認知症患者はCOVID-19に対して脆弱であり、罹患率が約2倍となっています。非認知症者よりもせん妄を起こしやすく、死亡率も高くなっています。最近、ApoE4遺伝子多型の患者の罹患リスクが高いと報告されています。今回、認知症患者のCOVID-19感染の特徴をまとめました。
目次
65歳以上の認知症患者数と有病率
- 2012年:認知症患者数 462万人、有病率 15.0%
- 2020年推計:認知症患者数 602万人(※631万人)、有病率 17.2% (※18.0%)
- ※各年齢の認知症有病率が上昇する場合:糖尿病有病率が、2012年から2060年までに20%上昇すると仮定した場合
- 2025年推計:認知症患者数 675万人(※730万人)、有病率 19.0% (※20.6%)
- 2060年推計:認知症患者数 850万人(※1154万人)、有病率 25.3% (※34.3%)
- 65歳以上では10人に1人が認知症
- 85歳以上では3~4人に1人が認知症
- 90歳以上では2人に1人が認知症
- 100歳以上ではほとんどが認知症
イギリスでは1990年代に比べ、2000年代では認知症罹患率が低下している(F.E. Matthews et al. Lancet. 2013)→生活習慣の是正が関係していると言われている
アミロイドカスケード説
- 髄液Aβの低下は認知症発症年齢よりも20年以上前に始まっている
- 髄液tau上昇は認知症発症年齢よりも10年以上前に始まっている
認知症患者のCOVID-19に対する脆弱性
- マスクやソーシャルディスタンスなど、ウィルスに対する防御手順を理解することが困難
- 症状の訴えが非典型で、介護者が把握することが困難
- 施設入所している患者が多く、集団感染に巻き込まれやすい
- 日常生活動作に介助が必要であるケースが多く、身体距離をとることが難しい
- 高齢かつ併存疾患があることが多く重症化しやすい
- 入院によりせん妄・認知機能悪化を来しやすい
- ApoE4遺伝子多型を持つ認知症患者はCOVID-19に感染しやすい、重症化しやすい
- BPSDによりスタッフや他の患者へのリスクを増大させる
認知症のCOVID-19罹患リスク
Wang et al. Alz and Dementia. 2021
- 認知症全体 OR 2.00 (95%CI 1.94-2.06)
- 血管性認知症 OR 3.17 (95%CI 2.97-3.37)
- アルツハイマー病 OR 1.86 (95%CI 1.77-1.96)
ApoE4遺伝子多型のCOVID-19感染リスク
Kuo et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2020.
- e4e4 OR 2.31 (95%CI 1.65-3.24)
- e3e4 OR 1.14 (95%CI 0.95-1.35)
- ApoE4を持った神経細胞には新型コロナウィルスの感染が起こりやすい
認知症患者のCOVID-19初期症状の特徴
- 発熱
- 咳
- 呼吸困難:非認知症者よりも有意に少ない報告.
- 意識レベルの変容(せん妄):非認知症者よりも有意に多い報告
COVID-19で入院した患者は精神神経症状を起こしやすい
Helms et al. N Engl J Med. 2020
- せん妄 65%
- 興奮 69%
- 実行機能障害 36%
COVID-19による死亡リスク要因
- 年齢(80歳以上)
- 認知症
- ADL低下(要介護度が高い)
- DNR (蘇生措置を希望しない):認知症患者のDNR率 60.3%, OR 2.20 (1.60-3.00)。非認知症者は35.2%
COVID-19流行下での認知症悪化要因
- 孤独
- 抑うつ
- 自主隔離:興奮、アパシー、抑うつ、易刺激性が多くみられる