無症候性脳血管障害の管理 (脳卒中治療ガイドライン2021)

無症候性脳卒中 脳卒中治療ガイドライン2021

 脳卒中治療ガイドライン2021において、無症候性脳血管障害に関する大きな改訂点はありません。CQで無症候性脳梗塞に対する一律での抗血小板療法は勧められないとされています。また、脳動脈瘤の家族歴・女性・喫煙・高血圧の既往があるときはスクリーニングをすることは妥当としています。今回、無症候性脳血管障害の管理を紹介します。

Clinical Question

  • Q. 無症候性脳梗塞に対して抗血小板療法必要か?
  • A. 無症候性脳梗塞に対して、一律での抗血小板療法は勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)

 但し、個々の症例のリスクを慎重に検討し、十分な血圧コントロールを行った上で、出血リスクに十分配慮した抗血小板療法を考慮してもよい(推奨度C エビデンスレベル低)

無症候性脳梗塞・大脳白質病変の管理

  • 無症候性脳梗塞を有する症例では、通常より積極的な降圧療法を考慮してもよい(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 大脳白質病変を有する症例において、通常より積極的な降圧療法、スタチン投与、運動療法を考慮してもよい(推奨度C エビデンスレベル低)

無症候性脳出血の管理

  • 無症候性脳出血および微小脳出血(microbleeds)に対して症候性脳出血発症予防のため降圧治療を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 無症候性脳出血または微小脳出血を伴う虚血性脳卒中例は、出血リスクと脳梗塞再発リスクを十分に検討した上で、抗血小板療法ないし抗凝固療法を控えることを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 微小脳出血を伴う脳梗塞急性期症例にrt-PA静注による血栓溶解療法や機械的血栓回収療法を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)

※無症候性脳出血または微小脳出血を伴う虚血性脳卒中例は、まず抗血栓療法を行うことを前提とし、出血リスクが高いと判断したときは抗血栓療法を控えても良い

無症候性頸動脈狭窄・閉塞の管理

  • 無症候性頸動脈狭窄は脳梗塞発症のリスクとなるため、一次予防として動脈硬化リスクファクターの管理が勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)
  • 軽度から中等度の無症候性頸動脈狭窄に対しては、CEAおよびCASなどの血行再建術は行わないよう勧められる(推奨度E エビデンスレベル高)
  • 高度の無症候性頸動脈狭窄では、抗血小板療法・降圧療法・スタチンによる脂質低下療法を含む最良の内科的治療による効果を十分検討し、画像診断で脳卒中高リスクと判断した症例では、これに加えて、手術および周術期管理に熟達した術者と施設においてCEAを考慮することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)
  • 高度の無症候性頸動脈狭窄で、CEAの標準・高リスク例では、CEAの代替療法として、適切なトレーニングを受けた術者によるCASを行うことを考慮することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)
  • 虚血性心疾患に対するバイパス術前、または同時に無症候性頸動脈狭窄症に対しCEAを行うことは勧められない(推奨度D エビデンスレベル中)
  • 無症候性頸動脈閉塞に対するCEAやCASまたは他の外科的血行再建術、ならびに無症候性椎骨動脈狭窄・閉塞に対する外科的血行再建術や経皮的血管形成術/ステント留置術については、勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)

無症候性頭蓋内動脈狭窄・閉塞の管理

  • 頭蓋内の無症候性脳主幹動脈狭窄ならびに閉塞を有する患者の脳梗塞発症予防として、動脈硬化リスクファクターの管理を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 無症候性脳主幹動脈狭窄ならびに閉塞病変に対しては、他の心血管疾患の併存や出血性合併症のリスクなどを総合的に評価した上で、必要に応じて抗血小板療法を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 無症候性脳主幹動脈狭窄ならびに閉塞病変に対するEC-IC bypass術は勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)
  • 無症候性脳主幹動脈狭窄に対するステントを用いた血管形成術は勧められない(推奨度D エビデンスレベル低)

未破裂動静脈奇形の管理

  • 未破裂動静脈奇形は、外科的治療介入ではなく症候に対する内科的治療を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。ただし、症例によっては、外科的治療・血管内治療・放射線治療の単独または組み合わせによる治療介入を考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)

未破裂脳動脈瘤の管理

  • 未破裂脳動脈瘤の診断法のゴールドスタンダードはDigital subtraction angiography(カテーテル法)およびその三次元撮影像である。CTA/MRAなどは近年の画質精度の向上により、低侵襲の代替診断法として未破裂動脈瘤の診断および治療に用いることが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。ただし、これらの画像診断は3mm未満の瘤や漏斗状変化、血管の蛇行の強い領域では、偽陰性・偽陽性所見がみられることもあり、このような瘤に対して治療を検討する場合には、より慎重な画像評価を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)
  • 脳動脈瘤の血流動態解析(Computer flow dynamics; CFD)や造影MRAなどにより、拡大傾向のある不安定な脳動脈瘤を検知できる可能性がある。これらの方法追加することを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 未破裂脳動脈瘤のスクリーニングは、親子・兄弟2名以上に脳動脈瘤がいる場合に推奨される。特に女性、喫煙、高血圧などの既往がある場合には発見率が高い。スクリーニングを行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  • 多発性嚢胞腎を有する患者では脳動脈瘤のスクリーニングを行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)

未破裂脳動脈瘤が発見された場合の対応

  • 未破裂脳動脈瘤が診断された場合、未破裂脳動脈瘤の自然歴(年間出血率)等の正確な情報を患者に示し、今後の方針について文書によるインフォームドコンセントを行うことが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 未破裂脳動脈瘤の診断により患者がうつ症状・不安を来すことがあり、うつ症状や不安が強度の場合は必要に応じてカウンセリングを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 患者と医療者間のリスクコミュニケーションがうまく構築できない場合、ビデオ等による情報提供や、他医師または他施設によるセカンドオピニオンを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)
  • 未破裂動脈瘤を保有する場合、生活習慣の改善(禁煙・節酒)、規則的運動の実施、高血圧患者では積極的降圧治療が勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)

未破裂脳動脈瘤の治療

  • 未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考慮すれば、下記の特徴を有する病変はより破裂の危険性の高い群に属し、治療等を含めた慎重な検討をすることが妥当である
    • 大きさ5-7mm以上の未破裂脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル中)
    • 5mm未満であっても、
      • A)症候性の脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル低)
      • B)前交通動脈および内頚動脈-後交通動脈分岐部に存在する脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル中)
      • C)Dome neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴を持つ脳動脈瘤(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 経過観察する場合は、可能であれば半年から約1年ごとの画像による経過観察を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。特にサイズの大きなもの、部位が後方循環のもの、ブレブを有するもの、60歳以上の高齢者、くも膜下出血の既往のある患者の動脈瘤は注意して観察することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  • 拡大傾向にある未破裂脳動脈瘤は、治療を再検討することが勧められる(推奨度A エビデンスレベル低)
  • 積極的治療の選択は、開頭手術、血管内治療を実施するチームが協議の上で、それぞれの症例に最適な治療を決定することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)
  • 血管内治療においては、治療後も不完全閉塞や再発などについて経過を観察することが妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
  • 開頭クリッピングの術後においても、長期間経過を追うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)