実施したSARSCov-2のRT-PCR検査が陽性であり、症状は呼吸障害を認めました。65歳以上では認知機能評価とせん妄の有無を評価しています。

結果、考察

 627例中、認知症と診断されたのは82人(13.1%)でした。患者背景は以下の通りです。

 全体認知症非認知症p
人数(%)627(100)82(13.1)545(86.9) 
男性(%)292(46.6)35(42.7)257(47.2)NS
女性(%)335(53.4)47(57.3)288(52.8) 
平均年齢(SD)70.7(12.9)82.6(5.3)68.9(12.7)<0.001
死亡者(%)194(30.9)51(62.2)143(26.2)<0.001

 認知症と診断された患者の平均年齢は82.6歳であったのに対し、認知症と診断されなかった患者では68.9歳で、認知症患者の平均年齢が有意に高い結果でした。男女の差はみられませんでした。死亡率は、認知症患者では62.2%(51/82)であったのに対し、認知症のない患者では26.2%(143/545)と認知症患者で有意に死亡率が高い結果でした。認知症の診断が年齢や性別に関係なく転帰の悪化と関連しているかどうかを評価するために、ロジスティック回帰分析を行いました。結果は年齢と認知症は独立して死亡率の上昇と関連していました。年齢上昇に対する死亡率のオッズ比(OR)は1.09(95%CI:1.07-1.12、p<0.001)であり、認知症と診断された患者は1.84(95%CI:1.09-3.13、p<0.05)のORを示しました。

 認知症の重症度はClinical Dementia Rating Scale(CDR)を用いています。CDR1(軽度)で36人(43.4%)、CDR2(中等度)で15人(18.3%)、CDR3(重度)で31人(37.8%)に分類されました。死亡率はそれぞれ41.7%、66.7%、83.9%(p<0.001)で認知症が重度であるほど死亡率が高い傾向を示しました。

 認知症と診断された患者の臨床症状を以下に示します。

症状人数(%)
せん妄55(67.1)
 低活動性せん妄41(50.0)
 過活動せん妄17(20.7)
日常生活機能の悪化46(56.1)
行動障害の悪化9(11.0)
発熱39(47.6)
11(13.4)
呼吸困難36(43.9)

 認知症と診断された患者の中で最も頻度の高い症状はせん妄(67%、特に低活性型では50%)と日常生活機能の悪化でした。低活動性せん妄とは無気力、無表情、傾眠を特徴とする意識混濁状態です。COVID-19感染症の典型的な症状(発熱、咳、呼吸困難)の頻度は低く、認知症患者のCOVID-19の早期診断は難しい結果でした。 認知症入院患者の管理は、患者の自覚症状の乏しさやコミュニケーションの難しさ、訓練を受けたスタッフの数が限られているなどの理由で困難なものとなっています。認知症患者におけるCOVID-19の臨床症状は非定型のため、低活動性せん妄の発症および日常生活機能の悪化がCOVID‐19感染の早期診断に繋がります。早期診断は適切な治療と適切な隔離を提供するのに役立ちますので、認知症患者のCOVID-19感染の指標として今回の調査は意義があるものと考えます。

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yshima脳神経内科医
認知症専門医の資格を持つ脳神経内科医です。 神経内科専門医・指導医、総合内科専門医・指導医、認知症サポート医。 M.D., Ph.D.