細菌性髄膜炎・脳炎の診療のポイント

細菌性髄膜炎

 細菌性髄膜炎は治療が遅れると予後不良に至る疾患のため、重篤感のある急性発熱・頭痛の患者では細菌性髄膜炎を疑います。来院1時間以内(できれば30分以内)に診察・検査を終了し、抗生剤とステロイドを開始します。今回、細菌性髄膜炎・脳炎の診療のポイントを紹介します。

髄膜炎・脳炎の特徴

脳の表面を覆う髄膜や脳実質に炎症を起こす疾患

恒久的な脳損傷による重篤な後遺症、さらには致死的な転帰を招くことがあるため、迅速な診断と早期に的確な治療を開始することが重要である

  • 高齢者、治療開始時に意識障害が高度な場合は予後が不良になることが多い
  • 髄膜炎は、脳表の軟膜とクモ膜を主体に炎症を生じる疾患であり、脳脊髄液検査で白血球数の増加を伴う
  • 脳炎は炎症の主体の場が脳実質であり、意識障害・けいれん・記憶障害・精神症状・神経脱落症状の頻度が髄膜炎に比べて増加する
  • 脳炎は通常、脳脊髄液検査で細胞数の増加を認めるが、病初期には細胞数増加の見られないケースもある

髄膜炎・脳炎の診療手順

 細菌性髄膜炎では1時間以内を目標に診断・治療をすすめる

  1. 臨床所見(医療面接・身体診察)、一般血液検査
  2. 血液培養
  3. CT、MRI
  4. 画像所見・臨床症候で脳ヘルニアを認めない場合は、髄液検査
  5. 診断・治療開始

医療面接のポイント

  • 初期症状:頭痛・発熱・悪心・嘔吐
  • 頭痛の程度:急激で強いのが典型的(歩くだけで響く)
  • 症状の進展速度:時間・日単位で進行
  • 先行感染・既往:中耳炎・副鼻腔炎は細菌性髄膜炎の可能性
  • 初期から意識障害、精神症状:脳炎(単純ヘルペス脳炎、自己免疫性脳炎)

診察のポイント

  • 髄膜刺激症候(項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候)の確認:ただし、感度は低く、また陰性でも髄膜炎・脳炎を否定できない
  • Jolt accentuationの確認:感度97%と高く、陰性のときは髄膜炎の可能性は乏しいとされるが、絶対的ではなく意識障害時は感度が低下する
  • 眼底検査:うっ血乳頭の確認
  • 脳神経障害(III,VI,VII):結核性髄膜炎でみられることがある
  • 精神症状・異常行動:脳炎(単純ヘルペス脳炎、自己免疫性脳炎)
  • 四肢の点状出血・紫斑:髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ桿菌などの細菌性髄膜炎でみられることがある

腰椎穿刺

 脳脊髄液検査が確定診断には必須

 ヘルニア徴候を疑う危険因子→頭部CTでの確認が必要

  • 意識障害
  • 神経局所症状
  • けいれん発作
  • 乳頭浮腫
  • 免疫不全患者
  • 60歳以上

脳脊髄液所見

脳脊髄液の特徴

細菌性髄膜炎の特徴

  • 未治療では極めて予後不良であり、致死率は15-30%と高いため、重篤感のある急性発熱・頭痛の患者では細菌性髄膜炎を疑う
  • 髄膜炎の古典的三徴である発熱、意識障害、項部硬直がすべて揃うことは全体の44%であるので、古典的三徴が揃わなくとも細菌性髄膜炎を除外しない。一方、この三徴に頭痛を加えた4つのうち2つは95%の患者に認められる。
  • 細菌性髄膜炎が疑われれば、受診後1時間以内に抗菌薬治療を開始する必要があるため、診断と診療のプロセスを同時進行で進める

細菌性髄膜炎の診断

髄液検査

  • 細胞数:500-5000/mm3
  • 細胞分画:多形核球優位
  • 糖:≦40mg/dl
  • 髄液糖/血糖比:≦0.4
  • 蛋白:100-500mg/dl
  • 髄液グラム染色:感度50-90%、肺炎球菌 90%, インフルエンザ菌 86%, リステリア菌は50%以下
  • 髄液細菌培養:細菌同定率は80-90%
  • 血液培養:抗菌薬開始前に複数セット採取する、検出率は50-80%
  • 髄液中の乳酸値やCRP値は細菌性髄膜炎診断の補助になる
  • PCR検査は、髄液培養陰性で先行抗菌薬がある場合に起炎菌推定に有用(マルチプレックスPCR、FilmArray髄膜炎・脳炎パネル®:保険未収載)

細菌性髄膜炎のMRI所見

  • 脳表のくも膜下腔や髄膜の炎症性滲出物がFLAIRで異常高信号として描出
  • 造影T1強調画像では軟膜の局所性またはびまん性の異常増強効果が検出
  • 拡散強調画像(DWI)でも滲出した白血球、すなわち膿瘍が検出
  • DWIはFLAIR、造影T1強調画像に比べしばしば鋭敏
  • ルーチン画像とともにFLAIR、造影T1強調画像、DWIの撮影が必須

原因菌

  • 50歳以上:肺炎球菌 80%, インフルエンザ菌 5%, B群レンサ球菌 5-10%, 髄膜炎菌 不明
  • 6-49歳:肺炎球菌 60-65%, インフルエンザ菌 5-10%, B群レンサ球菌 <1%, 髄膜炎菌 <5%

細菌性髄膜炎の治療

  • 細菌性髄膜炎は緊急疾患のため、抗菌薬投与とステロイド治療を速やかに開始する
  • 年齢層別の起炎菌の頻度と患者の基礎疾患などのリスクから起炎菌を想定し抗菌薬を選択する
  • 起炎菌の同定と抗菌薬の感受性結果が判明すれば、検出された菌を対象にした抗菌薬を選択する

抗菌薬の選択

起炎菌未確定の初期選択薬

16-50歳未満

  • メロペネムまたはパニペネム・ベタミプロン
  • 効果がない場合、バンコマイシンを追加

50歳以上および慢性消耗性疾患や免疫不全状態を有する患者

  • アンピシリン、バンコマイシン、第3世代セフェム(セフォタキシム、セフトリアキソン)の3剤併用

頭部外傷や外科手術(ドレナージやシャント)を受けた患者

  • メロペネムとバンコマイシンの併用

ステロイド治療の併用

  • 成人の肺炎球菌性細菌性髄膜炎の死亡率や後遺症を改善するので、抗菌薬投与前または同時にデキサメタゾンを投与する
  • インフルエンザ菌と髄膜炎菌ではステロイド治療併用の有用性は証明されていないが、悪化のエビデンスはなく使用しても良い。しかし、免疫不全状態や頭部外傷・外科的侵襲後の例では推奨されない