アミロイドアンギオパチー(CAA)の要点

アミロイドアンギオパチー

 アミロイドアンギオパチー(CAA)は脳・髄膜血管にAβが沈着することで、脳葉型出血を繰り返す疾患です。高齢者の有病率が高く、アルツハイマー病患者で特に多くみられます。Glymphatic system(脳の老廃物排出系)の破綻が原因とされています。今回、CAAの要点を紹介します。

CAAと細動脈硬化の鑑別

 CAA細動脈硬化
病理所見脳・髄膜血管へのAβ沈着動脈硬化、フィブリノイド壊死など
危険因子加齢、ApoEε2, ε4加齢、高血圧、糖尿病、喫煙
臨床徴候  
ICH脳葉型出血、再発高リスク(7-12%/年)典型的には深部(基底核、視床、橋、小脳、稀に皮質下)
虚血性脳卒中ラクナ梗塞との相関を欠くラクナ梗塞と相関
他の臨床所見TIA, 認知機能低下, 炎症性CAA脳血管性認知症
MRI所見  
microbleeds脳葉型分布深部優位
superficial siderosisしばしば見られる(~40%)稀(<5%)
血管周囲腔拡張主に半卵円中心主に基底核
白質異常信号後方白質に優位一定の傾向なし
無症候性ラクナあまり典型的ではないよく見られる
診断基準画像所見に基づくBoston criteria一定の診断基準なし
治療方針長期的なICHの再発・発症予防急性期病変に応じて治療。危険因子の管理、抗血栓療法

病理所見

  • 軽度:中膜へのアミロイド沈着・肥厚はあるが、血管構造は保たれている
  • 高度:中膜間の剥離が起き、ダブルバレル構造を示す。内膜にもアミロイドの沈着を認める。周囲脳へのアミロイド沈着も認められる

脳内でのAβの代謝機構

 血管周囲腔を介したperivascular drainageにより頭蓋外に排泄

Glymphatic system(脳の老廃物排出系)

 グリアが介したリンパ管システム

 動脈周囲腔

 →動脈拍動とAQP-4による勾配

  →細胞間隙内

   →静脈周囲腔より排泄

 Glymphatic systemの機能不全が、アミロイドアンギオパチーやアルツハイマー病に強く関連していると考えられている

 アミロイドアンギオパチーはAβが動脈周囲腔内に停滞しやすい→動脈壁や脳実質に沈着しやすくなる

アポリポ蛋白E(ApoE)とAβ

  • 脂質代謝に関与するタンパク質
  • Aβと結合し、Aβの輸送や代謝に関与している
  • 遺伝子多型が種々の疾患に関与している
  • ApoEε2:若年脳出血、高度CAA病変と関与
  • ApoEε4:アルツハイマー病の強力なリスク因子
  • アジア人はApoEε2 7.5%、ApoEε3  81.6%、ApoEε4 10.9%
  • ApoEε2とε4はいずれも脳出血の危険因子で、若年発症・出血拡大・出血再発との関連も報告されている

CAAの診断基準

modified Boston criteira

Definite CAA:剖検による診断

  1. 脳葉・皮質・皮質下出血を呈する
  2. 血管障害を伴った重度のCAA所見
  3. 他の診断となる病変を認めない

病理学的裏付けのあるProbable CAA:脳出血の摘出標本や皮質生検などにより所見を認める

  1. 脳葉・皮質・皮質下出血を呈する
  2. 標本により一定レベルのCAA所見を認める
  3. 他の診断となる病変を認めない

Probable CAA:MRIやCTで評価

  1. 脳葉・皮質・皮質下(小脳皮質出血を含む)に多発出血、または
  2. 単発の脳葉・皮質・皮質下出血と局所・散在性の脳表ヘモジデローシス
  3. ≧55歳
  4. 出血や脳表ヘモジデローシスの他の原因を認めない

Possible CAA:MRIやCTで評価

  1. 単発の脳葉・皮質・皮質下出血、または
  2. 局所・散在性の脳表ヘモジデローシス
  3. ≧55歳
  4. 出血や脳表ヘモジデローシスの他の原因を認めない

CAAの特徴

  • 高齢者、特に認知症患者でCAA有病率は上昇する
  • CAAの有無に関わらず、microbleedsは脳出血の強いリスク因子である
  • CAAでの微小出血は虚血性脳卒中の危険因子ではなかった
  • 白質病変とCAAの関連は小血管障害を反映しているが特異性の高いものではない

CAAによる脳出血

  • 高齢者(60歳以上)の脳葉型出血の原因の多くはCAAである
  • 高齢者の脳葉型出血の頻度は増加している
  • CAAによる脳出血は、高血圧性脳出血と比べ再発率は約5倍

CAAの外科治療

  • 脳表からの深さが1cm以内の皮質下出血では、特に手術の適応を考慮してもよい(グレードC1)。
  • CAAによる脳出血に対する直接の指針はない
  • 現在の脳外科水準において、CAAでは、止血困難または術後出血が多いとは言えない

CAAの内科治療

  • CAAに関連する脳出血に対する血腫吸引術が、保存的治療よりも転帰が良いという十分な科学的根拠はない(グレードC1)
  • CAAが疑われ、高血圧を呈する患者では降圧療法を行うよう勧められる
  • 高感度MRIで皮質・皮質下微小出血が多数見られた例、アミロイドPETにて後頭葉集積が高い例では、CAAの可能性を考慮する
  • 脳葉型出血の既往があり、ApoE遺伝子ε2またはε4アリルを有する患者では、脳出血再発のリスクが高い。このような症例に血栓溶解療法や抗凝固療法・抗血小板療法を行うと、さらに脳出血のリスクを増加させる可能性があり勧められない(グレードC2)