自己免疫性脳炎の要点

自己免疫性脳炎

 自己免疫性脳炎は2007年にNMDA受容体脳炎の発見以後、様々な自己抗体(AMPA受容体など)による脳炎が報告されています。抗NMDA受容体脳炎は卵巣奇形腫が関係し、外科手術・ステロイドパルス療法・IVIgなどが治療として用いられます。今回、自己免疫性脳炎の要点を紹介します。

自己免疫性脳炎の特徴

  • 2007年の抗NMDA受容体脳炎の発見以降、シナプス関連蛋白や神経細胞表面蛋白(AMPA受容体、VGKC複合体関連ドメインのLGl1、Caspr2、GABAB受容体、DPPXなど)を標的とする自己抗体による自己免疫性脳炎が相次いで報告されている
  • これらの自己免疫性脳炎の病態として、抗体の結合により抗原となる受容体蛋白の発現低下や機能抑制が起こることが明らかにされ、免疫治療に良好な反応を示す
  • 自己免疫性脳炎の診断機会が増えており、脳炎の鑑別疾患に抗NMDA受容体脳炎などの自己免疫性脳炎を想定する必要がある

抗NMDA受容体脳炎

  • 若年女性(女性81%、年齢中央値21歳)に多く、幻覚・妄想など統合失調症様症状が急速進行し、記銘力障害・中枢性低換気・異常運動(口ジスキネジア、ジストニアなど)、長期昏睡状態の後に緩徐に回復する
  • 女性の約半数に卵巣奇形腫の合併が認められ、発見時は腫瘍摘出術を行う
  • 免疫治療により最終的には良好な転帰が得られることが多い

抗NMDA受容体脳炎の診断基準

Probable:1-3のすべてを満たす場合

  1. 3ヶ月以内の急性経過で以下の6項目の主要徴候のうち4項目以上が該当する
    •  ①異常行動(精神症状)または認知機能障害
    •  ②発語障害(多弁・寡黙・無言)
    •  ③痙攣
    •  ④不随意運動、異常肢位
    •  ⑤意識レベルの低下
    •  ⑥自律神経障害または中枢性低換気
  2. 以下の検査所見のうち1つ以上がみられる
    •  ①脳波異常
    •  ②髄液細胞増多(>5/mm3)またはオリゴクロールIgGバンド陽性
  3. 他疾患が除外できる
  4. ※奇形腫が併存する場合は、上記1の6項目の主要徴候のうち3項目以上が該当する

Definite

  • 他疾患除外後、上記6症候が1つ以上あり、IgG型抗NMDAR抗体(GluN1抗体)陽性

治療

  • 卵巣奇形腫の合併が確認された場合は摘出術を行う
  • 第1選択治療としてステロイドパルス療法、免疫グロブリン静注療法(IVIg)、もしくは血漿交換を行う
  • 第1選択治療の効果が不十分な場合は、第2選択治療としてシクロホスファミド、またはリツキシマブの免疫抑制薬を使用することが海外の報告をもとに推奨されている。これらの薬剤はいずれもわが国では保険未承認であり、特に日本の臨床現場でリツキシマブを使用することは困難である

自己免疫性脳炎の診断基準

  1. 3ヶ月以内に急速に進行する作業記憶(短期記憶)障害、精神状態の変化あるいは精神症状
  2. 少なくとも以下のいずれか1項目を認める
    •  新規に出現した中枢神経巣症状
    •  既存の痙攣疾患では説明できない痙攣発作
    •  髄液細胞増加(白血球数>5/μl)
    •  脳炎を示唆する頭部MRI異常所見
  3. 他の疾患が除外できる