小児・妊産婦の脳血管障害の治療(脳卒中治療ガイドライン2021)

小児・妊産婦の脳血管障害

 脳卒中治療ガイドライン2021では、小児の脳血管障害の治療が新たに追加されています。小児の脳卒中には、動脈性虚血(AIS)、脳静脈・静脈洞血栓症、頭蓋内出血があり、血管異常・血液凝固異常の合併が多いため、早期の画像診断・血液検査が勧められます。今回、小児・妊産婦の脳血管障害の治療を紹介します。

小児の脳血管障害(もやもや病を除く)

 小児の脳卒中には、arterial ischemic stroke(AIS:動脈性虚血)、cerebral sinovenous thrombosis(CSVT:脳静脈・静脈洞血栓症)、hemorrhage stroke(頭蓋内出血)がある。

  • 小児のarterial ischemic stroke(AIS)の原因として、もやもや病以外のarteriopathyがあり、MRAによる画像診断が勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)。arteriopathyの存在はAIS再発の危険因子であり、経時的な画像検査が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)。再発予防のために、抗血栓療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 小児AIS超急性期におけるrt-PA療法や機械的血栓回収療法の報告があるが、有効性は確立されていない(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 周産期AISは脳性麻痺の主原因であり、多くは出生3日以内のけいれん発作で発症し脳波異常を呈する。これらをみた場合にはMRIによる画像検査を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)
  • 小児(新生児を除く)の頭蓋内出血では血管異常や血液凝固異常の合併が多く、MRI/MRAやCTAによる画像診断および血液学的検査が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)
  • 早産低出生体重児では経頭蓋エコーによる新生児脳室内出血のスクリーニングをおこなうことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)。頭蓋内圧亢進を伴う持続的な脳室拡大があるときには、適切な髄液管理を行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 正期産新生児の頭蓋内出血では巣症状が明らかではないことが多い。けいれん、無呼吸、徐脈、意識障害を呈する場合には頭蓋内画像診断を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)
  • 小児(新生児を除く)の脳静脈・静脈洞血栓症(CSVT)に対して抗凝固療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。ただし新生児では頭蓋内出血を伴うことがあるため、有効性が確立していない(推奨度C エビデンスレベル中)

妊娠・分娩に伴う脳血管障害の治療

  • 妊娠中・分娩時・産褥期に脳卒中を疑う症状を有する場合は、頭部CTやMRIなどによる画像診断を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。十分な科学的根拠はないが、脳血管障害を確定した場合は、専門的治療が可能な医療施設で治療することが望ましい(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 妊娠に関連した脳卒中においては、原則的に母体の治療を優先し、非妊娠時と同様に脳血管疾患の存在を念頭において精査を行い、適切な治療を開始することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 妊娠高血圧症候群は脳卒中の危険因子であり、産科と緊密な連絡をとり管理することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 器質的脳血管病変の合併は、必ずしも妊娠の禁忌とはいえない。しかし、妊娠中に脳卒中発症のリスクが上る可能性があり、産科・小児科と連携した管理が妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)

※妊産婦脳卒中の頻度は、一般的な若年脳卒中発症率の約3倍とされる。