アパシー(無気力)のUp To Dateまとめ

アパシー

 アパシー(無気力)は認知症で最も多い症状であり、年齢、認知機能、うつ病など他の因子とは無関係に、日常生活に支障をきたす可能性が高いです。アパシーはうつ病を合併している場合もあり、アパシーとうつ病を明確に区別することは困難な場合もあります。両者の違いについては「高齢者でみられる意欲低下(アパシー)とうつ状態の鑑別」で解説しています。簡単に違いを説明すると、うつ病では活動性低下・意欲が出ないことに対して、そのことを強く自覚し苦痛を伴いますが、アパシーの場合は無自覚で苦痛を感じていません。そのため周囲に気づかれないまま重症化(栄養失調や移動困難)に至るケースがみられます。今回、アパシーの原因・対応法についてのUp To Dateをまとめました。

アパシーの原因

身体的要因

  • 認知症疾患:前頭側頭型認知症(初期)、アルツハイマー型認知症(初期~重度)、血管性認知症、レビー小体型認知症
  • 身体疾患:低活動性せん妄、脱水、感染症、フレイル
  • 薬剤性:睡眠薬、抗不安薬、感冒薬

心理的要因

  • 認知機能低下による行動障害
  • 不安・恐怖

環境要因

  • 身体拘束
  • 社会的孤立
  • 高圧的・支配的な介護環境

意欲の指標(Vitality index)

 10点満点で点数が低いほどアパシーが強い。

1)起床いつも定時に起床している2
 起こさないと起床しないことがある1
 自分から起床することはない0
2)意思疎通自分から挨拶する、話しかける2
 挨拶、呼びかけに対して返答や笑顔がみられる1
 反応がない0
3)食事自分からすすんで食べようとする2
 促されると食べようとする1
 食事に関心がない、全く食べようとしない0
4)排泄いつも自ら便意尿意を訴える、あるいは自分で排便、排尿を行う2
 ときどき便意尿意を伝える1
 排泄に全く関心がない0
5)リハビリテーション・活動自らリハビリに向かう、活動をもとめる2
 促されて向かう1
 拒否・無関心0

除外規定:意識障害、高度の臓器障害、急性疾患(肺炎など発熱)

非薬物的介入

  • 身体疾患が原因であれば、まずそちらを対応する。
  • 原因薬剤の減量・中止。
  • 睡眠時間の確保、昼夜のリズムを整える。
  • 頻回に声をかけ、発話を促す。自分で食事をとるように促す。
  • 便意・尿意を伝えるよう促す。トイレの時間を習慣化する。
  • 趣味、好みの活動を見つけて参加を促す。

薬物的介入

  • コリンエステラーゼ阻害薬はアパシーに何らかの好影響を及ぼす可能性があるため、まだコリンエステラーゼ阻害薬を使用していない場合には試してみる。
  • コリンエステラーゼ阻害薬が無効の場合は、薬物的介入として、抗うつ薬とメチルフェニデート(リタリン®)が候補になる。
  • メチルフェニデートは、小規模な研究で、認知症患者のアパシーの転帰を改善する可能性が示唆されている(Am J Psychiatry. 2018 Feb 1;175(2):159-168.doi: 10.1176/appi.ajp.2017.17030316)。
  • 軽度のアルツハイマー病(AD)を持つ77人の男性を対象としたメチルフェニデートの試験では、メチルフェニデートは、12週間の治療期間中にプラセボと比較してアパシースコアを改善した。認知機能、介護者の負担、うつ病の指標も改善した。
  • メチルフェニデートの平均最終投与量は10mgを1日2回。治療の忍容性は良好であり、有害事象の数と種類は両群間で同程度であった。
  • メチルフェニデートは、興奮を促進する、夜間の睡眠を悪化させる可能性があるため、低用量(例えば、朝5mgを1日1回、最大用量10mgを1日2回、最終投与は昼食時まで)を使用し、モニタリングを慎重に行うことが推奨される。

以下の記事も参考にしてください

認知症でみられるうつ病の特徴と対応法まとめ

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yshima脳神経内科医
認知症専門医の資格を持つ脳神経内科医です。 神経内科専門医・指導医、総合内科専門医・指導医、認知症サポート医。 M.D., Ph.D.