筋萎縮性側索硬化症(ALS)の要点

筋萎縮性側索硬化症

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は多くの関連遺伝子が報告されています。孤発性ALSはTDP-43が関連し、基本病態はRNA制御障害です。治療はリルゾール、エダラボンがあり、体重減少の予防が大事とされています。今回、ALSの要点を紹介します。

ALSの原因遺伝子

 10%が遺伝性、90%が孤発性と言われている。

障害経路関連遺伝子
核-細胞質移行障害C9orf72, GLE1, RNA結合蛋白質(TDP-43, FUSなど)
RNA代謝異常(RNA結合蛋白質)CFUS, ANG, SETX, MATRIN-3, hnRNPA1, hnRPA2B1
蛋白質品質管理障害(異常凝集体)TDP-43, FUS, SOD1, C9orf72, SQSTM1, OPTN, TBK1, VCP, UBQLN2, SIGMAR1
DNA修復異常TDP-43, FUS, NEK1
ミトコンドリア機能異常と酸化ストレスSOD1, TDP-43, C9orf72, CHCD10
オリゴデンドロサイトの機能障害SOD1
ミトコンドリアの機能異常SOD1, TDP-43, OPTN, TBK1
軸索輸送障害SOD1, Nogo-A, EphA4, PFN1, TUBA4A, NFH, DCTN1
小胞輸送異常C9orf72, OPTN, VCP, VAPB, ALS2, CHMP2B, UNC13A
グルタミン酸毒性DAO

孤発性ALSの病原蛋白質:TDP-43

ALSの基本病態:RNA制御障害

  • 転写・翻訳異常:蛋白質の発現量・局在異常・異常バリアント
  • プロモーター・転写制御異常:炎症・代謝に関わる経路

ALSの発症リスクを高める環境因子

 Wan et al. Neurotoxicology. 2017より

  • 鉛・重金属暴露:OR 1.71(95%CI 1.38-2.11)
  • 農薬暴露:OR 1.57(95%CI 1.25-1.98)
  • 有機溶媒暴露:OR 1.43(95%CI 1.10-1.86)
  • 外傷:OR 1.73(95%CI 1.43-2.09)
  • 電気ショック・暴露:OR 3.27(95%CI 1.87-5.73)

ALSの進行リスクを高める因子

  • 体重減少
  • 慢性炎症:腸内細菌叢との関連

ALSの治療

薬物治療

リルゾール

  • ALSの治療
  • ALSの病態進展の抑制:生存期間を2-3ヶ月延長
  • 体重減少抑制効果(Thakor K et al. ALSFD. 2021)

エダラボン

  • ALSにおける機能障害の進行抑制:6ヶ月でALSFRS-Rの低下を2.5点抑制
  • 30ヶ月以上のエダラボン点滴で、エダラボン群 61.0ヶ月、対照群で32.5ヶ月の生存期間であった(HR 0.37, 95%CI 0.2-0.74)(Okada, eNeurologicalScl. 2018)
  • 経口のエダラボンが開発中

非薬物治療

高カロリー栄養治療

  • 病態修飾治療である
  • 急速進行型ALSで病態進展の抑制効果の報告
  • 気管切開人工呼吸療法(TIV)まで:清水式 (1.67✕安静時代謝率)+(11.8✕ALSFRS)-680
    •  男性の安静時代謝率:66.47+(13.75✕体重kg)+(5.00✕身長cm)-(6.76✕年齢)
    •  女性の安静時代謝率:655.1+(9.56✕体重kg)+(1.85✕身長cm)-(4.68✕年齢)
  • TIV後
    •  不完全麻痺:1000kcal
    •  完全麻痺:900kcal
    •  完全閉じ込め症候群(TLS):800kcal

臨床実用が期待される薬剤

  • Tofersen:SOD1遺伝子ASO
  • AMX0035(タウルソディオール/フェニル酪酸ナトリウム):抗アポトーシス作用と神経保護作用/化学シャペロン+HDAC阻害薬
  • Mastinib:抗マクロファージ/ミクログリア作用
  • 高用量メチルコバラミン:神経保護

ALS早期診断のための診断基準(Gold Coast Criteria)

 以下のすべてを満たす

  1. 過去に正常の運動機能でありながら、病歴または複数回の診察により進行性の運動機能障害を認める
  2. 脳幹・頸髄・胸髄・腰仙髄領域の少なくとも1領域で上位運動ニューロンと下位運動ニューロン障害を認めること、または2領域以上の下位運動ニューロン障害を認めること
  3. 検査により他疾患が除外されること