急性期脳出血の治療の要点

脳出血

 急性高血圧性脳出血の治療は、sBP 140未満に降圧することが推奨されています。また血液凝固因子を含めた血液製剤の投与は行わないよう勧められています。外科治療は、病変部位により方針が変わり、小脳出血・被殻出血・皮質下出血で圧迫が高度な場合は血腫除去術の適応になります。今回、急性期脳出血の治療の要点を紹介します。

疫学

  • 2019年人口動態統計では、死因の構成割合は脳血管疾患が4位(7.7%)。要介護度は2位(1位は認知症)。
  • 脳卒中の内訳では、脳出血は18.5%。

特発性脳出血の危険因子

  • 高血圧
  • 高齢
  • 男性
  • 過剰の飲酒
  • 低LDL血症、低TG血症
  • 抗血栓薬使用

最近の研究で報告されている危険因子

  • 人種(アジア系が多い)
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 肥満・低体重
  • 慢性腎臓病

病理

fibrinoid necorosis

  • 高血圧→内皮のtight junctionの構造破綻→血管透過性の亢進→血漿蛋白の血管壁への蓄積
  • fibrinoid necrosisはラクナ梗塞にも関連する。

神経細胞障害のメカニズム

一次損傷

  • 血腫の機械的な破壊
  • 脳圧亢進、局所循環障害

二次損傷

  • 血腫内容物から誘発される炎症性カスケード(ミクログリア・アストロサイト・肥満細胞・白血球)
  • 酸化ストレスによる脳浮腫や神経障害

高血圧性脳出血の内科治療

  • 高血圧性脳出血では、血液凝固因子を含めた血液製剤の投与は行わないようすすめられる。
  • 脳出血急性期の血圧は、sBP<140mmHgに降下させ、7日間維持することを考慮しても良い。
  • 脳血流自動調節能は、平均血圧50-150mmHgでは脳血流が維持される。高血圧があると、右方偏移し、脳卒中では自動調節能が破綻する。
  • 脳出血慢性期では、130/80mmHg未満を降圧目標とするよう勧められる。微小脳出血合併例ではより厳格な血圧コントロールを行う。

高血圧性脳出血の外科的治療

  • STICH:テント上脳出血、最大径2cm以上かつGSCS 5点以上で、72時間以内の早期手術と保存的治療の間で、死亡率・mRS・BIに有意差は認められなかった。
  • STICH II:血腫が脳表から1cm以内、血腫量が10ml-100ml、発症48時間以内、GCS E≧2, M≧5を対象としたRCT。手術と保存的治療で有意差なし。
  • 2005年-2015年のメタアナリシスでは、脳表に近い血腫の手術が有効

AHA/ASAガイドライン

  • 水頭症に対する脳室ドレナージは妥当(特に意識レベル低下時)
  • 小脳出血に対して神経症状の悪化がみられるもの、脳幹圧迫や水頭症があるものは、可及的早期に血腫除去術を行うようにすすめられる。脳室ドレナージのみの初期治療は行うべきではない。

脳卒中治療ガイドライン2015

  • 被殻出血:血腫量31ml以上かつ血腫による圧迫所見が高度な場合は手術の適応を考慮して良い。
  • 視床出血:血腫除去術はすすめられない。脳室内穿破が強い場合は脳室ドレナージ術を考慮しても良い。
  • 皮質下出血:脳表から1cm以下のものでは、特に手術を考慮して良い。
  • 小脳出血:長径が3cm以上で、神経症状が悪化しているもの、または脳幹を圧迫し脳室閉塞による水頭症がみられる場合には手術を考慮する。
  • 脳幹出血:血腫除去術は勧められない。脳室内穿破があり、脳室拡大の強いものは脳室ドレナージ術を考慮しても良い。
  • 脳室内出血:AVMやもやもや病などの脳血管異常による可能性が高く、血管撮影などにて出血源を検索することが望ましい。急性水頭症が疑われるものは脳室ドレナージ術を考慮する。血腫除去目的とする血栓溶解薬の投与を考慮しても良い。

高血圧性脳出血に対する減圧開頭術

 一貫した報告がみられない。

高血圧性脳出血に対する低侵襲手術

  • 定位的血腫除去
  • 定位的血腫除去かつ/または脳室ドレナージ+血栓溶解薬
  • 神経内視鏡手術
  • 超音波誘導血腫除去
  • ナビゲーション誘導下血腫除去
  • 脳室ドレナージ+腰椎ドレナージ+血栓溶解薬投与

 結果が一貫していないため、今後の更なる研究が期待される