遺伝性血管疾患CADASILの治療と予後まとめ

CADASILの治療

 CADASILは虚血性脳卒中と認知症を特徴とする遺伝性血管疾患です。CADASILの臨床経過は30歳代で前兆を伴う片頭痛、40-60歳代で虚血性脳卒中、50-60歳代で認知症を発症することが多いです。本疾患の根本治療はありませんが、それぞれの臨床徴候に対応した治療が必要です。本記事ではCADASILの治療と予後をまとめました。

要旨

  • CADASILには現時点で特効薬はない。虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作の症状があるCADASIL患者には、二次的な脳卒中予防として抗血小板療法を推奨している(グレード2C)。しかし、抗血小板療法がCADASILに関連した脳卒中の予防に有効であることを証明するデータはない。
  • 収縮期血圧が上昇しているCADASIL患者には、血圧管理を推奨する(グレード2C)。糖化ヘモグロビン(A1C)値が上昇しているCADASIL患者には、血糖値とA1C値を正常化するための対策を推奨する(グレード2C)。脂質異常症を有するCADASIL患者に対しては、スタチン系薬剤による治療を推奨する(グレード2C)。
  • その他のCADASILの管理は、頭痛、抑うつ、尿失禁などの症状のコントロールが中心となる。
  • CADASILの臨床経過は、30歳前後で前兆を伴う片頭痛、40~60歳で一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、気分障害、50~60歳で認知症、60歳前後で歩行困難が順次進行する傾向にある。しかし、CADASILの臨床経過は、罹患した家族内でも大きな変動がある。

CADASILの治療

 CADASILに対する特異的な疾患改善治療法はなく、症状の治療に関しては限られた情報しか得られていない。

虚血性症状

 CADASIL患者における急性一過性脳虚血発作および急性脳卒中は、脳卒中の一般原則に従って治療される。

 CADASIL患者の脳卒中予防は、具体的なエビデンスがないが、降圧療法、スタチン、抗血小板療法など、利用可能なすべてのリスク低減治療を推奨している。さらに、喫煙がCADASIL患者の脳卒中や認知症のリスクを増加させるという報告があるため、禁煙が特に重要であると考えられる。他に提言されている生活様式の変更としては、アルコール摂取の制限、体重管理、定期的な有酸素運動、果物、野菜、低脂肪乳製品を豊富に含む地中海式食事が挙げられる。

 長期管理には、脳虚血性発作を経験した患者で薬剤の忍容性のある患者には、低用量アスピリンが選択に入る。経口抗凝固薬の使用は支持するデータがなく、合併症を発症する不必要に高いリスクにさらす可能性がある。

 CADASILにおける血圧コントロールの研究はないが、高血圧は虚血性脳卒中、脳萎縮の進行、微小脳出血の危険因子である可能性がある。したがって、高血圧の治療は、CADASIL患者にさらなる有益性を示す可能性がある。収縮期血圧が上昇しているCADASIL患者すべてに対して、血圧コントロールすることを推奨する。

 同様に、厳格な血糖コントロールがCADASILの進行を遅らせることができるという証拠はないが、糖化ヘモグロビン(A1C)値の上昇は、微小脳出血の危険因子である可能性がある。CADASIL患者では血糖コントロールも付加的な利益をもたらす可能性があり、A1C値が上昇している患者では血糖値とA1C値を正常化するための対策を推奨している。ほとんどの患者でA1C値の目標値は7.0%以下にすべきである。低血糖症のリスクが潜在的な有益性を上回る可能性がある高齢の患者や余命が限られている患者では、目標値はやや高めに設定すべきである。

 脂質が上昇している患者では、動脈硬化性疾患に対する有益な効果があること、およびスタチンが神経保護効果を有することを示唆する実験的証拠があることから、スタチンの使用が推奨されている。

対症療法

 CADASILの対症療法は、頭痛、抑うつ、尿失禁などの症状のコントロールに重点を置いている。

 強制泣きや強制笑いを伴う情動不安定(仮性球情動)は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例:フルボキサミン(デプロメール®)100mgの夜間単回投与)に反応することがある。

 片頭痛発作は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で治療できる。トリプタンは、血管痙攣による脳卒中リスクの増加という懸念に基づいて、CADASIL患者では相対的禁忌とされている。

 ほとんどのCADASIL患者では、前兆を伴う片頭痛の発作頻度が低いため、予防的治療を必要とするケースはほとんどない。予防治療を必要とする患者には、アセタゾラミド(ダイアモックス®、1日250mg)が効果的という報告がある。片頭痛に対する標準的な予防法も利用できる。

 経口での水分補給や栄養補給が不十分になった場合は、経管栄養を追加で行う。

無症状の家族のスクリーニング

 無症状の家族は、CADASILの不顕性徴候を検出するMRIなどの検査の前に、遺伝カウンセリングを受けるべきである。

 遺伝子検査は、疾患を改善する治療法がない遅発性神経疾患において、倫理的、法的、心理社会的問題を扱う公表されたガイドラインに従って実施されるべきである。症状のない小児は検査を受けるべきではないが、リスクのある成人には遺伝カウンセラーに紹介して教育ミーティングを開くべきである。検査の結果にかかわらず、検査の前後にカウンセリングを行うべきである。

臨床経過と予後

  CADASILの臨床経過は、30歳前後で前兆を伴う片頭痛、40~60歳で一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、気分障害、50~60歳で認知症、60歳前後で歩行困難が順次進行する傾向にある。しかし、CADASILの全体的な経過は、罹患した家族内でも大きく変動する。中には70歳代まで無症状のままの患者もいる。小児期に発症する例も報告されている。

 発症が早いからといって、必ずしも急速な進行を予測しているわけではない。29家族102人の患者を対象としたレビューでは、発症から死亡までの期間は3~43年で、平均は23年であった。

 進行には個人差があるが、成人のCADASIL患者のかなりの割合が3年間で臨床症状の悪化を経験している。この観察は、ヨーロッパの2つの主要な紹介センターから集められたCADASIL患者290人の成人(平均年齢約51歳)を対象としたプロスペクティブ研究から得られたものである。ベースライン時のコホートの主な臨床症状は以下の通りであった。

  • 無症状:4%。
  • 一過性脳虚血性発作または脳卒中:66%。
  • 前兆のある片頭痛:39%。
  • 歩行障害:30%。
  • 中等度または重度の機能障害:18%。
  • 認知症:14%。
  • ラクナ梗塞の平均数:5

 265人の被験者について完全な情報が得られた3年間の追跡調査では、脳卒中の発症、認知症の発症、中等度または重度の機能障害、または死亡の複合アウトカムが124人(47%)で発生した。個々のエンドポイントによる影響を受けた割合は以下の通りであった。

  • 新規脳卒中:20%。このうちほとんど(約80%)の脳卒中は、脳卒中の既往歴のある被験者で発生した。
  • ベースライン時に認知症ではなかった被験者の認知症発症率は21%だった。
  • ベースライン時に機能障害のない、または軽度の障害があった被験者では、中等度または重度の障害への進行率は9%だった。
  • 死亡:5%。

 異なる多変量モデルにおける複合エンドポイントと独立に関連するベースライン因子には、歩行障害、喫煙、脳卒中の既往、3回以上のラクナ梗塞、MRI上の脳萎縮の存在が含まれていた。 CADASIL患者411人のレトロスペクティブ解析では、死亡時年齢中央値は男性65歳、女性71歳であった。

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