抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)の中和療法の要点

抗凝固薬 中和療法

 日本で承認されている抗凝固薬の選択的注和薬はプロトロンビン複合体製剤(PCC)とイダルシズマブがあります。前者はワルファリン、後者はダビガトランに対して中和作用があります。Andexanet alphaは抗Xa薬の中和薬ですが、日本では承認申請準備中です。今回、抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)の中和療法の要点を紹介します。

ワルファリンの中和療法

PCC(Prothrombin complex concentrate)

  • 3時間以内のINR低下(1-2)率は、PCCがFFP(fresh frozen plasma)とよりも優位に高く、血腫の抑制効果も高かった。
  • 注入時間は、PCCがFFPよりも短時間に施行できた。
  • ワルファリン服用中で頭蓋内出血を呈した場合は、出血量が少なくても拡大するリスクが高いため、PCCの使用を考慮しても良い。
  • INR<2.0 PCC使用せず
  • INR 2~4未満    25U/kg 4F-PCC
  • INR 4~6            35U/kg 4F-PCC
  • INR >6              50 U/kg 4F-PCC

DOACの中和療法

イダルシズマブ

  • ダビガトランの中和薬
  • ヒト化抗体のフラグメント(Fab)
  • 半減期は4-6時間(ダビガトランの半減期とほぼ同じ)
  • 腎機能障害では中和効果が弱まる可能性がある
  • イダルシズマブ 5gを静注または点滴静注する

Andexanet alpha

  • Xa因子阻害薬
  • 本邦は未発売(米国・欧米で発売)
  • DOACの種類、最終服薬時間、用量により、Andexanet alphaの投与量が異なる
 イダルシズマブAndexanet alpha
構造ヒト化抗体フラグメント(Fab)改変型遺伝子組み換え血液凝固FXa因子(デコイ)
標的分子ダビガトランのみFXa阻害剤(FXal)
ヘパリン(アンチトロンビンを介して)
標的分子との結合親和性トロンビンの約350倍FXaと同等
結合様式ダビガトランと生理的に不可逆的FXa阻害剤と可逆的
凝固促進作用内因性トロンビン生成能(ETP)増加なしETP増加あり
効能・効果出血時または緊急手術・処置時の抗凝固作用の中和出血時の抗凝固作用の中和
剤型注射剤(静脈製剤)注射剤(凍結乾燥製剤)
投与方法・用量5gの固定用量 急速静注または点滴静注(5-10分)FXalの種類, 用量, 最終服用時間により2用量
急速静注後に持続点滴静注(2時間)
開発状況日米欧を含む複数の国で承認済み米欧で承認済み。日本では承認申請準備中
薬価407,252円(5g分)米:$29,700(L), $59,400(H)
英:£13,875(L),  £24,975(H)

Ciraparantag

  • 次世代の中和薬(現在開発中)
  • すべてのDOAC, ヘパリン, アルガトロバンの中和薬
  • DOACと結合することにより、Xa因子やIIa因子の活性を修復する

DOACと血行再建療法

ダビガトラン

  • ダビガトランでは、aPTTが前値の1.5倍(目安として約40sec)を超えている場合、静注血栓溶解療法の適応外
  • ダビガトラン最終服用後4時間以内の場合、凝固マーカーの値に関わらず静注血栓溶解療法の適応外
  • 上記で適応外とみなされた場合も、イダルシズマブを用いて後に静注血栓溶解療法を行うことを考慮しても良い

活性化凝固第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)

  • PT-INRが1.7を超えている場合や、aPTTが前値の1.5倍を超えている場合、静注血栓溶解療法の適応外
  • 抗Xa薬最終服用後4時間以内の場合、凝固マーカーの値に関わらず静注血栓溶解療法の適応外
  • 抗Xa薬服用患者に、他抗凝固薬の中和薬を転用して抗凝固能の是正を試みた後に静注血栓溶解療法を行うことは推奨されない